【医師監修】小田原 靖 先生 東京慈恵会医科大学卒業、同大学院修了。1987年、オーストラリア・ ロイヤルウイメンズホスピタルに留学し、チーム医療などを学ぶ。東京 慈恵会医科大学産婦人科助手、スズキ病院科長を経て、1996 年恵比 寿に開院。AB 型・みずがめ座。同じ排卵誘発法でも、反応によって 薬のタイミングや使い方を工夫。「多嚢胞性卵巣症候群の方でも十分 妊娠のチャンスはある」と意欲的に治療に取り組む。
さんさん(28歳)からの投稿 Q.主人の精子の値が悪く、私も多嚢胞性卵巣ぎみと診断されたた め、顕微授精を決意。アンタゴニスト法で排卵誘発をしました。 3日目~7日目まで5回、HMG150 単位の注射をし、7日目 の超音波で大きい卵胞が17.8㎜だったので、8日目の夜に HCG 注射を打って、10日目に採卵。ところが卵胞の大きさに 差が出てしまい、採卵数は4個ですべて未成熟でした。結局、 移植できませんでしたが、次回も同じ誘発法でよいのでしょうか。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合
さんさんのように多嚢胞性卵巣ぎみの場合、アンタゴニスト法で誘発するのが適しているのでしょうか。
小田原先生 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の場合、刺激を強くしてたくさん卵子を採ると、あまり質のよい卵子が採れないといわれているんですね。
統計的なデータから見ても、ショート法やロング法で卵胞数が多くなると、卵子の異常の割合が増えるといわれています。
ただ、自然周期で1個の卵子だけで勝負するのはなかなか難しいので、やはり数としては6〜8個くらいの卵子を採取して、そのなかで形態的によい胚を選択するということが一番かと思います。
PCOSの方はロング法やショート法だと、卵巣過剰刺激症候群など、副作用のリスクも高くなりますから、さんさんのようにアンタゴニスト法、もしくはそれに多少クロミフェンを併用する方法が適しているのではないでしょうか。
PCOSは未成熟卵が採れやすい
アンタゴニスト法で卵子は採れたものの、すべて未成熟だったということですが、このようにならないために注意することはありますか?
小田原先生 PCOSの場合は反応性が悪くなりますから、3日目から150 単位という注射の量は決して悪く ないと思いますね。
それを連日か1日おき、あるいはクロミフェンを併用するのもいいかもしれません。
また、一番の問題である成熟卵が採れなかったということに関しては、採卵の時期を見極めることがポイントになってくると思います。
PCOSの方は比較的、未成熟卵が採れやすいという傾向があるので、卵胞がある程度大きくなったところで、できるだけ引きつけてから採卵するといいといわれています。
通常、卵胞の大きさが 16 〜 18 ㎜でHCG注射を打つとすれば、それを1日ほど遅らせてみる。
ただし、そのような方法でも卵胞の大きさに差が出てしまうことがあるので、そのなかでいくつかいいものが採れればよし、ということになるかと思います。
適した治療法を見つけるには
「これで絶対大丈夫」という方法を見つけるのは難しいのですね。
小田原先生 PCOSの方に限らず、卵巣の反応や出てくる卵子というのはなかなか予測がつかないことがあります。
ですから、僕は体外受精のスタートの際、患者さんに「2回までチャンスをください」とお話ししています。
1回目にうまくいかなかったとしても、そこで学ぶことは多く、次回のための重要な判断材料を得られます。
2回目からは先生もさらにうまくいく方法を考えられると思いますので、さんさんもがっかりされず、希望を持って次の治療に臨んでいただきたいですね。