【医師監修】松山 毅彦 先生 東海大学医学部卒業。小田原市立病院産婦人科医長、東海大学付属 大磯病院産婦人科勤務、永遠幸レディースクリニック副院長を経て、 1996年厚仁病院産婦人科を開設。日本生殖医学会生殖医療専門医。 クリニックでは最新医療を積極的に取り入れる一方、産科併設のメリッ トを生かし、より安心して出産を迎えられるよう、不妊治療から出産、 育児までをトータルにサポートする。おひつじ座のA型。連日、100人 前後の外来診察と手術などで超多忙な先生。モチベーションを保つ秘 訣を尋ねると、「大変な仕事だけど、やっぱり生命にかかわることが好き だからでしょうね。これからも頑張ります!」。
はるさん(32歳)Q.重度の男性不妊のため、顕微授精をしたところ、4分割胚移植後の 妊娠判定が、血液検査でhCG 値を調べたところ「1」で、残念な結 果に終わりました。「0」ではなく「1」だったことには、何か意味が あるのでしょうか? また、今回使用した胚盤胞はグレード4。次の移植に、前回よりも グレードの低いグレード3を移植しても妊娠の可能性はありますか?
妊娠判定hCG
妊娠判定hCG「0」と「1」には、どんな違いがありますか?
松山先生 当院ではhCGを検出できなければ、測定限界以下という判定が出るので、「0」という数値はありません。
hCGを検出できなければ「0」、検出できれば「1」以上の数値という解釈なのかなと思います。
施設によって解釈が違うので、実際のところはわかりません。
しかし、通常は採卵2日前にHCG製剤を注射するので、その影響が残った可能性は考えられますね。
もともと非常に低い数値が出た場合は、やはり着床した胚が育たないことも多く、それで先生から「0」と同等のように言われたのかもしれません。
当院でも同じようなケースはあります。
採卵周期に胚移植する場合、残念ながら妊娠しなかった人にも「1」や「2」の判定が出ることがあります。
その時は、HCG製剤の残存を示す数値かもしれません、というお話を必ずしています。
ガードナー分類は世界共通
はるさんがもう1つ気になっているのは、2回目に移植する受精卵のグレードが1回目より低いものということです。そもそもグレードの判定基準とは?
松山先生 グレードとは、受精卵や胚の形を見た目で判定した数値です。
胚盤胞では、「ガードナー分類法」が一般的で、世界共通の判定基準と考えられています。
この場合、一番いい胚盤胞は「6AA」というランクで表されます。
仮に「5AA」や「4AA」でも、「6AA」に比べれば、着床率は下がるものの、妊娠の可能性は比較的高いと思います。
見た目だけで判断できない
はるさんの場合、上から2番目のグレード3だそうです。
松山先生 これも施設によって解釈が違うので、比較は難しいですが、おそらく移植してもいいと思います。
大多数の施設では、最初に一番いいグレードのものを移植します。
だから次が2番目のグレードのものになってしまうのは、ある意味、必然ともいえますが、見た目がよくない胚盤胞でも、妊娠する力がないとは言いきれません。
胚盤胞になる頻度自体は一般的に50 %程度とされていますので、はるさんの場合、胚盤胞が確保できていることを考えると、今後妊娠していける期待値は比較的高いと考えられます。
十分に希望を持って治療を進めてほしいですね。
※hCG:ヒト絨毛(胎盤)性ゴナドトロピン、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン。