顕微授精での受精率が悪く悩んでいます。カルシウムイオノフォアとは?

顕微授精での受精率を上げるという カルシウムイオノフォアの治療法について ノア・ウィメンズクリニックの波多野先生に伺いました。

波多野 久昭 先生 日本医科大学卒業。ハンブルク大学産婦人科学教 室留学後、日本医科大学付属病院産婦人科学教 室講師、飯田市立病院産科科長を経て、2005 年 ノア・ウィメンズクリニックを開院。A型・やぎ座。 最近、知人の牧師先生の言葉をまとめた『空の鳥 を見なさい』という冊子を奥様と作られたそう。「不 妊治療とは直接関係ないのですが、いろいろなこ とで悩んでいる方に見ていただければ。希望を持っ ていただけるかなと思います」と先生。

ドクターアドバイス

◎ カルシウムイオノフォアは卵の活性化を起こし受精を助ける方法
◎ 精子の卵活性化能が 弱い場合は有効
◎ 子宮鏡検査で子宮内の状態の確認を
クティーさん(専業主婦・40歳)Q.精液検査の結果はよかったのですが、顕微授精でも受精率が悪く、次回 はカルシウムイオノフォアを試してみようと思っています。私の年齢的な要 因も大きいと思いますが、受精卵のグレードはいつも1~2と悪くないので、 試してみたいと思っています。医師からは、私たちの場合はカルシウムイオ ノフォアで効果があるかは微妙だと言われています。そこで、カルシウムイ オノフォアについて詳しく教えて下さい。また、精液検査の結果がよくて、 カルシウムイオノフォアの効果があったというケースはあるのでしょうか?

卵を活性化させる

カルシウムイオノフォアとは、どのような治療なのですか?
波多野先生 「イオノフォア」とは、「素質を運ぶもの、取り込むもの」という意味で、カルシウムイオノフォアというのは、カルシウムを取り込む物質ということです。
自然な受精でも顕微授精でも、精子が卵子の中に入っていき卵の活性化が起こると、細胞分裂が始まります。
この卵の活性化は、卵の細胞の中のカルシウムイオン濃度が一過性に増えることで起こります。
通常は受精をすると自然に活性化が起こりますが、それが起こらない場合に、細胞内外のカルシウムイオンに変化を与えて卵の活性化を起こさせる方法です。
具体的には、顕微授精をした後、培養液に薬剤を加えて数分浸し、洗い流します。
他に、カルシウムイオン濃度を上げる方法として、特殊な機械を使って電気刺激を与える方法や、ストロンチウムを使う方法がありますが、カルシウムイオノフォアは最も簡単にできるということもあり、多くの施設では卵活性化をする方法として行われることが多いようです。

受精率が悪い原因

ホワイトグレフルさんの場合、受精率が悪い原因はどんなことが考えられるでしょうか?
波多野先生 受精しない原因として、顕微授精をして精子を入れたけれど、入れた精子の頭の周りに卵細胞質の膜がかぶっていて、刺激がうまく伝わらないということがあります。
しかし、顕微授精ができているのに受精しにくいということであれば、精子の卵活性化能が弱いというのが一般的な考え方です。
精液検査の結果はよかったということですが、卵の活性化能があるかどうかは精液検査ではわからないことなので
す。
実際に卵子の中に入れて、受精分割するかどうかを見てみないとわからないんですね。

臨床報告はまだない

医師からカルシウムイオノフォアの効果は微妙といわれているそうですが、どう思われますか?
波多野先生 受精しなかった卵は卵自体があまりよくなかったからという、医師のご判断なのかもしれないですね。
受精がうまくいかない原因には、活性化の問題のほかに、卵細胞自体に分割する力がないということがあります。
卵子側に原因がある場合は、カルシウムイオノフォアは効果がありません。
また、カルシウムイオノフォアで格段に受精率が上がったという臨床報告はありませんし、医師もそういったことを考慮して、あまり効果を期待されてもいけないと、そのようにおっしゃったのかもしれませんね。
しかし、受精するとグレードがいい受精卵になるということですから、卵子の質はそれほど問題ではない気がします。
文献を見ても、顕微授精で受精しない場合は、精子の問題が大きな比率を占めているとあります。
精子の卵活性化能が弱いことが原因だとしたら、カルシウムイオノフォアの効果が期待できます。
治療を受ける方の身体的な負担はまったくないので、試してみる価値はあるのではないでしょうか。

子宮内の確認も

受精率を上げるために、先生ならどのように治療を進めますか?
波多野先生 受精率が低いということは、5〜6個の卵子は採れたけれど、そのうち1個しか受精しなかったというような状況でしょうか。
数が少なくてもグレードのいい受精卵ができるのなら、根気よく治療していただければ可能性があるのではないでしょうか。
同じ方法で、もう少し続けていただいてもいいと思います。
まあ、ほかには、たとえば排卵誘発を変えてみるのも1つの方法です。
誘発方法を変えると卵子の質が変わることもありますから。
また、グレードのいい受精卵を戻しても妊娠しないのであれば、子宮の中の確認をする必要がありますね。
子宮鏡検査や子宮内膜の検査で、ポリープや癒着の有無など、着床しづらくなるようなトラブルがないかの確認も必要です。
当院でも、子宮にカーテンを引いたような癒着があった方がそれを剥がしてきれいにしたところ、次の周期で妊娠したというケースがありました。
そういった異常は子宮鏡検査をしないとわからないので、治療の結果が出なければ調べたほうがいいと思います。
ホワイトグレフルさんは、採卵もできて、受精率は低くてもグレードのいい受精卵ができているので、まだまだチャンスはあると思います。
頑張って治療を続けていただきたいですね。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。