排卵が確認できず顕微授精の予定が延期。ほかに治療法はありますか?【医師監修】

【医師監修】神谷 博文 先生  札幌医科大学卒業。同大学産婦人科学講座、第一病理学講座に入局後、 斗南病院にて産婦人科科長を10 年間務める。1998 年、神谷レディー スクリニックを開業。麻酔科標榜医、細胞診指導医。趣味のゴルフで、 たまの休日に札幌近郊のコースへ出るのが楽しみ。最近は、『左一軸打 法』のレッスンDVDを見ながら、イメージトレーニングをしているとか。
みいみさん(42歳)からの投稿 Q.私の年齢や、夫の精子奇形率が高いこともあり、顕微授精をす ることにしました。しかし生理が始まってから血液検査をする と、E2値が低く、排卵していないことがわかり、治療は延期に。 産婦人科の医師からは「FSHの値が閉経した値に近いので、治 療を諦めることも考えたほうが……」と遠回しに言われました。 ほかに治療の方法はない? 不妊治療専門の病院なら、まだ治 療の可能性があるのでしょうか。

ホルモンの値

みいみさんは、HMG製剤の注射 で排卵を誘発していますが、E2値が 12 と低いため、顕微授精が延期になっているそうです。これは排卵していないということですか? FSH値は 24.9 です。
神谷先生 E2は卵子周囲から出る、卵胞ホルモンです。
排卵前の卵胞期でも通常200〜400はありますが、みいみさんは非常に成熟卵胞がなく排卵のない状態です。
卵巣での卵胞発育を促すホルモンであるFSHは、卵胞の数が少ないなどの場合、数値が高くなります。
生理2〜4日目以内で、FSH値8以下なら卵胞は順調に発育しますが、 18 以上になると自然排卵は難しくなりますね。

卵胞の有無が重要

より強い排卵誘発剤を使うか、治療を中止するかの選択を医師に求められているそうですが、ほかに治療の方法はないのですか?
神谷先生 顕微授精も体外受精も、卵胞があることが大前提。
ですから、まずは卵胞があるかどうか卵巣の予備能を検査します。
あれば妊娠する可能性はゼロではありません。
ただし、常に卵胞刺激ホルモンにさらされている卵胞は感受性が鈍くなり、排卵誘発剤に反応しなくなることがあります。
そこでピルやカウフマン療法でFSH値を下げて排卵誘発剤に反応しやすい状態を作り、生理が来たらHMG製剤やクロミフェンで排卵を誘発する方法を行います。

年齢に合わせた治療を選択

40 代という年齢が、妊娠を難しくしている面はありますか?
神谷先生 当院では、最近は 40 歳を過ぎて不妊治療を希望される方も多いです。
卵巣機能が十分にあり、自然排卵がある方なら妊娠の可能性はまだまだあります。
しかし、年齢的にもホルモン値的にも妊娠が難しくなっている方の場合、不妊治療は期限を決めておくことが大切です。
もし2〜3周期試して排卵がなかった場合、治療を続けるのか、諦めるのか、不妊治療は中止してホルモン充填療法でQOL(人生の質)を上げることを優先させるのかなど、いくつかの選択肢から今後の生き方を選ぶ岐路に来ていると考えられます。
不妊専門病院への転院も考えたほうがいいでしょうか?
神谷先生 みいみさんの場合、自然排卵が難しいため、治療の結果で成熟卵胞ができたら、それは非常に貴重なチャンスですので、確実に受精させたいですね。
そのためには不妊専門病院で治療を受けるのもいいでしょう。
病院選びは重要です。よく話を聞いてくれて、いろいろな選択肢を示してくれる医師を探していただきたいですね。
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