酒とタバコって、治療にはよくないですよね!? わかってはいても、簡単にはやめられなかったり。 頑張ってやめても、ご主人がやめてくれなくて イライラしてしまったり。 田村秀子先生、夫婦でお酒とタバコはやめるべきですか? 本音の部分を聞いてみました。
ドクターアドバイス
やめることを頑張りすぎずに 心が前向きになる方が大切
落ち込んだときに 起き上がるパワーを 与えるのが、私の仕事
やめることを頑張りすぎずに 心が前向きになる方が大切
取材部 初めてクリニックを訪れて、まずお聞きしたいことができてしまいました。先生、バラがお好きなんですか?
田村秀子先生(以下:先生) うちは家具やカーテン、ボールペンやホチキスまで、バラの柄なんです。心が安らぐような雰囲気にしたくてそろえてます。
取材部 このティーカップにも。かわいらしくって、リラックスできますね。
先生 うちに毎日来る人もいますから、少しでも明るい気持ちになってもらえればと思って。
取材部 細やかな配慮ですね。さて、今日はユーザーからの質問をお持ちしました。この方は、お酒とタバコは、治療中であればやめなくちゃいけないのかと。
先生 「お酒飲んでもいいですか?」って聞かれれば、「あびるほど飲んでよろしい」と答えたりしますよ(笑)。
取材部 ええっ! あびるほどって……いいんですか?
先生 まあ、「あびるほど」とい うのは言いすぎですけどね。お酒を飲みたいのを我慢して、というよりは、湯上がりの1杯のビールで気分が晴れるのだったら、多少飲んでもいいと思うんです。
取材部 体だけじゃなく、心の持ちようが大切なんですね。
先生 飲みたいなら、飲んでもいい。で、ちょっと体のために頑張ろうって気分のときには、飲まないとかね。全部を我慢する必要はありません。その前に、心が前向きになることが大切ですから。
取材部 なるほど。では、タバコはどうでしょうか?
先生 やめるにこしたことはないですよ。でも禁煙しても、すぐに次の日から肺がきれいになったりするわけじゃないですよね。禁煙
の効果が体に現れるまでには、3ヵ月から半年はかかります。無理な我慢を急にするよりも、長いスパンで妊娠後まで考えて、徐々に減らしていくとか、余裕のある考え方をしたいですね。
取材部 みかさんの投稿のように、ご主人のお酒やタバコで悩まれているケースも多いんです。やめてほしいのに、やめてくれなくて、ついイライラしてしまったり。
先生 気持ちはよくわかりますよ。でも、なんでも「ダメ」「やめて」って言う前に、ご主人が吸ってしまう、飲んでしまう、何か原因があることを考えてあげなくちゃ。仕事の疲れやストレス、治療だってご主人の負担にもなっているんですよ。
取材部 それがわかっていても、「治療のために一緒に努力してよ」とか「私だけ努力して、あなたは努力してないんじゃない?」とい
う気持ちになってしまうときもあるんでしょうね。
落ち込んだときに 起き上がるパワーを 与えるのが、私の仕事
先生 そうですよね。でも、相手の立場を考えてね、行動しなくちゃ。例えばタバコを換気扇の下で吸ってくれたら、「気を使ってくれてありがとう」って。やめられないけど、奥さんの受動喫煙は防いでくれているのだから。「ありがとう」の一言で、男性はもっと努力してくれますよ。お酒だってそう。ご主人がお酒が好きなら、飲んですっきりしたらって。二人とも好きなら、一緒に楽しく飲んで仲良くした方が、もっといい。
取材部 先生は、男性の心理をよくわかっていらっしゃいますね。
先生 女性の立場も男性の立場も、考えるようにしています。治療している女性の中には、男性の心の中が見えにくくなっている方もいらっしゃいます。同じ女性としてそういう人の心境がわかるから、一人ひとりを見て、見えなくなっていることを一言加えてアドバイスしています。
取材部 先生は、自分で自分の不妊治療をなさったのですよね。そのご経験から理解できることは多いのではないでしょうか?
先生 体験したからって、すべてがわかるわけじゃないですよ。でも、生理がきた、妊娠しなかったってときに、ただなぐさめるだけじゃいけないと思っています。落ち込んだときこそ、そこから起き上がるパワーを与えることが、医者の仕事なんだと。
取材部 実際に先生は、どんな言葉でエールを送られていますか?
先生 「妊娠するかどうかは、私にもあなたにもわからないこと。でも、結果がわかっているから努力するわけじゃないよね」「 60 歳 になったときに思い出したくないっていう治療生活にはしないようにしましょうね」って伝えてます。後で「あのとき、精いっぱい頑張った」と言える、一つの自信になるようにしたいですね。