治療を理解する意味
不妊治療を受けている方の中には、「いつまで今の治療を続ければいいの?」という不安を抱く方も多いようです。
福田先生 不妊治療は先の見えないトンネルにもたとえられます。
結果がなかなか出ない時には、今受けている治療がこれでよいのか、回り道をしていないか、もっと自分に合ったよい方法があるのではないかと不安になることも多いと思います。
こうした心配や疑問のほとんどは、治療のことを理解することで解消されることが多いものです。
なぜこの治療が必要なのか、この方法がダメなら次はどんな治療法があるのかなど、あらかじめ治療のプランや内容がわかれば、つまり出口への標識があればトンネルの中にいても不安は少なくなるはずです。
その標識となるのが、段階を踏むステップアップ治療ということなんですね。
3つのステップに分ける
確かにそうですね。では、こちらのクリニックにおける治療ステップの目安を教えていただけますか。
福田先生 当院では大きく分けて3つの段階での治療を患者さんにご説明しています。
第1ステップは不妊検査および、排卵時期のチェックによる性交タイミングの指導で、目安として期間は約2〜3ヶ月です。
この間に妊娠に至らなかった場合には、排卵時期をチェックして人工授精を実施する第2ステップへ。
ここでは卵巣刺激法もプラスすることがあります。
人工授精の実施周期はだいたい5〜6周期を一つの目安としています。
第2ステップまでは一般不妊治療の範囲ですが、ここまでに結果が出なかった場合には、第3ステップとして体外受精や顕微授精の高度治療も考えていただきます。
基準は、目安でしかない
ほとんどの患者さんが、だいたいこのスピードで治療を進めていくのですか?
福田先生 ステップアップは「これに乗って進まなければいけない」というレールではなく、あくまでも目安。
患者さんによってスピードや順序は変わってくると思います。
たとえば、 35 歳以上の方やこれまでに人工授精などの不妊治療を受けている方の場合には、第1ステップを省略して、第2ステップから治療を行うこともあります。
その反対に、第3ステップの体外受精からタ イミング法や人工授精にステップダウンする方もいる。
一概にこの段階を踏んで進めるということはないんです。
不妊治療は患者さんの心の問題や経済的な事情なども大きく関わっている治療ですから。
医師は提示する、患者が選ぶ
40 歳を過ぎて病院に行って、「体外受精しかないのでは」といきなりすすめられて戸惑ったというような方もいるようですが……。
福田先生 確かに年齢が高いと一般不妊治療では妊娠率が低いですが、医療側としては選択肢を提示するべきだと思います。
リスクや現実的なデータをきちんと示したうえで、一般不妊治療もしくは体外受精、という方法を提示し、最終的に決めるのは患者さんだと思っています。