【医師監修】大島 隆史 先生 自治医科大学卒業。1982年、新潟大学医学部産科婦人科学教室入局。 産婦人科医として3年間研修後、県内の地域病院の1人医長として4 年間勤務。1992年、新潟大学医学部において医学博士号を授与される。 新潟県立がんセンター新潟病院、新潟県立中央病院勤務を経て、 1999年、大島クリニックを開設、院長に就任。先日、東京の超高級 ホテルの1泊80万円のスイートルームに一般客室料金で泊まれるラッ キーな出来事が。もったいなくて一歩も部屋を出なかったそうです!?
ココさん(28歳)からの投稿 Q.22 歳で多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、高プロラクチン血症と診断されました。 1年前までカウフマン療法を行っており、結婚して、先月からクロミフェンを服 用しながらタイミングをみています。通っているのは普通の産婦人科ですが、先 日「卵子が育っていないようです。不妊専門クリニックに早めに行くべきです」 と言われてしまいました。近くに専門クリニックがないのですが、普通の産婦 人科ではクロミフェンによる誘発以外に方法はないのでしょうか。また、高プ ロラクチン血症については、1年前に検査したところ、値は正常だったので、 今はテルロンⓇの服用をやめています。もう薬なしで大丈夫なのでしょうか?
クロミッドによる排卵誘発
ココさんは1周期、クロミフェンによる排卵誘発を行ったところ、卵子がうまく育たなかったということですが……。
大島先生 おそらくココさんはクロミフェンに対する抵抗性があり、反応されなかったんですね。
クロミフェンは直接卵巣を刺激する薬ではないので、1回目で反応しなければ、このまま2回、3回と続けてもそれほど効果は期待できないと思います。
当院ではクロミッドⓇ(クロミフェンの処方薬の一つ)を単独で使うことはほとんどありません。
先生なら、この後、どのような治療方針を立てられますか?
大島先生 クロミッドⓇの服用に加え、さらに排卵誘発の注射を2〜3回する方法を試してみると思います。
クロミッドⓇを飲んで注射を8日目、 10 日目、 12 日目に、卵胞が大きくなるまでもう少し注射を加えることもあります。
それを1周期やって、手応えがあればもう1周期同じ治療を。
反応が芳しくなければもう少し刺激を強くして、注射だけの方法に切り替えていくようにします。
PCOSの方の誘発は難しい
注射による排卵誘発は普通の産婦人科ではできないのでしょうか。
大島先生 PCOSの方は卵巣が腫れてしまう場合があるため、エコーによるモニタリングなどでの細やかなチェックが必要です。
そうなると普通の産婦人科では、積極的に取り入れることは難しいかもしれませんね。
となると、やはりココさんは不妊専門のクリニックに転院したほうがいいということになりますか?
大島先生 遠方に通われるのは大変だと思いますが、PCOSの方の注射の管理は経験値の高い施設に任されたほうが安心だと思います。
できるだけ負担を少なくしたいということでしたら、自己注射という方法もあるので、一度、治療法の相談も兼ねて、専門クリニックに行かれてみてはいかがでしょうか。
高プロラクチン血症
高プロラクチン血症に関しては何かアドバイスはありますか?
大島先生 今のところ、正常値ということであれば、そんなに気にすることはないと思います。
定期的に血液検査をして様子をみる程度でいいのではないでしょうか。
ココさんの場合、まだ年齢がお若く、妊娠の可能性は十分にあります。
遠くのクリニックに通うのはなかなか決断がつかないかもしれませんが、もし早くお子様を望んでいらっしゃるようなら、一定期間は治療に集中してみてもいいのではないでしょうか。
※多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):慢性的に男性ホルモンが過剰な状態にあり、排卵がうまくできない原因不明の疾患。卵巣内にたくさんの小嚢胞がある。排卵障害、不育などがみられる。
※高プロラクチン血症: 妊娠中や産褥・授乳期以外に、乳腺刺激ホルモンであるプロラクチンの分泌が増えて排卵が起こりにくくなる状態。
※カウフマン療法:規則的な月経周期を取り戻すため、卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体 ホルモン(プロゲステロン)といった卵巣ホルモンを周期的に投与する。
※テルロンⓇ:プロラクチン分泌を抑制する働きを持つ薬。