【医師監修】高橋 克彦 先生 慶應義塾大学医学部卒業。イン ターン時代に立ち会ったお産に感 激し、産婦人科医を目指す。 1990年に日本初の体外受精専 門外来クリニック、高橋産婦人科 を開業。後に広島HARTクリニッ クと改名。2000年、東京HAR Tクリニック開設。「日本初」の 実績を次々と打ち立て、日本の不 妊治療界をリードする。A型・や ぎ座。趣味はビール片手に球場 で野球観戦、という生粋のカー プファン。
Sebuさん 34歳 Q. 男性です。乏精子症、精巣が小さく 造精機能も悪い男性不妊と診断されています。 顕微授精で3回失敗しましたが、 妻のほうの問題はないと言われています。 検査法や排卵誘発法を変えるのは有効ですか?
男性不妊、女性にも原因のケースがある
このような症例は多いのですか?
高橋先生 決して少なくないですよ。男性の場合は、Sebuさんのようにハッキリと診断がつきやすいため、不妊のすべての要因は男性側にあるだろう、と思うのは当然なんです。
ところが、実際、私のクリニックでも、男性の精子がよくないから体外受精、顕微授精を、と言われる夫婦のうち、4組に1組は女性側にも問題が見つかります。ただし、女性の場合は普通の不妊検査ではわからないことも多く、実際に採卵や体外受精をしてみないと、卵の質や着床障害などの診断ができない場合がほとんどです。
移植方法の変更
新鮮胚移植で2回失敗、凍結胚盤胞も1回失敗し、現在、凍結胚盤胞2個が移植未定の状態だそうです。
高橋先生 基本的に胚盤胞までいっているのであれば、妊娠が成立する可能性は十分にあります。次は4回目ということなので、胚移植の方法を、今までと変えてみるのも手です。
一つは排卵の5日後に解凍して胚移植する方法、もう一つは卵胞ホルモン剤による子宮内膜作成法です。少なくとも2つ残っているのであれば、前回と違う方法を試してみては。
自然周期へのご意見
毎回クロミフェンで排卵誘発されていますが……。
高橋先生 これにちょっと異議ありです。クロミフェンは、もともとはピルのために開発された抗女性ホルモン薬なんです。排卵させないことを目的に開発したら、なんと抗女性ホルモンの作用に脳が逆の反応をして、余計に排卵を促すようになってしまった。
ところが子宮においては、女性ホルモンによって厚くなるはずの子宮内膜が厚くならないとか、いろいろな問題が起こる。クロミフェンを飲むと7〜8割の人は排卵しますが、妊娠率はよくないと、これは昔から言われていることです。
もし、奥さんの年齢も若いのであ れば、卵も十分採れそうです。今一度、ちゃんとした ※ ロング法に戻して、排卵誘発剤を変えるのも有効だと思います。
Sebuさんは兄弟間 AIDも考えています。日本にもAIDを行う医療施設はありますか?
高橋先生 日本産婦人科学会に問い合わせれば、登録施設を紹介してもらえます。ただ倫理的な問題などもあるので、まずはドクターに相談してみることをおすすめしますね。