治療をやめるのは〝パッションの火〞が消えたとき。【医師監修】

治療を続けるべきか、 それとも諦めるべきか……。 今回は、不妊治療を続けるなかで、 誰もが考える迷いについてのご相談。 自分を見失いそうになったとき、 ぜひ思い出してほしいアドバイスです。

【医師監修】田村 秀子 先生 京都府立医科大学卒業。同大学院修了後、京都第一赤十字病院に勤務。 1991年、自ら不妊治療をして双子を出産したのを機に、義父の経営する田村 産婦人科医院に勤め、1995年に不妊部門の現クリニックを開設。繊細な感性 を秘めた、おおらかな人柄が魅力の先生は、A型のみずがめ座。自らの不妊症 や乳がん克服の治療体験に基づいた心のケアは、女性医師ならでは。夫婦、嫁 姑、友人関係など、不妊治療を通して女性が一人で抱えてしまいがちな悩みにも、 独自の視点で対処法を用意してくれる。

 

あいさん(パート・38歳)からの投稿 Q.結婚10年で、子宮内膜症、卵管閉塞など、 問題ありありです。自然妊娠は無理と言われ、 足掛け6年くらい顕微授精をしていますが、 1度も陽性反応を見たことがありません。 今は治療をお休み中ですが、子ども好きの旦那に 我が子を抱かせてあげられないのがつらいです。 お互いの問題だから、と言ってはくれるけれど 涙が出ます。諦めどきなのかな。

本当に〝火〞が消えたのか 自分をもう一度見つめ直す

基本的には「治療の諦めどき」を私から患者さんに言うことはありません。年齢的なことなど、やんわり伝えることはありますよ。
ただ、治療をやめたいときは、自分から「フェードアウトする」のがいい。まだ納得しない、本人が諦められない
という場合は私も治療を続けます。
実は、いったん治療をフェードアウトして、また戻ってくる患者さんというのが結構多いんですよ。
自分のなかで納得して、ストンとフェードアウトできていればいいのですが、無理して諦めたときは、後にドーンと悔いが残ります。それでまた戻ってきてしまうの。
あいさんの年齢で、問題を抱えながら6年間も顕微授精を続けているけど、まったく結果が出ない……という人は決して少なくないと思います。
そこで、私が思うのは、いま一度自分を見つめ直してほしいということ。自分のなかで治療に対する情熱の〝火〞が本当に消えているのか?  もう一度考えてみてほしい。
たとえば、あいさんは「子ども好きの旦那に、我が子を抱かせてあげられないのがつらい」と言うけれど、自分以外の誰かに責任を転嫁していませんか?
転嫁するタイプの人というのは、自分をすごくガード、カムフラージュしている人が多い。
ダメなときの言い訳を探しているというのかな。転嫁している間はやっぱり無理している。
もし、ご主人が「子どもはもういいよ」と言って、本当にあいさんが諦められるのなら、すっきりと治療をやめることができると思います。

子どものいない二人の未来を 思い描いたうえでの治療

そして、もう一つ考えてほしいのは夫婦のあり方。たとえば、夫婦二人だけの人生はまったく意義がないものだろうか?
それもそれで一つの人生なのだと思えるかどうかです。結婚って「あなたと一生一緒にいたい」からするものでしょう?

子どものいない 60 歳の二人をイメージしておくことも大切です。

それには、ご主人とも話をしないといけませんね。決して答えを求めようとせず、二人の間に子どもがいない将来について、どう思っているのかを話し合うのです。
ときには温泉旅行にでも出掛けて、このような機会を持つといいですね。男性にとって女性の考えていることは永遠に謎(笑)。
反対に、女性が男性のことをすべて理解していると思うのも間違いですから!
結局、治療の諦めどきなんてどこにもないのです。治療をやめるのは、あくまでもあなたのなかのパッションの火が消えたとき。そこで火が消えていないことを確認できたら、また治療を続けたらいい。
治療でよい成果が出なければ、子どものいない未来の生活に、だんだん色が付いてイメージできていくかもしれません。
すると、将来もし子どもを諦めることになっても、スッとそちらへ考えをシフトすることも可能でしょう。
不妊治療をやめて、自分たちが 50歳、 60 歳になったときに後悔しないか。「治療のない毎日の生活ってこんなに楽しい。これでよかった!」と心の底から思えるのか。
人間、自分のことは自分が一番よくわかっているもの。だからもう一度、自分自身に問いかけてみてください。

秀子の格言

治療をやめるのは、 あくまで自分のなかの 〝パッションの火〞が消えたとき。 後悔しないことが大切です。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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