【医師監修】堀川 隆 先生 琉球大学医学部卒業。国立国際医療 センター、国立成育医療センター不妊 診療科勤務を経て、2009年12月よ り高崎ARTクリニック院長に就任。国 際医療センター勤務時より内視鏡手 術・生殖補助医療に従事。成育医療セ ンターでは難治性不妊治療・加齢と不 妊についての研究に取り組む。同院で は体への負担を考え、できるだけ自然 の排卵と、自然の受精メカニズムを大 切にした治療を行っている。生まれも育 ちも沖縄県・那覇市の先生は、大らか で明るいB型・みずがめ座。
chiroluさん(34歳)からの投稿 Q.人工授精の実行2日前(2月28日午前)に卵胞を確認し、 20.5㎜でした。翌日または翌々日でもよいとのことだったので、 3月1日午前に予定。卵胞を確認したところ排卵済みでしたが、 特に何の説明もなく、予定通り人工授精をしました。タイミン グとしては遅かったのでは? 無駄に終わる気がして落ち込ん でいます。
人工授精のタイミング
排卵した後に人工授精をされたということですが、このタイミングでも妊娠の可能性はありますか。
堀川先生 卵子の受精可能期間はだいたい半日〜長くて1日くらい、精子のほうも1日程度受精能力があると考えられていますから、その範囲内で多少ずれていても大きな問題はないと思いますね。
この方の場合、担当医の先生が予測されたように2月 28 日でもチャンスはあったし、実際に人工授精を行われた3月1日でも妊娠の可能性はあると思います。
排卵前、排卵後、どちらがベストなタイミングなのでしょうか。
堀川先生 排卵前のほうがいいのではないかという考え方もあります。
それは、卵子より精子のほうが受精能力が長く持続するからなのですね。
精子を先に入れて待機している状態にして卵子と出会わせる。
ただ実際には、どの時点で排卵するのかを正確に判断するのは難しく、排卵痛があっても翌日みると排卵していなかったりということもあります。
排卵の瞬間というのは実際、はっきりと確認することはできないのですね。
排卵確認
この方も前日の2月 28 日に排卵痛らしきものがあり、おりものもあったそうですが、採血・採尿による排卵確認はしていないそうです。堀川先生のクリニックではどのように排卵を確認されていますか。
堀川先生 超音波をはじめ、採血で自然のLHサージをみたり、スプレキュアⓇのような積極的にLHサージを起こす薬を使って、できるだけ正確にタイミングを合わせるようにしています。
前向きに、治療に・・・
落ち込む必要はありませんか。
堀川先生 実際、お腹の中で何が起こっているのかわかりませんから、あまり神経質に考えなくてもいいのかなと思います。
この方は前日に排卵痛があったので、「間に合わない」とがっかりされたと思うのですが、丸1日以上過ぎているわけではないので、妊娠のチャンスは十分あると思いますよ。
逆にベストなタイミングだった可能性もありますから、落ち込まずに、期待して結果を待っていただきたいですね。
※LHサージ:黄体形成ホルモンが一過性に大量に放出される現象。これが排卵を引き起こす。成熟した卵胞から分泌される大量のエストロゲンの正の フィードバック作用によりLHサージが起こる。
※スプレキュア ®:一般名はブセレリン酢酸塩。卵胞ホルモンの分泌を抑える目的のGnRHアゴニス ト製剤。