ジネコアンケートで「ドクターに聞いてみたいこと」を募集したところ、 届いたのがこの質問。フォリスチムは新しく認可された 排卵誘発剤だけに、みなさんも興味津々、不安や疑問も多いようで、 同じように悩むジネラーから寄せられる投稿もたくさん。 この悩みを解決するべく、札幌の神谷レディースクリニックを訪ねました。
監修 神谷レディースクリニック 神谷博文先生 O型、さそり座。ミュージカルが好きで、帝 国劇場や日生劇場にときどき足を運ぶ。特 に好きなのは「レ・ミゼラブル」。あまりの感 動に3回も足を運んだとか。ストレス解消法 は映画、ゴルフ、スパ通い。
ヒトの尿由来の排卵誘発剤HMG*は、 もう使われていないのでしょうか? 私は前半フェルティノームP*、 後半パーゴグリーン*を使用しました。 フォリスチム*を使う病院も 最近増えてきていますが、 効果の違いはあるのでしょうか?
*「HMG」「フェルティノームP」「パーゴグリーン」は商品名。一般名は「下垂体性性腺刺激ホルモン」です。 「フォリスチム」の一般名は「フォリトロピン」です。
目次
HMG*は、 もう使われていないのでしょうか?
HMGは優秀な排卵誘発剤。 当然まだ使われているよ
うちでもHMGを使っているし、日本でもフォリスチムよりHMGを使っているところが多いんじゃないかな。HMGにはフォリスチムと違って、卵を大きくする黄体形成ホルモンが含まれているのが大きな特徴。そんなことから、このホルモンの値がもともと低い人にはとても有効なんだよね。
効果の違いはあるのでしょうか?
どちらも効果は同じくらいと感じている
日本ではまだ確かなデータがないからハッキリとしたことは言えないけど、妊娠率は2つともほとんど変わらないと思う。ただ、フォリスチムにはいくつかのメリットがあるよ。ひとつは、バイオテクノロジーで作っているから不純物がほとんどなくて、感染症の心配がないこと。
人の尿から作るHMGは、その危険が否めなかったからね。また、副作用もHMGに比べて少ないといわれている。HMGは「注射したいのに薬がない!」なんて言うことが過去にあったんだけど、フォリスチムにはその心配もないよ。
ベル(主婦・34歳) Q. フォリスチムを、これまでのHMG注射のように、お尻に打ってもらったのですが、フォリスチムは皮下注射なのですか? 看護師さんが「注射後はもまなくてもいい」とおっしゃっていたので……。 保険がきかないのも痛手です。
フォリスチムは皮下注射なのですか?
皮下注射が一般的。だから自己注射ができる
HMGは筋肉注射のみだけど、フォリスチムは一般的に皮下注射。だから筋肉注射よりいたくないはずだよ。あと、自己注射が認められているから、自分で自宅で注射できるのが利点だね。特に、住まいの事情で遠方から病院に通う人や仕事などで忙しい人にとっては、大きな利点だよね。さらに、簡単に駐車できるペン型の注射器がこの秋日本に入ってくるから、ますます便利になるよ。
保険がきかない
HMGに比べて、割高なのが実情
HMGは比較的安価だけど、フォリスチムはその3倍ほどの価格なので、残念なことに皆さんの経済的負担が大きくなってしまうんだよね。だから、うちのクリニックではHMGを使っていい結果が出ない場合にはフォリスチムに切り替えたりと、ケースによって使い分けている。HMGもフォリスチムも、今後は全面的に保険適応にして、皆さんの負担を軽くするべきだと僕は思うけどね。
自己注射や保険の適用。 将来的には 広く認められてほしい
「フォリスチムのことは、最近よく聞かれるね。みなさん真剣だから、情報にも敏感だよね」
と語る神谷先生。ジネコに寄せられる投稿と同じように、みなさんの新薬への期待は大きいのです。
「ただ、新しい薬だけに、情報が 錯綜しているよね。 H M G よりフォリスチムの方が優秀と言われることが多いけど、今のところ優劣はつけられない。逆に、 H M Gの方がいい場合もあるんだよ」
症状や場合によって使い分けているため、思い込みで決めず医師に相談してほしい、と言います。
「ただ、フォリスチムは自己注 射できるのがすごくいい点だよね。H M Gはまだ自己注射が認められていないんだけど、それも今後変わっていくんじゃないかな」
注射一本のために遠方から通ってくる人に申し訳ない思いをしないで済む、と語る先生。
「だって、みなさんの負担が減ることが一番でしょう。僕は昔から自己注射を提案してきた。時代がやっと僕に追いついてきたって感じかな?(笑)今後は、保険も広く適用されるようにしたいよね」
札幌の不妊開拓使とでも言うべき、熱い情熱をお持ちの先生。不妊治療の未来を垣間見た気がしました。