ミスフォーチュンさん(29歳)
31歳の夫が非閉塞無精子症です。
TESEにて顕微授精5回分の精子を採取できました。以前、初めての採卵では卵が1つしか採れず、精子1本を使いましたが成長が遅く、卵子を破棄しました。
今回の採卵ではトリガーを注射にしたところ9個卵が採れました。
TESEの精子は胚盤胞になりにくい、などと言うことはありますか?一応精子活性化処理?みたいな事を病院ではやっていただいています。
今回の培養結果などはまだ知らないのですが、ご回答いただけましたら幸いです。
泌尿器と男性不妊のクリニックの寺井先生に聞いてきました。
【医師監修】泌尿器と男性不妊のクリニック 寺井一隆 先生
2002年順天堂大学医学部卒。杉山産婦人科の生殖医療科(新宿)などへの勤務を経て、2022年4月に泌尿器と男性不妊のクリニックを開院し、院長に就任。全国でわずかしかいない泌尿器科の男性不妊専門医として多くの不妊に悩む男性患者さんの気持ちを汲み取った診察を行う。日本生殖医学会生殖医療専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
このたびはご相談をお寄せいただき、ありがとうございます。
非閉塞性無精子症で精子が回収できたとのこと、
心よりお喜び申し上げます。さらに、
顕微授精5回分の精子が確保できたということで、
今後の治療において大きな前進といえるでしょう。
治療が思うように進まず、
不安なお気持ちでいらっしゃることと存じます。
以下に、いただいたご質問について一つずつお答えいたします。

●TESE精子の胚盤胞への影響について
非閉塞性無精子症の場合、TESE(精巣内精子回収術)によって得られる精子は、閉塞性無精子症や射出精子と比較して成熟度が低く、受精率や胚発生率がやや劣る傾向が報告されています。しかし、TESE精子からでも良好な胚盤胞へと発育し、妊娠・出産に至るケースも多く報告されています。したがって、「TESE精子では胚盤胞になりにくい」というよりも、「個体差が大きく、精子や卵子の質・条件に左右されやすい」という理解が適切です。
●精子活性化処理の効果について
TESEで得られる精子の多くは運動性が乏しいため、ペントキシフィリンといった活性化剤を用いて一時的に運動性を回復させる処理が行われます。これにより、選別可能な精子を得ることができ、顕微授精(ICSI)においてより適した精子の選択が可能となります。卵子との受精やその後の発育には直接の関与はありませんが、質の良い精子選択に資する重要な工程です。
●TESE精子を用いた顕微授精の成功率について
非閉塞性無精子症においてTESE精子を使用したICSIの臨床妊娠率は、施設や症例によって異なりますが、おおよそ30〜50%前後と報告されています。これは、射出精子や閉塞性無精子症のTESE精子と比較するとやや低めですが、十分に妊娠が望める水準といえます。また、胚盤胞まで到達した場合の妊娠率は比較的良好とされており、治療全体の組み立てと回収精子の質が成功の鍵となります。
最も重要なのは、現在治療を受けている医療機関で詳細な説明を受け、信頼関係のもと今後の治療戦略を立てることです。
患者様の治療がうまく進み、良好な結果につながることを心よりお祈りしております。