【Q&A】胚盤胞にならない~小川達之 先生【医師監修】

まめこさん(31歳)

採卵時に成熟卵がたくさん取れて、受精率も顕微に変えてからはほぼ100%にもかかわらず、その後の胚盤胞到達率がかなり低く、結局採卵のたびに0〜1個程度(最大でも2個)しか凍結できていません。また、凍結時のグレードもあまりよくなく、これまで6回の移植で7個を戻してきましたが、そのうち6個は6日目胚盤胞です。
採卵①〜④はアンタゴニスト法、その後転院して採卵⑤〜⑦はフェマーラ周期で実施しており、フェマーラに変えてからグレードはやや改善しましたが、胚盤胞到達率の低さは相変わらずです。

これまでの7回の採卵の結果を全て合計すると下記の通りで、胚盤胞到達率だけ明らかに低いです。
採卵数…80個
うち成熟卵…62個
うち正常受精…50個
うち胚盤胞…7個

夫婦共に非喫煙者であり、過度な飲酒などの生活習慣もなく、基本的には平均的に健康な生活はしていると思いますし、夫婦共に毎日運動もしています。
卵の成長の経過を見ると、多くが後半で成長停止しており、特に胚盤胞になるギリギリ手前のところで成長が止まっているものも多々。(6cell〜コンパクション)
中には胚盤胞にはなっているが凍結できるグレードでなく破棄されたものもあります。
そのような状況で、ようやく胚盤胞にはなっても6日目に凍結というものが多く、なかなか着床もしてくれません。

29歳から体外受精を始めて早くも31歳になってしまいましたが、この年齢でここまで成績が悪いことが本当に悲しいです。もうなにもできることはないのでしょうか。
先生からは「めげずに毎周期やっていればいつか良い卵が出てくる」と言われていますが、すでに7回も採卵していて、この言葉を簡単に信じることも難しい状況です。
移植のたびに採卵からやり直しになるのも、お金と時間と体力が消耗されていき、辛いものがあります。
これだけ胚盤胞凍結率が低いと、コスパが悪すぎて自費でPGT-Aする気にもなれません(移植6回終わっていますが、流産が13週だったので保険適用回数がリセットされており、まだあと4回保険が残っている状態です)。

できることなら一度の採卵でたくさんの良好胚を凍結して、あとはひたすら移植するだけ…な状態に持っていきたいのですが、胚盤胞到達率を上げるために私にできること、なにかありませんか。
採卵・移植ともに完全自然周期はまだ試したことがありませんが、それも一手になり得るのでしょうか。
子どもを3人希望していたのに、28歳から始めた1人目の不妊治療も早くも4年目に突入してしまいました。
3人を産めるリミットが近づいてしまっていることにとても焦っているので、採卵を繰り返すタイムパフォーマンスの悪さを切実になんとかしたいです。

表参道ARTクリニックの小川達之先生にお伺いしました。

【医師監修】表参道ARTクリニック 小川達之 先生
2009年山梨大学医学部卒業。2016年より山梨大学医学部附属病院産婦人科にて不妊治療にあたる。2024年4月より亀田IVFクリニック幕張に入職、2025年8月より表参道ARTクリニックの院長に就任。ひとりひとり個別の状況に対応し、患者様の立場に立った医療を提供したいという想いを持って日々、診療に従事。医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医。日本生殖医療学会生殖医療専門医・指導医。日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

採卵・胚培養の結果が思わしくない場合には、胚発育の状況によって、刺激方法を変更する、男性不妊症のアプローチをする、精子選別をする、培養液を変更するなどのアクションを起こすことがあります。
刺激方法については、GnRHアンタゴニストやPP法(PPOS法)から試みることが多いですが、いわゆるmild stimulationと称される程度の刺激法にすることも状況が変わりますので有益な可能性はあります。完全自然周期ですと得られる卵子数は1個になってきますので、胚盤胞到達率が低い場合に卵子数で勝負できないところがネックにはなります。

男性の診察はしてもらっているようですが、精子選別の先進医療(膜構造を用いた生理学的精子選択術など)も有効である可能性があります。
培養室でも、各社各種の培養液を試してみて、タイムラプスインキュベーターで胚発育の様子を確認し、最も状況の良い培養液を模索することがあります。
本当に良い成績が得られない場合には、葉酸・ビタミン・ミネラルの成分のものだけを残して、いわゆる抗酸化剤のサプリメントを敢えて止めてみることもあります。
まずは次の採卵結果が良いことを願います。応援しています。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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