胚盤胞ができづらく 悩んでいます。刺激法を変えるべき?

相談者 :たまさん(31歳)
▶︎胚盤胞の成長課題と今後の治療方針について
AMH値は1.43ng/ml。これまで4 回採卵、2 回移植しましたが、胚盤胞に育たず悩んでいます。3 回目の採卵で2 個できたのですが…。今はPPOS 法を中心に治療を進めているのですが、受精はできても、このまま同じ方法でいいのか迷っています。先生には初期胚凍結もすすめられていますが、胚盤胞移植とどちらを選ぶべきか、判断基準を知りたいです。
【医師監修】福井ウィメンズクリニック 福井 敬介 先生
日本大学医学部卒業。卒業と同時に愛媛大学産科婦人科に入局。愛媛大学大学院医学専攻科修了。2000 年愛媛大学産科婦人科学助教授。2001 年、「高度な生殖医療をより身近な医療として不妊カップルに提供したい」と福井ウィメンズクリニックを開設する。

胚盤胞になかなか育たないのはどうしてなのでしょうか?

福井先生●それにはいくつかの原因が考えられます。まず、卵子と精子の質です。卵子が十分に成熟していない場合や、精子のDNAに傷がある場合、胚の成長が途中で止まってしまうことがあります。特に、精子については、事前に精子のDNA断片化検査を受けることで、その状態を把握することができます。検査結果を慎重に判断し、たまさんの状態に合わせて最適な方法を見つけていくことが大切です。また、使用する培養液や培養器内の温度・酸素濃度といった培養環境も、ごくわずかな違いが胚の成長に影響を与えることがあります。
焦らずに原因を一つひとつ丁寧に探り、たまさんの体の状態に合わせた治療をじっくりと進めることが結果につながっていくと思います。

刺激法はPPOS法以外に、ほかの方法を試したほうがいいでしょうか?

福井先生●PPOS法(黄体ホルモン併用卵巣刺激法)は体への負担が少なく、多くの卵子を採取できる優れた方法です。しかし、満足のいく結果が出ていない場合は、アンタゴニスト法やショート法など、ほかの刺激法を試す価値は十分にあると思います。ホルモンの使い方や採卵のタイミングを変えることで、卵子の状態が予想以上に良くなることも少なくありません。
ただ、クリニックにはそれぞれ治療方針があるため、すぐに切り替えが難しい場合もあるでしょう。もし新しい刺激法に興味があれば、医師に「PPOS法以外に、私の場合はどんな方法が考えられますか?」と相談してみるのがいいかと思います。

では初期胚凍結と胚盤胞凍結はどちらがいいのでしょうか?

福井先生●2つの方法にはそれぞれメリットとデメリットがあり、どちらか一方にこだわるのではなく、たまさんの体の状態に合わせて使い分けるのがいいでしょう。
胚盤胞凍結は着床率が高い反面、胚盤胞まで育たない場合があり、移植できない可能性があります。一方、初期胚凍結は、胚盤胞まで育たなくても保管でき、移植のチャンスを増やせますが、着床率はやや低くなります。もし胚盤胞への成長が難しい場合は、両方を併用して可能性を広げることが大切です。医師とよく相談し、一番よい方向を探していかれるとよいかと思います。

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