マーベロン21®を服用中、妊娠の可能性は?また悪影響はありますか?

卵巣を休ませるためにピルを服用中に 夫婦関係を持たれたというゆいさん。 妊娠の可能性と、もし妊娠していたらピルの影響は? セント・ルカ産婦人科の宇津宮先生に聞きました。

宇津宮 隆史 先生 熊本大学医学部卒業。1988 年九州大学生体防御医学研究所 講師、1989年大分県立病院がんセンター第二婦人科部長を経 て、1992年セント・ルカ産婦人科開院。国内でいち早く不妊 治療に取り組んだパイオニアの一人。開院以来、妊娠数は 6,200 件を超える。O 型・おひつじ座。「40 歳以上の患者さ んは、治療を進めていくうえで年齢的な焦りやストレスを感じて いるはず」との思いから、1カ月に1回、院内で40 代の治療に ついての意見交換を行うための「オリーブの会」を開催。臨床 心理士と看護師を交えた、自由な話し合いの場を提供している。

ドクターアドバイス

◎ ピル服用中は妊娠しないし、悪影響もない
◎ 調節卵巣刺激法で条件のいい卵子をつくる
◎ 知識を持って治療を選択することが大切
ゆいさん(40歳)Q.先月、体外受精で 3 個採卵し、受精卵の質的に1個しか戻せず、妊娠 に至りませんでした。 卵巣を休ませるためにマーベロン21Ⓡを処方され、 7日目分を服用直前に性交渉をしたのですが、 妊娠の可能性はあるので しょうか。また、ピルの悪影響は? 高齢なので一月ひと月が貴重で、も しものことを考えると 不安でしかたありません。ご回答をお願いします。

ゆいさん のデータ

■検査・治療歴

不妊治療に関する検査はすべて問題なし。 顕微授精3回。

■精子データ

すべて問題なし。

■サプリメントなど

葉酸、マカを時々飲む。

低刺激?調整刺激?

体外受精で3個採卵するも1個しか戻せなかったということですが。
宇津宮先生 受精卵の質的に1個しか戻せなかったそうですが、その1個が本当に条件のいい受精卵だったのかという疑問があります。
自然周期あるいは低刺激と、調節刺激の妊娠率をみると、若い方はそれほど差は出ませんが、 35 歳以上の方の場合は調節卵巣刺激法のほうが妊娠率が高いです。
ゆいさんの 40 歳という年齢を考慮すれば、なるべく調節卵巣刺激法で卵子を多く採取し、5〜6個のなかから最も条件のいい卵子を選ぶという余裕が欲しいです。

卵巣を休ませる

体外受精後、卵巣を休ませるためにピルを処方されていますが。
宇津宮先生 マーベロン 21 Ⓡは、エストロゲンという卵胞ホルモンを含むピルですが、年齢の高い方がピルや女性ホルモンを服用されるのは非常にいいと思います。
当院でも 40 歳前後の患者さんが不妊治療を一定期間お休みする場合は必ず処方します。
お休みしている間に何もしないと、年齢的に閉経してしまう可能性がありますから。
このように、ピルは避妊薬であると同時に、卵巣を休ませる役割があります。
特に卵巣の反応の悪い患者さんには、女性ホルモンをしっかりと補充してあげることが大切。
ゆいさんがおっしゃるように、一月ひと月が大事ですから、卵巣を休ませる際にも医師の指示の下できちんと管理していただいてください。

ピルの作用と悪影響

治療お休み中も、女性ホルモンは重要なポイントになるのですね。
宇津宮先生 ピルを服用中に卵巣がどのように休んでいるかはわかりません。
ですが、私が医師になってすぐの頃、早発閉経の患者さんに女性ホルモンを補充して月経周期をつくった後に、排卵誘発剤を使用したら排卵して妊娠した、というケースがありました。
詳しく調べてみたところ、おそらく女性ホルモンのエストロゲンを補充することによって、何らかのいい作用が起きるのでは、という結論に達しました。
普通なら、外から女性ホルモンが入るとゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)が下がるので、卵巣はますます眠ってしまうと考えられますが、閉経している場合はゴナドトロピンが上がっているので、状況が変わるのですね。
ピル服用中の妊娠の可能性と、悪影響を心配されていますが。
宇津宮先生 1週間きちんと飲んでいれば、排卵はきれいに抑えられているので妊娠はしません。
ピルが悪影響を及ぼすということも決してありません。

加齢と染色体異常

ゆいさんは今後、どのように治療していくのがいいでしょうか?
宇津宮先生 患者さんそれぞれに事情があるでしょうから、一概には言えませんが、ゆいさんの場合は体外受精が最善と考えられます。
自然周期あるいは低刺激で3個採卵できていますから、計算し尽くされた調節卵巣刺激法を行って、複数個の卵子が採れるように心掛けてください。
ただし、年齢の高い方の卵子には染色体異常が多いという事実も知っておいてください。
どんなにきれいな卵子や受精卵を得られたとしても、7割は染色体異常を起こしています。
それを理解したうえで、治療を継続するか、それとも違う選択肢を考えるか、ご主人としっかり話し合って決めていただきたいですね。

自分で治療は選ぶもの

40 歳以上の患者さんは多いですか? アドバイスをお願いします。
宇津宮先生 全体的にみると、 40 歳以上の割合はそう多くはありませんが、体外受精の段階になると変わってきます。
当院では毎週、体外受精をした患者さんの平均年齢を出していますが、常に 37 〜 40 歳の間です。
初めての不妊治療が 40 歳を超えていた場合、ひと通りの検査をして、タイミング療法から体外受精までの治療の流れは若い患者さんと同じですが、若い方は半年ごとにステップアップするところを、3カ月で進めていきます。
人間というのは体に合えば、だいたい半年以内に結果が出るはずなのです。
若い人でもうまくいかない場合がありますから、年齢が高くなっていけば、時間的な余裕がないのは明白です。
ですから、どの治療も短い期間で区切りをつけて、次に進めていきます。
体外受精は患者さんにとっては治療法ですが、我々医師にとっては究極の検査法といえるのです。
タイミング療法でも、人工授精でもわからなかった小さな遺伝子レベルの異常が、体外受精になって初めてわかります。
患者さんには、そういったこともよく理解しながら勉強して、「自分で治療を選ぶ」というスタンスを必ずとっていただきたいです。
我々は治療の選択肢をご提供しますが、不妊治療は与えられるものではなく、治療のレールに乗せてもらうものでもありません。
それを忘れずに、最終的にどんな治療法を選択するのかをしっかりと考えていただくことが大切だと思います。
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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。