流産した後、二人の気持ちが体外受精に向きません【医師監修】

【医師監修】ささ山 高宏 先生 産業医科大学医学部医学科卒業。産業医科大学病院、和歌山労災病院、 九州労災病院、セントマザー産婦人科医院の勤務を経て、1997年4月、 不妊治療から分娩まで手がける、幸の鳥レディスクリニックを開業。09年 12月から、より一人ひとりの患者と向き合えるよう、生殖医療に専念する態 勢を整える「。子どもの頃から町医者として地域の医療に貢献するのが夢だっ た」という、熱血漢で親しみやすい先生。出身は地元・広島県の府中市。 サンフレッチェ広島の熱烈なサポーターでもある。A型・おひつじ座。
のほほんさん(38歳)からの投稿 Q.人工授精6回目で妊娠できたものの、流産。その後の生理の経血の 少なさ、抗ミュラー管ホルモン(AMH)11.3の検査結果に自分の体 への不安を感じています。やっと体外受精への気持ちが向いて、主 人と体外受精のオリエンテーションを受けていたのに、流産してから は少し気持ち的に踏み切ることができない自分がいます。最近の生 理の状況から、排卵できなくなる兆候なのか、閉経なのかと、とて も不安です。早急に体外受精へ進むのが一番でしょうか?

AMHの値だけじゃない。

卵巣の予備機能の目安となる、AMHの値が低いことを大変気にしていらっしゃいます。
ささ山先生 AMHの値も含め、少し検査結果の数値に神経質になっておられるかもしれませんね。
11.3 という 値は、確かに 38 歳の年齢からすると少し低めではあります。
しかし、卵胞の数が少なくなっていることを示してはいますが、すなわち卵胞の質が悪くなる、ということではありません。
生理の状況から、排卵がなくなったり、閉経を心配しておられるようですが、それはまだ先のことだと思います。
それよりも気になるのは、治療を始めてから長い時間を費やしていること。
すでに3年が経過しています。そして、もうすぐ 39 歳という年齢を考えると、私は早めに体外受精に進んだほうがいいと思います。

理想から逆算する治療計画

6回目の人工授精で妊娠できたものの、流産を経験。一時は考えていた体外受精に気持ちが向かなくなってしまったそうです。
ささ山先生 流産は、確かに女性にとってショックな出来事です。
でも、逆に妊娠できた実績として自信を持ってください。
体外受精に進むということは、妊娠できる確率がより高くなる、大きな〝武器〞を持つようなもの。
私はまず彼女に自分の理想とする家族像を聞いてみたいですね。
理想の家族像ですか?
ささ山先生 そうです。子どもが何人いて、どういう家庭をつくりたいのか、要するに自分の家族構成ですよね。
たとえば「子どもは1人でいい」とか「2人欲しい」とか、明確なビジョンを持って治療に臨んだほうがいいということです。
もし2人欲しいとしても、今ならまだ十分間に合うと思いますから。
直接お話ししていないのでわかりませんが、相談内容を拝見する限りでは、次のステップへ進むための、自分なりの理由づけを必要とされているのではないかなと感じました。

ドクターの後押しも必要

体外受精の専門クリニックへの転院も検討中とのこと。年齢のこともあるので、次の治療へと進むなら早めがいいですね。
ささ山先生 そうです。近年は晩婚化が進んで、仕事をしながら通院される方も増えています。
時間がないのはしかたないことですが、治療は継続しなければ、本来なら赤ちゃんができるはずの女性の芽を摘んでしまうことになる。
そのためにもドクターが患者さんの話をじっくり聞いて、次へ進むために納得していただくことが大切だと考えています。
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