どれくらい続けたらいいの?不妊治療のステップアップのタイミングを教えてください【医師監修】

 

すでに不妊治療を行っている人、 これから始めようとしている人のために、 不妊治療の細かいステップを 蔵本ウイメンズクリニックの蔵本先生に伺いました。 不妊治療は、どういう流れで進んでいくのか、 どんなタイミングでステップアップしていくべきか。 治療前、治療中、さまざまな壁にぶつかりつつも、 目標に向かって一歩一歩進んでいけるように データをもとに、それぞれの治療への取り組み方を 教えていただきました。
【医師監修】蔵本 武志 先生 久留米大学医学部卒業、山口大学大学院修了。山口県立 中央病院産婦人科副部長、済生会下関総合病院産婦人 科部長を経て、1990年オーストラリア・PIVETメディカ ルセンターへ留学。帰国後、1995年蔵本ウイメンズクリ ニック開院。O型・おうし座。実はミュージカル好きとい う蔵本先生。最近は、福岡シティ劇場で劇団四季の『ウェ ストサイド物語』を観て感動し、2度も観に行ったそう。

ドクターアドバイス

患者さんの年齢や原因によって タイミングはさまざま。 目安となるデータなどをみながら 納得して進めることが大切です。

治療スケジュールの決定基準

初診の際に、治療スケジュールのすべての要因を考えてご提案されていらっしゃると思いますが、その基準となるものを教えてください。
蔵本先生 不妊治療は、無駄なく、効率よく、安全に、というのが私たちの方針です。まずは「急がば回れ」で、きっちりと検査をし、それぞれの患者さんに合った治療を考えます。
通常、検査は月経初期からさまざまな検査を1周期行います。問題がある場合には再検査することもありますので、2周期かかる方もいらっしゃいます。厳密に月経初期からでなくても、来られたタイミングでできる検査から始めます。
当院では、最初に生殖医療専任看護師から一般不妊治療に対する詳しい説明を行います。もちろん、わかりやすいように資料も用意していますが、より深くご理解いただくために、1時間くらいかけて個別に説明をしていますね。それからドクターの診断に入ります。

夫婦二人で参加する??

この説明は夫婦で聞いたほうがいいのでしょうか?
蔵本先生 もちろん、不妊治療はお二人のことですから、ご夫婦で参加されたほうがいいですね。ご主人の理解も必要ですから。治療についてより理解できるし、お互い協力し合って治療に取り組んでいけると思います。
検査の初めでもいいし、検査結果が出るときにお二人で来られるのでもいいでしょう。

治療回数の目安

検査終了後、どのようなステップで治療が行われるのでしょうか?
蔵本先生 検査の後、それぞれに合う治療方針を見つけます。 35 歳未満の場合は、イミング療法から始めるのが一般的。それから人工授精へと進みます。
以上の2つの治療において、排卵が整っていない方や、排卵するけれどなかなか妊娠されない方は少量の排卵誘発剤や注射を使用します。それでも妊娠されない方は、体外受精、顕微授精へのステップアップのご検討をアドバイスしています。
それぞれの治療はどれくらいの期間続けるのでしょうか?
蔵本先生 当院では、タイミング法で妊娠される方は全体の 20 %ぐらいで、タイミング法で妊娠された方の70 %が3回目までに妊娠されています。このデータをもとに、タイミング法は女性の年齢や不妊治療歴を考慮して3〜6周期を目安に、次のステップである人工授精に進まれるようすすめています。
さらに、人工授精で妊娠される方が全体の 25 %。そのうちの 90 %の方が4回目までに妊娠に至っていますので、人工授精も4〜5回が目安と思われます。ただし、このデータは35 歳未満の場合です。
それは、年齢によっても回数の目安が違ってくるということでしょうか?
蔵本先生 女性は 37 歳を境に卵の数が激減してきます。 30 代からだんだん卵の質が落ちてきて、それにともない妊娠率も落ちてきます。ですから、 35 歳未満の方に関しては、一般不妊治療の目安を1年、 35 歳以上の方はそれよりステップアップを早めにするほうがいいと思われます。
もちろん、ご本人の意思を尊重していますので、あくまで目安です。しかし目安を知っておくだけでも、みなさん「もう少し頑張ってみようかな」という気になるようです。

体外受精へのステップアップ

一般不妊治療で妊娠しない場合、体外受精にステップアップすべきでしょうか?
蔵本先生 体外受精をすると、夫婦間で受精するかどうかが判明しますし、妊娠の確率が人工授精の4〜5倍に上がりますので、ある程度一般不妊治療をしても妊娠しない場合は、体外受精へのステップアップを考えられるといいでしょう。
ただし、体外受精に関しても、ご夫婦お二人のしっかりとした理解が必要です。
当院では、一般不妊治療から体外受精へとステップアップする場合、再度、医師と体外受精コーディネーターによる高度生殖医療(ART)の説明会を行っています。
また別に個別説明も行っています。

最初から、体外受精というケース

場合によっては、いきなり体外受精、ということもありえるのでしょうか?

蔵本先生 精子の数がゼロに近い場合や、卵管が詰まっている場合などは、卵管鏡下卵管形成術をご希望でない方には、一般不妊治療を飛び越えて、体外受精から始めることもあります。

また、原因不明で一般不妊治療をしても妊娠しない場合、一度体外受精をしてみるのも……。

というのも、人工授精の場合、排卵したかどうかはわかりますが、卵管を通って受精したかどうかというのはわからないんです。

体外受精であれば受精するかどうかがわかるので、一度体外受精をされてみるのもいいと思います。

ただし、費用のこともありますので、無理にはおすすめしませんが。 いずれにしても、ご自身で納得し てからステップアップしていくことが大切ですね。病院側もなるべく、わかりやすくご説明するように心掛けています。
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