成長の遅い受精卵を移植すると障害の確率が高くなるのでしょうか?

受精卵が6日目でやっと胚盤胞になりましたが、 成長速度が遅いと障害などの確率が高くなる? 内田クリニックの内田先生に聞きました。

内田 昭弘 先生  島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チーム の一員として、1987 年、島根県での体外受精による 初めての赤ちゃん誕生に携わる。1997 年に内田クリニック開業。1 階は奥様が副院長を務める内科・胃腸科、2 階が婦人科。35 歳で開業し、今春15 周年を迎えた。今回は、15年前の開業時にお父様から記念に贈られたという絵をバックに撮影。「開院当初より 15 年を一つの節目と考えてきたので、感慨深いです」。

ドクターアドバイス

胚盤胞になるまでに6日かかることは 障害との因果関係はありません。 採卵方法を低刺激周期から刺激周期に変えてみては

ふうママさん(34歳)Q.先日、低刺激周期で採卵し、3個の卵子が採れまし た。1個は未成熟だったので、ほかの2 個を顕微授精しました。精子を挿入後、なかなか受精のサイン が表れず時間はかかりましたが1個が受精。その後 6日目で胚盤胞となり、現在凍結中です。しかし、 なかなか受精しなかったことや成長が遅かったこと を考えると、その胚盤胞を融解胚移植したらダウン 症などの障害を持った子どもが生まれる確率が高く なるのではと心配になりました。受精卵の成長速度 は、障害に関係があるのでしょうか?

ふうママさん のデータ

■検査・治療歴

体外受精を2回行い、妊娠しなかったので 転院し、再度検査を一通り行ったところ卵管水腫が見つかり、左卵管を切除手術。
そ の後、1回目の顕微授精で妊娠するも流産。
原因は染色体異常。 以後、胚盤胞で凍結できるまで4回採卵し、 そのうち1個の凍結卵で妊娠、元気な赤ち ゃんを出産。
現在は2人目の不妊治療中。

■現在の治療方針

顕微授精。6日目の胚盤胞を凍結してある。

■精子データ

数、運動率、運動性など問題なし。

分割速度と妊娠率

ふうママさんは、2人目を望んで顕微授精をしましたが、受精卵が胚盤胞になったのが6日目だったことを、「成長速度が遅いのでは?」と気にかけているようです。そもそも、受精卵は通常、どのくらいの速度で成長するものなのでしょうか?
内田先生 卵子と精子が受精すると受精卵になり、その後の成長は通常、2分割、4分割、8分割と細胞分裂をしていき、5日目には胚盤胞になります。
そして6日目には透明帯を破ってふ化し始め、着床の準備を始めます。
一般的な受精卵の成長速度として、6日目に胚盤胞になることは、妊娠そのものに影響があるのでしょうか?
内田先生 当院のデータから考えますと、5日目で胚盤胞になったものと6日目で胚盤胞になったものの妊娠率を比べると、5日目は6日目の4倍の確率です。
そうなると5日目で胚盤胞になるものが理想的ということになりますが、成長に時間がかかったからといって必ずしも受精卵に問題があるとは言い切れません。
6日目の胚盤胞で、無事に元気な赤ちゃんを出産するケースもあります。
この段階では、受精卵の見た目が正常できれいな状態であれば、妊娠に影響するかどうかの判断は難しいと思います。

分割速度と先天性疾患

6日目の胚盤胞は妊娠の確率が下がるけれど、ダウン症などの先天性の疾患との因果関係はないということでしょうか?
内田先生 胚盤胞になるまでに6日かかっても、ダウン症などの障害との因果関係はありません。
特にダウン症は、先天性の染色体異常によって起こるもので、その原因は突然変異といわれています。
もし受精卵に染色体異常などの問題があるとすれば、妊娠に至らないか、もし妊娠したとしても流産するケースが多いです。

刺激周期で多めの採卵

ふうママさんは1人目の時は、卵管水腫で左卵管を切除し、その後1回目の顕微授精で妊娠したものの、染色体異常で流産。その後胚盤胞で凍結できるまで4回採卵し、1個の凍結卵ができて元気な赤ちゃんを出産されました。これまでのさまざまなつらい経験が不安を増幅させているのかもしれません。内田先生なら、どのような治療を提案されますか?
内田先生 1人目の時に卵管水腫の手術、不妊治療、流産を経てようやく元気な赤ちゃんを授かったことを思えば、現在のご心配はもっともだと思います。
不安な気持ちを抱えながら毎日を過ごすことはストレスにもなりますし、わだかまりがあるまま治療を進めるのはよくありませんね。
これまでの経過を踏まえたうえで、当院なら、現在ある6日目の胚盤胞は一旦おいておき、採卵の方法を少し変えて、5日目で胚盤胞になるかどうかを試してみる治療周期をご提案します。
「元気な赤ちゃんを産むまで4回の低刺激周期による採卵をして、3個採れたうちの1個だけが凍結できた」とありますが、そのことから考えると、ふうママさんの場合はもともと胚盤胞に至りにくいタイプなのかもしれません。
その場合は、刺激周期での採卵に変えてみるのも1つの方法です。
刺激周期なら、うまくいけば1回の採卵で8個くらいは採卵できますので、5日目で胚盤胞に成長する受精卵と出会える可能性も高くなるとも考えられます。
一度に採卵できる数が増えるので、妊娠の確率が高くなるということですね。
内田先生 もちろん個人差もありますし、実際に行ってみないとわかりませんが、ふうママさんの年齢や体の状態から考えると可能性はあると思います。

凍結胚は半永久的、選択肢が広がる

現在凍結してある6日目の胚盤胞は、刺激周期での採卵の結果がどうなったのかで移植を考えてもよいのでは、ということでしょうか?
内田先生 そうですね。ふうママさんが、現在凍結してある胚盤胞を移植することに不安を抱いているのであれば、そんなに焦って移植することはないでしょう。
凍結胚は半永久的にそのままの状態で保存できますので、今の凍結胚はそのままにしておいて、再度、採卵をして顕微授精を行い、状態のよい受精卵ができたら、それを移植することも考えられます。
担当の先生に一度、採卵方法について相談してみるといいと思いますよ。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。