8回目の胚移植で陰性。高刺激を続けるべきか低刺激法か悩んでいます

治療回数と41歳という年齢を考えた場合、 高刺激の治療を続けたほうがいいのでしょうか。 それとも、低刺激法に変えるべき? かしわざき産婦人科の柏崎祐士先生に伺いました。

柏崎 祐士 先生  京都府立医科大学医学部卒業。2000 年まで日本大 学板橋病院で主に不妊治療に従事し、その間、米国エ ール大学医学部産婦人科で研修。その後、「かしわざき産婦人科」副院長に。日本生殖医学会生殖医療専 門医、日本産科婦人科学会認定医。O 型・おとめ座。 今年 4月より現在の医院に隣接した不妊専門クリニッ クを開設。患者さんが専門的な治療を受けられるよう、 腹腔鏡の設備を充実させ、手術室も新設。産婦人科も あるので、妊娠後も安心して通院できる。

ドクターアドバイス

卵子の質を追求するのなら 体にも心にも負担の少ない低刺激法を 試してみてもいいと思います

よっさんさん(41歳)Q.先日、8回目の胚移植が陰性でした。ロング法、ショート法と、強い刺激 法を続けてきました。先日の陰性の結果を踏まえ、次回はクロミフェンでの 低刺激法を希望しましたが(ショート法で7個採卵、移植できたのは2 個 の分割胚のみだったので)、今の病院は刺激法を基本にしており、「AMH もぎりぎり2ケタあるし、卵子の数もある程度採れているので、次回も高 刺激で」という方針です。私は、卵子が多く採れても質がよくなければ、低 刺激で地道に質のいい卵子を採ったほうがいいのではと思い、転院も考え ています。刺激法を変えた場合のメリット、デメリットなどを教えてください。

AMHと卵子の質

よっさんさんは、これまで高刺激の採卵を続けてきましたが、低刺激を試してみたいと考えていらっしゃいます。担当の先生にはAMHの値はぎりぎりあるので、と言われたそうですが、柏崎先生の見解はいかがですか?
柏崎先生 AMH値は、卵巣内にある原始卵胞がどのくらい残っているかの「数」を反映するものであり、卵巣の「質」を示すものではありません。
ですからAMH値と質は必ずしも相関関係にはないのです。
女性は、 12 〜 13 歳の思春期には約4万個の卵胞を持っていて、1個1個が出番を待っているわけですが、卵巣内で待っている間に当然エイジング(老化)が起こります。
ですから、この方の 41 歳という年齢を考えると、やはり卵子の質が低下しているのは確かでしょう。
今までの高刺激の誘発法で卵子の数はある程度採れていたとは思いますが、その分、1個1個の卵子の質は低かったのではないかと思われます。

低刺激のメリット

このまま高刺激法を続けてもよいのでしょうか? それとも低刺激法に変更したほうがいい?
柏崎先生 当院でも、体外受精をされる方には主に高刺激法をおすすめしているのですが、それでも 30 代の方なら5回、 40 代なら2〜3回を目安に、結果が出ない場合は患者さんの意見を聞きながら他の治療法をご提案しています。
この方の 41 歳という年齢を考えると、これまでの8回の治療は体に相当の負担があったのではないかと察せられます。
よっさんさんが希望される通り、クロミフェンによる低刺激法、あるいは自然周期法に変えてみてもいいのではないでしょうか。
低刺激法や自然周期のメリットは、体への負担が少なく、長く続けられるという点です。
クロミフェンは、生理2日目から5日間服用しますが、副作用がほとんどありません。
40 代女性の場合、採れる卵子は3個程度です。
また、クロミフェンを使わない自然周期での2種類の方法もあります。
1つは薬を一切使わない完全な自然周期。
完全自然周期法といいますが、卵子の質はこれが一番よくなります。
もう1つは、卵子が育った時点で卵子を成熟させるHCG注射を行う方法です。
デメリットは、高刺激法に比べてスケジュール管理が難しいことですね。
低刺激法や自然周期法では排卵を抑制する薬を使わないので、いつ排卵するかがわかりません。
急に排卵が起こる場合は、凍結精子がなければすぐにご主人に採精をお願いしなければなりませんし、病院が排卵のタイミングに常時対応できるとは限らないので、タイミングを逃してしまう場合があります。
低刺激法や自然周期法ではそのあたりの管理が難しく、移植のキャンセルが多くなることも事実なのですが、しかし体への負担が少ないですし、気分的にも楽に治療できると思います。
そして何より、ご心配されている卵子の質もよいことが最大のメリットです。
もし卵子の質を追求したい場合は、完全自然周期でトライするのが一番でしょう。

移植のバリエーション

これまでの移植の方法については、なにかできることはあったのでしょうか?
柏崎先生 現在一般的な方法は、5日目で移植する胚盤胞移植で、おそらくこの方法で移植されたのではと推察します。
ただ、高齢で卵子の質があまりよくない場合、ある程度受精卵が育った3日目の胚で移植をするという方法も最近よく行われており、当院でもこの方法で妊娠に至った方がいらっしゃいます。
また、卵巣の機能が低下している方や、ホルモンバランスが悪い方の場合は、胚を一旦凍結しておき、ホルモン剤を用いて子宮を刺激するホルモン補充周期で子宮内膜の環境を安定させてから移植するという方法もあります。
ただし、年齢が高い方でも生理がきちんとあって、ホルモンの状態が安定している場合は、新鮮胚を戻す方法でいいと思います。

納得いくまで医師に質問

次の治療に入る前に、受けておくべき検査はありますか。
柏崎先生 おそらく、ひと通りの検査は受けられていると思いますが、あえていうならFSH検査を受けてはどうでしょうか。
FSH検査はホルモンの量を測る検査で、卵巣の機能を反映します。
このFSHは、更年期に入るとだんだん高くなってくるので、この値が今後の治療の指針にもなってくると思います。
血液検査ですので体への負担もほとんどありません。
まずは、担当の先生に今の気持ちをぶつけてみては。
それで納得がいかない回答が返ってくるようなら、セカンドオピニオンだけでなく、サードオピニオンも聞いてみてください。
私は、ご夫婦がしっかりと主体性を持って、次の治療に移られることがベストだと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。