精液検査で再検査に。次の結果も悪かった場合どうすればいいですか?【医師監修】

検査結果が悪いと、誰もが一度は落ち込んだり、悩んだりするもの。 今回は精液検査の結果について、夫婦でどう受け止め進んでいくか、 内田クリニックの内田先生にアドバイスをいただきました。

【医師監修】内田 昭弘 先生  島根医科大学医学部卒業。同大学の体外受精チームの一員と して、1987年、島根県での体外受精による初めての赤ちゃん 誕生に携わる。1997年に内田クリニック開業。1階は奥様が 副院長を務める内科・胃腸科、2階が婦人科。地域の産婦人 科医と連携を取り、専門性の高い不妊治療に積極的に取り組 む。O型・おひつじ座。ゴルフ仲間の先生方の間でも評判の 腕前を持つ内田先生。そんな先生の誕生日を祝って開催され たコンペでは、バースデー優勝を狙うも残念な結果に。次回こ そ優勝を狙うべく、多忙な仕事の合間にも腕を磨いているそう。

ドクターアドバイス

検査結果に対して、二人はどうしていくのか? 選択肢を準備しておくことが大切です。
あやのりさん(会社員・28歳)からの投稿 Q.私には、 ※ 在性高プロラクチン血症と、少し排卵障害があります。 ところが主人も精液検査で「この数値では自然妊娠は難しい。 人工授精からですね」と言われ、再検査になりました。検査の前日、主人は 夜遅くまで残業だったのでこのときは「体調のせいだよ」と言えましたが、 次も結果が悪かったらと思うと怖くて再検査に行けません。 もし男性不妊の結果が出た場合、 ※ イミング療法では無理なのでしょうか?

精液検査について

精液検査の結果が悪い場合、考えられる要因はありますか。
内田先生 基本的にはないと思います。強いていえば、どういう射精のインターバルで検査に臨まれたのかが気になりますね。
私のクリニックでは、検査日の3〜5日前に一度射精しておいてくださいと伝えています。
なかには、検査日まで射精せずに溜めておいたほうがよいと思っている方もいるようですが、射精のインターバルが長すぎても短すぎても、精子の状態にはよくないんですよ。
セックスも、排卵のタイミングのときしかしないというご夫婦が多いのですが、不妊に悩む人は特に、週に1回を目安にしていただけるといいと思います。
射精のインターバルとして、精子の状態がよくなることはあっても、悪くなることはないですから、実は理想的なんです。
それに、生殖行為以外にセックスができるのは人間だけですし、ご夫婦の関係を考えても、それくらいが理想なのかなと思いますね。

検査結果とストレス・疲労

ご主人の体調が万全でない状態での検査だったそうですが、疲労やストレスとの関連についてはどうでしょうか。
内田先生 体調不良やストレス、ましてやアルコールが入ると勃起すらできなくなるので、私は「そういう要因がないとはいえない」という程度に考えています。
特にストレスとの関わりについては、さまざまな意見がありますが、私はそれほど重視していません。
なぜなら、現代社会でストレスを抱えていない人はいないでしょう。
それに、自分で解消できるストレスもあれば、できないストレスもあります。
解消できないストレスをなくそうとする努力が、かえってストレスになる場合もあります。
要は、ストレスをどう捉えるか。ストレスがあって当たり前くらいの気持ちでいるほうが、楽なのではないでしょうか。

検査結果が悪い時、次の手は?

2度目の精液検査が悪かったときのことを考えて、再検査をためらってもいるようですが。
内田先生 そもそも検査を受ける前に、「結果が悪かったら、自分たちはどうするか」という次のビジョンをご夫婦で持っているかどうかですね。
たとえば、卵管が詰まっているという診断が出たとします。その結果に、ただ落ち込むだけでしょうか?それとも、 ※ 宮卵管造影検査や ※ 気・通水検査、 腹腔鏡検査体外受精ど、次の可能性に挑戦してみようと考えますか?  
つまり検査前に、後者のようないろいろな選択肢があることを知っているかどうかです。
実は私のクリニックでも、年に4 回、不妊セミナーを開いたり、冊子を購入してもらったりして、不妊知識を深めていただけるよう促しています。
特に受診前の人は、セミナーに参加してから治療に臨んでいただくのが理想なのですが、現実はなかなか難しいですね。
現代の医療のなかでも、特に不妊治療の場合は、患者さんに選択のチャンスがあると思います。
最近はインターネットでも必要な情報がすぐ手に入りますよね。
ですから、受診前や検査前に基本的な知識を深めて、どんな結果に対しても選択肢や心の準備をしておくことが大切です。
そうすれば、たとえ結果が悪かったとしても、「逆に原因がわかってよかった」と捉えて、次の可能性に向かって進んでいくことができますよね。
あやのりさんご夫婦の場合は、2回目の精液検査が悪いとは限らないわけですから、よい結果が出ることも想定して、1回目の悪い結果と2回目のよい結果、どちらの結果をもとに、どう進んでいきたいのかを考えておくといいですね。それは、ご夫婦が選択できるということです。
ちなみに、当院にもあやのりさんと同じようなケースの方がいました。
奥さんに少し排卵障害があって、精液検査では1回目は悪い結果、2回目はよい結果が出た。「よいときと悪いときがありますが、どうしますか?」と聞くと、二人は「よいときもあるから」とタイミング療法を選んで、自然妊娠されました。
もちろん結果のレベルにもよりますが、そういう選択肢や可能性もあるということです。

予備知識とビジョンを持って

結果が悪かった場合、ご主人にどう言えばいいかも、プレッシャーになっているようです。
内田先生 ご主人は自分の検査結果を自分で聞かないのでしょうか?
私のクリニックでは、精液検査については、ほぼご主人に来ていただいています。
だいたいご夫婦揃って来られますが、たまにご主人一人で来られることもあります。
通院の中心は奥様でも、自分の検査結果は自分で聞いて、その後につなげてもらうことが大切ですね。あやのりさんの場合、結果が悪いという悩み、ご主人にどう言うかという悩み、一人で2つの悩みを抱えないといけない。
でも二人で聞けば、二人で一緒に悩めますよね。
だからこの場合、男性はどれだけ自分のこととして捉えられているのかを、よく考えてみてほしい。
大切なのは、二人で一緒に妊娠という目標に向かう姿勢です。
そして同時に、検査結果に一喜一憂するのではなく、予備知識を持って先のビジョンをイメージしておくこと。

二人で前向きに治療に臨んでほしいと思いますね。

※潜在性高プロラクチン血症:日中の安静時のプロラクチン値は正常であるにもかかわらず、夜間になると高値を示す病態。黄体機能不全などがみられ、ブ ロモクリプチンなどの投与が有効といわれる。 

※タイミング療法:基礎体温や尿中または血中のエストロゲンや黄体形成ホルモンを測定して、排卵日を予 測し、その排卵日前後に性交渉を行う、不妊治療の一つ。
※腹腔鏡検査:腹腔の中に内視鏡を入れて、臓器をモニターで観察して異常を調べる検査。 子宮、卵管、卵巣の様子が一目瞭然となり、内診や超音波検査などではわからない異常を見つけることができる。
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