【医師監修】塩谷 雅英 先生 島根医科大学卒業。卒業と同時に京都大学産婦人科に 入局。体外受精チームに所属し、不妊症治療の臨床に取 り組みながら研究を継続する。1994~2000 年、神戸 市立中央市民病院に勤務し、顕微授精による赤ちゃん誕 生に貢献。2000 年 3月、不妊専門クリニック、英ウィ メンズクリニックを開院する。A 型・しし座の先生のスト レス解消法は、テニスとジョギング。いずれもゴルフの飛 距離を伸ばすために行っているトレーニングだが、「最近 はゴルフに行く時間がなくて……」とちょっぴり寂しそう。
macco。さん 26 歳 Q.現在は治療をお休みしてダイエット中なのです が、血中のプロラクチンの値が高い( 高プロラクチン血症)と着床に支障があると聞き、不安に 思っています。ヒュナー検査の結果がよかったり 悪かったりするのも気になります。来年から治療 を再開したいと思っているので、ステップアップ するかどうかも含めてアドバイスをお願いします
加体重のリスク
妊娠しない原因はなんでしょうか。
塩谷先生 月経周期が 28 〜 32 日とやや延長ぎみであること、肥満(BMI 30.8 )、血中のプロラクチンの値が 高いことなどから判断して、この方は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)と診断される可能性が非常に高いと思います。
これが妊娠できない一番大きな原因でしょう。
一般的に妊娠しやすいのはBMI 25 以下と言われていますので、この方は 14 ㎏の減量が理想的ですが、これは一朝一夕にできることではない。
せめて1㎏でも2㎏でも、時間をかけて体重を減らす努力をしてほしいですね。出産のことも考えると、今の状態ではたいてい難産になります。その結果、帝王切開となる危険性もあり、何よりご自身がつらい思いをされますから、頑張ってみてください。
ただ、無理なダイエットはストレスとなって体によくないですよね。
塩谷先生 はい。ヒュナー検査でいい結果が出ているし、いい卵をうまく排卵させてあげさえすれば、妊娠できるのではと思います。PCOSはあくまでも排卵や着床がうまく起こりにくいということですので、現時点ではステップアップもメリットはあまりない。この方の治療のメインは排卵誘発治療でしょう。
胚卵誘発法の選択
では、どのような排卵誘発治療の方法が考えられますか?
塩谷先生 大きく分けて3つ。1つは、彼女がすでに行っているクロミフェンの飲み薬による治療。保険も使えますし、これがまずファーストチョイスです。
※リコンビナントFSH製剤:遺伝子組み換え(リ コンビナント)技術によって作られた排卵誘発のための薬で、卵子の発育に必要な卵胞刺激ホルモン(FSH)を有効成分とする。排卵誘発に用いるゴナド トロピン製剤。
3つ目は ※ レトロゾール。もともとは乳がんの治療薬で保険が適用されませんが、頸管粘液の量が減る、子宮内膜が薄くなるといったクロミフェンのような副作用がない。
卵を1個だけ排卵することが多いので、多胎にもなりにくいと、使用するクリニックが増えてきました。
※レトロゾール:閉経後の乳がん治療に用いられる薬剤。
いずれも排卵誘発剤の副作用を理解したうえで、治療を進めることが大切ですね。