多嚢胞性卵巣症候群にはHMG製剤投与のほかにどんな治療がありますか?【医師監修】

【医師監修】福井 敬介 先生  1989年、日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人 科に入局、愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000年愛媛大学産 科婦人科学助教授。2001年、「高度な生殖医療をより身近な医療 として不妊カップルに提供したい」と、福井ウィメンズクリニックを 開設する。A 型・やぎ座。産科医として分娩も手掛ける先生が、時 間を見つけて続けているのが音楽活動。ビートルズバンドでキーボー ドを担当している。
みかんさん(35歳)(BMI27)からの投稿 Q.HMG 製剤の注射には種類もいろいろあるようですが、私が今 通院している病院では、「HMG 製剤は1種類で単位が違うもの しかない」と言われました。以前は効いていたクロミフェンが効 かなくなり、今の注射薬で卵胞はよく育ちますが、卵巣の腫れが ひどくなります。もう少し優しく効く種類の薬はないでしょうか。 毎日の通院にもストレスを感じています。ジネコでも紹介されて いる自己注射でHMG 製剤はありますか? 担当医を信頼して 治療を続けるのが一番とは思うのですが……。

HMG製剤にも種類が

HMG製剤にはいろいろある?
福井先生 はい。成分や単位の違うものを合わせると、当院では5、6種類ほどを使用していますね。
自己注射も採用していますよ。
自己注射に使うペン型の注射器は、自分で量を細かく設定できます。
少ない量からだんだん多くしたり、最初に多く設定して、だんだん少なくするなど、医師が患者さんの経過を観察しながら投与量を指示します。
また当院では、最近は、排卵誘発剤で卵巣が腫れやすい卵巣過剰刺激症候群の人には、比較的副作用が出にくいとされているリコンビナントFSH製剤を使うケースが増えています。
ただ、絶対に副作用が出ないという確証はありません。
それよりも、みかんさんの相談のなかで私が気になったのは、「以前はクロミフェンに反応していたのに、今は反応しなくなった」ということ。
これは一つの推測ですが、BMIが 27 くらいあるので、もしかしたら急激に体重が増えたことが、薬に反応しにくくなった要因として考えられるのではないかと思います。
ですから、インスリン抵抗性をチェックする検査を受けられたほうがいいと思いますよ。

体重増加のリスク

急激に太ったことが不妊の原因かもしれないのですね。
福井先生 はい。排卵を注射だけでコントロールするのではなく、メトホルミンなど、インスリンの感受性を上げるための薬を飲むことが、もう一つの解決策になるかもしれません。
そうすると、HMG製剤を使わなくても、またクロミフェンに反応し始めるかもしれない。
強い誘発で副作用を意識しながら治療するより、むしろ近道かもしれないですね。
それに、この先妊娠した時、ただでさえ女性の体には負担がかかります。
もともとインスリン抵抗性の高い方が妊娠すると、糖尿病になりやすいのです。
それでは妊娠しても、途中で流産するなど、妊娠を維持することができません。
体重のコントロールは、不妊治療のためであると同時に、将来の出産時の体づくりのためにも必要なことなんですよ。

多嚢胞性卵巣への対処法

なるほど。ほかにも多嚢胞性卵巣に有効な治療法はありますか?
福井先生 卵巣にレーザーで小さな穴を開け、排卵しやすくする手術もあります。
腹腔鏡下卵巣焼灼術といい、保険が適用されるため、近年、一般的になってきた治療法です。
みかんさんの場合は、先ほど言ったように、まずはインスリン抵抗性をチェックしてみてはどうでしょうか。
結果によっては血糖値を改善する薬を使って、違う結果が期待できるのではないかと思います。
※リコ ンビナントFSH製剤:遺伝子組み換え(リコンビナント)技術によってつくられた排卵誘発のための薬で、卵子の発育に必要な卵胞刺激ホルモン(FSH) を有効成分とする。排卵誘発に用いるゴナドトロピン製剤。
※メトホルミン:2型糖尿病の治療薬で、血糖値を下げる働きをする。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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