卵管閉塞の可能性あり。自然妊娠できるか不安です

相談者 :ゆっかさん(35歳)
▶︎卵管鏡検査を受けたほうがいい?
結婚2 年目、妊活歴はおよそ1 年。右側の卵管が閉塞している可能性があると診断されました。甲状腺機能低下症の治療としてチラーヂン®を服用中で、ホルモン値や黄体機能は問題ありません。自然妊娠をめざしており、現在は左側の排卵に合わせてタイミング法を行っていますが、夫と生活リズムが合わないことや、夫の知識不足もあり、思うようにタイミングがとれません。卵管鏡検査を受けたほうがいいでしょうか?
【医師監修】空の森クリニック井坂 亮司 先生
同志社大学経済学部卒業。ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社に勤務した後、鹿児島大学医学部卒業。琉球大学病院産婦人科、兵庫医科大学病院産婦人科を経て、空の森クリニック不妊外来医師。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本産科婦人科遺伝診療学会認定医(周産期)。

右側の卵管が閉塞していても、自然妊娠の可能性はあるのでしょうか?

井坂先生●卵管が片方閉塞している場合でも、もう一方が機能していれば自然妊娠は可能です。ゆっかさんの現在の年齢や不妊期間におけるタイミング法の1周期あたりの妊娠率は5%程度とされており、片方の卵管が閉塞していても数字が大きく下がることはありません。ただし、子宮卵管造影検査(HSG)は、偽陽性が多い検査でもあります。そのためHSGの再検査や選択的卵管通水検査を行い、より正確な診断を受けることをおすすめします。

卵管鏡検査は受けたほうがいいでしょうか?

井坂先生●卵管鏡を用いた卵管内の観察では、卵管の粘膜や血管、癒着などの有無を観察することができます。ただ観察のみで用いることは少なく、卵管鏡下卵管形成術(FT)、つまり卵管閉塞の治療を行う際に同時に行うことがほとんどです。FTを受けた方の9割以上が卵管の再疎通を得られ、FT後の累積妊娠率は1~1.5年で約30~45%と報告されているため、自然妊娠を望む方に対して有効な治療法といえます。

排卵日の何日前にタイミングをとると妊娠しやすいですか?

井坂先生●排卵日を含む排卵前およそ5日間が妊娠の可能性のある期間で、特に排卵2日前の妊娠率が高いとされています。これは精子の寿命が卵子よりも長く、排卵直後に精子が卵管内に存在するためです。排卵検査薬や超音波検査を活用して、より正確な排卵日予測を行うと、タイミング法の成功率が高まります。なお、右側の卵巣から排卵する時も性交渉を控える必要はありません。反対側の卵管が卵子を拾うケースもあります。

生活面でできることはありますか?

井坂先生●基礎体温の記録、十分な睡眠やストレス管理、適度な運動が妊娠しやすい体づくりにつながります。肥満や高血糖・高インスリン血症は妊娠の妨げとなるため、たんぱく質を中心とした食生活を心がけましょう。葉酸、ビタミンDのサプリ、当とうきしゃくやくさん帰芍薬散の服用などはプレコンセプションケアとして、とてもよいアプローチです。
あわせてご主人の精液検査の実施もおすすめします。不妊症のうち半数は男性側にも原因があるため、ご主人にも不妊治療に興味をもっていただき、一緒に歩んでもらう雰囲気をつくることができるといいと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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