【Q&A】染色体異常が続く体質はある?~佐藤幸保先生【医師監修】

しやんさん(36歳)

36歳、卵はたくさん採れますが、6度の移植(うち4回2個移植)は陰性3回、稽留流産3回でした。
TRIO検査や子宮内膜炎、不育症など一通りの検査も受けましたが問題なし。
合計9個の卵を戻しましたが上手くいかず、さらにPGT-Aに出した卵2個も異常胚。
合計11個、染色体異常がこんなに続くものなのでしょうか?
染色体異常しかない体質という人は存在するのでしょうか?

ハシイ産婦人科の佐藤幸保先生に伺いました。

【医師監修】ハシイ産婦人科 佐藤幸保 先生
京都大学医学部附属病院および高松赤十字病院で体外受精など生殖医療を担当。患者さんそれぞれのニーズに応じて、個別化した不妊診療を提供することをモットーにしている。
資格:産婦人科専門医、生殖医療専門医、周産期専門医・臨床遺伝専門医

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

 

年齢と染色体異常の関連性について教えてください。

加齢により卵子が染色体不分離に起因する異数性異常を起こす頻度が高まり、卵巣の中にある妊娠につながりうる卵子の割合は減少します。36歳であれば、染色体正常の胚盤胞を得るのに8個程度の採卵が必要と見積もられています(妊娠につながりうる卵子は8個に1個くらい)。しやんさんの場合、多数の卵子が採取できるようですので、それでも正常妊娠に繋がらないということは、年齢の割に妊娠につながりうる卵子の割合が少ないと考えます。

染色体異常しかない体質の方は存在しますか?

夫婦のいずれにも染色体異常がないにもかかわらず、受精卵の染色体異常によると思われる流産を反復する症例を私自身も経験したことがあります。精子あるいは卵子に染色体不分離による異数性異常が反復して発生していることが推定されますが、その原因はわかっておりません。

しやんさんの染色体異常が続く原因について、先生の考えをお聞かせください。

PGT-Aを実施した胚盤胞が2個とも染色体異常であったことを考えるとこれまで移植した9個の胚盤胞の大半に染色体異常があった可能性は否定できません。PGT-Aでみられた染色体異常のタイプによっては夫婦双方の染色体検査をしてもいいかもしれませんが、おそらく正常でしょう。精子あるいは卵子に染色体不分離による異数性異常が反復して発生していることが推定されますが、その原因はわかりません。

染色体異常が多い場合の対策や次のステップとして考えられる方法は何ですか?

夫婦の染色体異常の有無にかかわらず、染色体正常の胚盤胞が得られるまでPGT-Aを繰り返すしかないと思います。

しやんさんからの「合計9個の卵を戻しましたが上手くいかず、さらにPGT-Aに出した卵2個も異常胚。合計11個、染色体異常がこんなに続くものなのでしょうか?染色体異常しかない体質という人は存在するのでしょうか?」という質問に対して、先生からのアドバイスをお願いします。

夫婦のいずれにも染色体異常を認めないにもかかわらず、精子あるいは卵子に染色体不分離による異数性異常が反復して発生する場合がありますが、その原因はわかっておりません。不育症のデータからは、そのような夫婦の80%以上は最終的に正常な生児を得られることがわかっています。希望を捨てずに、染色体正常の胚盤胞が得られるまでPGT-Aを繰り返すしかないと思います。
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