不妊治療と体重管理

不妊治療をすると太る?  太っていると妊娠しにくい?  など不妊治療や妊娠と体重との関係について疑問の声が聞かれます。 それでなくても体型は女性にとって気になるポイントですね。 今回は京野アートクリニックの京野廣一先生に 詳しくお聞きしました。

京野アートクリニック 京野  廣一  先生 福島県立医科大学卒業後、東北大学 医学部産科婦人科学教室入局。体 外受精の第一人者、鈴木雅洲教授に 学ぶ。1995年、レディースクリニック 京野(大崎市)開院。2007年、京野 アートクリニック(仙台市)開院。B型・ おひつじ座。 食べること、飲むことが好きで、特にラー メンには目がないという京野先生。健康 のことを考えて普段はなるべく車を使わ ず、徒歩や自転車を使って移動。おかげ でスリムな体型をキープしています!
マル(31歳 主婦) Q.不妊治療を頑張っています。先日、先生曰く、 「もう少し痩せたほうがいいな。痩せている ほうが注射や薬が効きやすいんだよ」。病院 でショックなことを言われてしまいました。 世間の人の身長・体重って?

不 妊 治 療 と 体 重 管 理

不妊治療で太ると 言われる原因は?

ジネコのユーザーからよく「不妊治療を始めて太ってしまった」という声が聞かれますが、臨床の現場でも肥満の悩みを訴える患者さんは多いのでしょうか。

京野アートクリニックの京野先生に伺ってみました。

京野先生 そのようなことを訴える患者さんもいらっしゃいます。

実際に、不妊治療で使うホルモン薬の影響で2〜3㎏程度体重が増加する場合があります

どのようなしくみで体重が増えてしまうのでしょうか。

京野先生 ピルを長期間服用した場合、肥満傾向が現れることも。

それから、卵胞を育てるゴナドトロピンという注射を打つと卵巣が腫れてくる方がいらっしゃいます。

いわゆる卵巣過剰刺激症候群(OHSS)と言われる状態ですね。

卵巣が腫れると血管の中の血液が濃縮してしまい、水分が外に出てしまう。

そうすると浮腫を起こします。

この場合は脂肪が増えるというより、むくみにより体重が増加するといったほうがいいかもしれません。

OHSSにならないまでも、注射による治療を受けている方は、卵胞ホルモンの影響で多少体重が増える傾向が見られるようです

ホルモン薬だけではなく、 ストレスによる肥満も

しかし、なかにはいくら注射をしても体重にほとんど変化が見られない人もいるとか。不妊治療中に太るのはホルモン薬の影響だけではないのでは、と京野先生は言います。

京野先生 やはり、太ってしまうのは普段の食生活が大きく影響しているような気がします。

不妊治療中は何かとストレスがたまることが多いので、それを解消するために過食ぎみになっている方も多いのではないでしょうか。

不妊治療中でなくても、消費カロリーより摂取カロリーが上回れば、当然余った分は脂肪として蓄積されていきます。

体重が増加してしまったという方は、イライラしたり落ち込んだりした時、ついつい甘いものやスナック菓子を食べすぎてしまうということはありませんか?

治療により一時的な体重増加はあるかもしれませんが、それがそのまま肥満につながっていくかどうかはご本人の管理によるところが大きいのではないかと思いますね

薬のせいだと思っていたけれど、実は肥満の原因はストレスだった ―― 。とい うことも多いのかもしれません。

京野先生 適度な運動とバランスのよい食生活を続けることはもちろんですが、不妊治療中は気分転換できる方法を見つけておくことも大切だと思います

太りすぎ、痩せすぎは 妊娠しにくい?

一般的に「太りすぎは健康によくない」と言われていますが、肥満は妊娠にも悪影響を及ぼすのでしょうか。

京野先生 肥満は不妊の原因の一つになりうると言ってもいいでしょう。

太っている方は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)になりやすく、それによりホルモンバランスが崩れてきます。

外国ではスタイン・レーベンタール症候群とも呼ばれていますが、なかには多毛や声が低くなるなど男性化の兆候が現れてくる方も。

体重が増加すると、男性ホルモンの数値が上がってきてしまうんですね。

月経も不順になり、ひどい場合は無月経になってしまうことも。

月経がなければ排卵もなくなり、当然、妊娠もしづらくなってしまいます

また、太っていると治療中にもこんな問題が ……

京野先生 体重が重くなれば、注射薬のゴナドトロピンの量も多くなります。

注射の投与量はその方の体重に合わせて決めていきますから。

薬の量が増えればそれだけ副作用のリスクも高くなります。

卵巣が腫れたり、そのせいでまたむくみがひどくなるなど、悪循環に。糖尿病や高血圧、高脂血症などを引き起こす確率も高くなりますから、不妊治療をするうえでも注意が必要になってきます

急激なダイエットは 女性にとって危険な行為

では、肥満とは逆に、痩せすぎている場合はどうなのでしょうか。

京野先生 これも妊娠にとって好ましい状態であるとは言えません。

特に過酷なダイエットなどで、ひと月に5〜6㎏など急激に体重を落とすのは危険な行為です。

体重減少性無月経といって、生理が来なくなってしまうことがあるんですね。

低体重が続くと卵巣自体も萎縮してくるので、女性にとって痩せすぎであるというのも問題です

では、妊娠しやすいカラダとは?  どの程度の体型が理想的なのでしょうか。

京野先生 太りすぎ、痩せすぎでなかなか妊娠できないという方は、まず適正な体重に戻すことが一番の対処法です。

当院では、BMIという体重(体格)指数を基準において、患者さんに指導しています。

BMIは体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)

で算出しますが、その値が 22 程度なら理 想的。

幅をもたせて 18 〜 24 の間ならまず まず標準的な体重だと考えています。

もし、 30 を超えるようなら要注意。PCOSになる傾向が高くなってきます

適正体重に戻す、ということは、やはり太りすぎの場合は治療中でもダイエットをすべき …… ?

京野先生 急激なダイエットはおすすめしませんが、やはり対策は必要ですね。

不妊治療を受けられる世代は 30 代後半くらいの年 齢の方が多く、ただでさえ基礎代謝が落ちてくる世代です。

10 代、 20 代の頃と同 じ量を食べていても太ってしまうという方も多いのでは。

私もそうです(笑)。

ですからやはり食事をコントロールするだけでなく、運動も加えて減量していくということが必要になってきますね。軽い運動を継続させて 太りにくい体をキープ!

不妊治療中、体重管理をしていくために、 どのような運動が効果的なのでしょうか。 そして、それを続けていくためのコツは? 引き続き、京野アートクリニックの 京野先生にアドバイスしていただきました。

早足で 40 分程度の散歩を 日課にするだけでも効果的

適正な体重を維持するためには、バランスのとれた食事をとるほか、適度な運動も欠かせません。京野アートクリニックの京野先生も、日頃から患者さんに運動の重要性を指導されているとか。

京野先生 運動をして筋肉をつけると基礎代謝が上がって減量につながるうえ、不妊治療中にたまりがちなストレスの解消にもなります。

また、体を動かすことで全身の血流も促進されますから、子宮や卵巣にとってもとてもいいことなんですよ

では、どのような運動がおすすめなのでしょうか。

京野先生 あまり激しい運動はかえってストレスになるのでおすすめしません。

私自身も実践していますが、ウォーキングなら運動が苦手な方でも挑戦できるのでは?

急ぎ足で 40 分くらいの散歩を日課にする。

お仕事をされている方なら1駅、2駅手前で降りて歩いてもいいですよね。

同じ有酸素運動ということなら、5〜 10 ㎞程度の距離をジョギングされてもいいかと思います

ご主人の協力が運動を 長続きさせるポイントに

でも、「散歩ならできそう」といざ始めてみても、三日坊主で終わりがち。運動を長続きさせるコツはあるのでしょうか。

京野先生 不妊治療でも言えることですが、運動やダイエットを長続きさせるためにはご主人の協力がポイントになってくると思います。

生活習慣はご夫婦同じですから、体型も似てくる場合が多いようです。

ご主人の生活に合わせていたら太ってきた、という方も多いのでは?

ここはご夫婦で決意して、お二人一緒に運動を始められてはどうでしょうか。

ウォーキングもジムでトレーニングするのも、お互いに一つの目標を持って励まし合えば、長続きするのではないかと思いますよ

ご夫婦間の仲も深まり、不妊治療にもよい影響を与えてくれそうです。

京野先生 運動も食事療法も極端にやりすぎると、必ずリバウンドがきます。

軽いものでもとにかく継続させることが一番大切。

短期間で痩せるというより、太りにくい体をキープするという気持ちでされるといいのではないかと思います

毎日3食をおいしく食べて 健康な体をキープしよう

体は食べたものからつくられています。 何をどんなふうに食べるのかによって、 体調も外見も変わってくるはず。 健康をキープし理想的な体に近づいていくための 食事の方法を、管理栄養士の 松尾みゆきさんにお聞きしました。

朝食抜きはNG! 食べる順番も考えて

健康で均整のとれた体づくりの基本は、まず朝・昼・夕と3食きちんと食べることです。
「時間がない」「起きてすぐに食べられない」と朝食を抜くと、前日の夕食から約 15 〜 16 時間もあいてしまう ことに。
長い時間空腹が続くと体が飢餓状態だと認識し、食べた時に吸収されやすくなってしまうのです。
また朝食を食べないとめぐりが悪くなり、ため込みやすい体になってしまいます。
栄養バランスを考えると一汁三菜の献立が理想ですが、朝食を食べていない人は、牛乳1杯でも野菜ジュース1本でもいいので、口に入れることから始めてみましょう。
 健康に過ごすための一般的な女性の1日の摂取カロリーは1800〜2000㎉。
といっても、カロリー計算をしながら食べるのはなかなか難しいですね。
わかりやすいのは調理方法を選んで食べること。
油分はカロリーが高いので、「炒める・揚げる」より「生・蒸す」がおすすめです。
また見逃しやすいのがドレッシング。
意外と油を多く含んでいるので注意を。
 食べる順番にも太らないコツがあります。
それはカロリーの低いものから食べること。
まずサラダやフルーツ、煮物、次に汁物、ごはん、最後にメインのおかずという順番で食べましょう。
生野菜やフルーツには酵素が多く含まれ、消化を促進し、食べすぎを防ぐことができます。

鉄分、カルシウム、 食物繊維を積極的に摂取して

女性は生理があるため、鉄分が不足しがち。
貧血の原因になるので、鉄分が多く含まれるホウレン草や水菜などの濃い緑の野菜、ひじき、豆類、レバーなどを
積極的に食べましょう。
ビタミンCと一緒に摂ると吸収がよくなります。
また女性は閉経後に骨密度がガクンと下がり骨粗鬆症にかかりやすいので、カルシウムをたくさん摂って予防を心がけましょう。
食物繊維は整腸作用で便秘を改善し、代謝をアップして血のめぐりをよくします。
めぐりがいいと栄養素を全身にいきわたらせることができます。
これから妊娠を控えた女性は、胎児の先天異常の予防のため葉酸を摂りましょう。
妊娠初期に必要とされる栄養素ですが、妊娠に気付くのは早くても4週目頃なので、早めから摂ることを心がけて。
葉酸も緑の濃い野菜に多く含まれますが、水溶性でゆでると溶け出てしまうので、炒める、レンジ加熱などの調理法がおすすめです。
管理栄養士・料理研究家・ フードコーディネーター 松尾みゆき さん バランスのよい食事は健康的な体づくりや美 容にとても大切ですが、食事=栄養源として 考えるのではなく、あくまでもおいしく楽しく 食べることを提案。そのために低カロリーで もボリュームのあるレシピを日々考案中。夏 には「サラダスムージー」の本を発売予定。

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不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。