なかなか結果が出ない、つらい状況には どう向き合えばいいのでしょうか。 とくおかレディースクリニックでお聞きしました。
不妊カウンセラー 玉川 由梨子 さん 個別のカウンセリングも設けているが、日頃のスタッフ のきめ細かい説明や心のケアで、利用される患者さん はほとんどいないという、とくおかレディースクリニック。 体外受精をしている方向けの「ART茶話会」もあり、 自然に患者さんの気持ちをケアする体制がつくられてい る。玉川さんは、主に患者さんの心の不安を解消する メンタル面でのケアを担当。
ドクターアドバイス
困難な状況に向き合う方法は一人ひとり違うので その方法を見つけ出せるようサポートします
兵庫さん(会社員・35歳)からの投稿 Q.良好胚盤胞を3回移植しても妊娠に至りません。 不育症の検査で第Ⅻに因子活性が54%低値に引っかかり、 柴苓湯+アスピリン・ヘパリンを併用。2 段階移植を2回行い、 2回とも陽性。しかし1回目は胎児の染色体に問題はなく、 2回目は16トリソミーで流産。先生からは、結果が出るまで 良好胚の移植を続けるよう励まされましたが、くり返して結果が 出るのでしょうか。トンネルの出口。ずっと真っ暗です。
カウンセリング不要を目指す
まずは徳岡先生にお聞きします。不妊治療を続けていると、兵庫さんのように途中で壁にぶつかり、疑問や不安でいっぱいになってしまうこともあると思います。こちらのクリニックでは、そのような患者さまにどのようなケアをしていますか?
徳岡先生 深刻な心の問題を抱えている方には、個別のカウンセリングもできることはお伝えしています。
しかし、開院当初は、そのようなカウンセリング枠でご相談を希望される方がいらっしゃいましたが、現在はほとんどいらっしゃらないんです。
それはなぜですか?
徳岡先生 スタッフ全員が日々の医療のなかで、患者さまの心を前向きにしていけるようなお話や、疑問が残らないような詳しいご説明をするよう心掛けているのです。
私もできるだけ患者さまとコミュニケーションをとるようにしていますが、診察だけではフォローできない部分があ
ります。
ります。
ですから、注射や検査をする時など、診察以外の時もスタッフがお話を聞くようにしています。
たとえば、検査や治療の結果をお話しした時、特にご自分からは質問しないような方でも、表情を見て、納得されていない様子なら看護師が声を掛けます。
「何か質問はないですか?」とお聞きすると、「ホルモン値が前回より少し下がっているようですが、治療法を変えていく必要があるのではないでしょうか?」など、疑問を口に出されることがあります。
そのような患者さまの疑問は看護師が私に報告し、次の診察で詳しくご説明して解決することもあります。
医師だけではなく、スタッフ全員で患者さまの心のケアをすることが大切だと思っています。
カウンセリング以外のケア
そのように日頃から細やかなケアをされているから、深く悩んでしまう方がいらっしゃらないのですね。
徳岡先生 はい。当院はカウンセリングをすすめるクリニックではなく、カウンセリングという特別枠を設定しなくとも気持ちが楽になれるような体制をとっています。
ほかに、患者さまの気持ちが前向きになれるような取り組みはありますか?
徳岡先生 当院では治療に関する勉強会のほかに、月1回、「ART茶話会」という会を開催しています。
参加者は体外受精をしている方がメインで、患者さまと不妊カウンセラー、体外受精コーディネーターで、ゆっくりお茶を飲みながら、いろいろなことを話すことができます。
妊娠された卒業生の方に体験談を語っていただくこともあります。
情報交換をしたり、ほかの方のお話から元気をもらったり、つらい胸の内を話すことで気持ちが楽になったり……。
参加した方は、その後、とても前向きに治療に臨まれるようになります。
目の輝きが変わり、表情もとても明るくなられますよ。
同じ目的を持つ者同士が本音をぶつけ合ったり、悩みを打ち明けられる場所があると思うだけで、気持ちが違ってくるのだと思います。
自分に合った治療との向き合い方
では次に、普段、患者さまのご相談にのっている不妊カウンセラーの玉川さんにもお話を伺います。兵庫さんのようなお悩みは、こちらのクリニックでも聞かれますか?
玉川 兵庫さんのように、長い期間結果が出ないことに悩んでいる方は多くいらっしゃいます。
不妊治療は頑張った分だけ報われる治療ではないのが、難しいところだと思います。
どうすればそのような状況に向き合えるのか、方法は1つではなく、一人ひとり異なると思います。
気分転換できる方法を見つけるのがいい方もいますし、そのつらさを逆に楽しみに変えてしまおうという方も。
自分を成長させる糧だと思って頑張っている方もいますね。
患者さまのお話を聞く時は、私が「こう考えたらいいのではないでしょうか」とアドバイスするのではなく、その方が自分に合った治療との向き合い方を見つけ出せるように導いていきます。
応援し、よりうまくいくようにサポートしていくことが私の役割だと思っています。
話しやすい雰囲気をつくるために心掛けていることはありますか。
玉川 「私の気持ちは相手にちゃんと伝わっているの?」「この人にはわかってもらえないかも……」と感じさせてしまうといけないので、患者さまが話されたことを自分なりに解釈して、自分の言葉で返すようにしています。
「そんなつらい思いもされたんですね」と、その方が感じた気持ちを自分なりに共感してお返しする。
それをコツコツ重ねていくことで信頼関係が結ばれ、治療にもいい影響が出てくるのではないかと思っています。
【医師監修】徳岡 晋 先生 防衛医科大学校卒業。同校産婦人科学講座入局。自衛隊中央 病院産婦人科勤務後、防衛医科大学校医学研究科に入学し、 学位(医学博士)取得。2000年より木場公園クリニックに勤務。 5年間の勤務を経て2005年に独立し、とくおかレディースクリ ニックを開設。A型・みずがめ座。同クリニックでは、不妊カウ ンセラーでもある事務長が書くブログも患者さんに好評だそう。 「読むだけで前向きになれる元気の素がいっぱいです」と先生