【医師監修】藤野 祐司 先生 大阪市立大学医学部卒業。米国留学、同大学医学部婦人科学教室講 師を経て、1997年にクリニックを開業。現在、同大学で非常勤講師も 務める。B 型・おとめ座。プライベートでは先日、「ブリしゃぶ」をふるま うために初めて魚を切ったという先生。その時、「刺身包丁ならもっとい い切り身にできたはず……」と、マイ包丁の購入を検討中だそう。
はなさん(40歳)Q.現在、自然周期で体外受精をしています。1回目は成熟卵1個で胚盤胞に ならず終了。2回目はフェマーラⓇによる排卵誘発で未成熟卵でした。次周 期はクロミッドⓇやセロフェンⓇを試してみたいのですが、医師から「後で無 理がたたるので多分処方できない」と言われています。 ちなみにDay3のホルモン値は、FSH:8~ 9、LH:8~12、E2:40 ~ 70、AMH 値:11.9 ~20(直近は19.6)。このような状態で、刺激法で の体外受精の選択は可能でしょうか? また年齢的に、一度でも刺激をす ると、卵巣機能が一気に低下することも考えられますか?
自然周期のメリット・デメリット
はなさんは、刺激法による体外受精を試してみたいそうです。
藤野先生 この方の年齢と治療歴からすると、体外受精を行うことに問題はないと思います。
まずは、どういう条件で採卵するかですね。
自然周期という選択は、悪いことではないと思います。
自然に採れる卵子で妊娠に至るのが一番ですが、反面、自然周期は排卵の時期が掴みにくく、成熟卵を採るには微妙なタイミングの把握が必要になります。
初期胚?胚盤胞?移植は?
1回目は自然周期で成熟卵が採れていますが、残念ながら胚盤胞にならなかったそうです。
藤野先生 最初から胚盤胞移植をお考えなのでしょうか?
一般的には、卵管や子宮内膜に問題がなければ、初期胚移植といって3日目に移植を行います。
それを飛び越えて胚盤胞移植されているということは、卵管因子に何か問題があるのかなと推測されます。
しかし、胚盤胞のほうが受精卵の質をより確実に判断できますので、胚盤胞移植でもいいと思います。
刺激周期の種類と特性
40 代での刺激法は、卵巣に負担がかかるのでしょうか?
藤野先生 刺激法には3つの方法があります。
1つ目は、ロング法、ショート法といわれるHMG製剤を大量に使う方法。
2つ目は、アンタゴニストとHMG製剤を微量使う方法(アンタゴニスト法)。
3つ目は、セロフェンⓇまたはクロミッドⓇを使う低刺激法、あるいはHMG製剤を併用する方法です。
それぞれにメリットとデメリットがあり、ロング法とショート法の刺激法は、卵巣にかなり負担がかかる可能性があります。
特に年齢が高くなるほど、1回の刺激で卵巣機能がかなり落ちる傾向にはあります。
刺激法のなかでもHMG製剤を大量に使う方法は、卵巣機能の低下を引き起こす可能性が考えられます。
AMHからの考察
AMH値も関係ありますか?
藤野先生 当院のAMHの平均値からすると、この方の値は年齢相応で特に低い印象はありません。
20 〜 30代に比べれば卵巣年齢は落ちてはいますが、年齢以上の低下ではないと思います。
この方のAMHの値と年齢を考えると、私は、セロフェンⓇまたはクロミッドⓇとHMG製剤を併用する刺激法をすすめます。
この方法で、2回目に使用されているフェマーラⓇと同様に、2〜3個は採卵できるのではないでしょうか。
もちろん何回もくり返すと卵巣に負担がかかってしまいますから、いかに成熟卵を採る方法を選択するかですね。
採卵数ではなく、良質な成熟卵が採れるかどうかが問題なので、そういった意味ではセロフェンⓇあるいはクロミッドⓇという薬はいいと思います。