※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
右の卵管狭窄と左の卵管閉塞という診断を受けたとのことです。卵管造影の場合、両方詰まっていれば詰まっている、と診断できますが、片方のみ詰まっているという場合は造影剤が流れのよい方に片寄っている可能性もあるため、間違った診断をしがちな検査です。片方閉塞というのは、あまり信用できません。
30~40年前は卵管造影しかできなかったので、この検査は非常に重視されていましたが、現在ではそれほど重要ではないことがわかっています。本当に詰まっていれば体外受精にステップアップすべきです。体外受精が出てくる前までは卵管の治療が多くなされたこともありました。
卵管は精子の通り道であり、受精卵の通り道でもあります。卵管狭窄が目に見える程度であれば、卵子も受精卵も精子も普通は通れるものです。精子の場合、5μの隙間があれば通れますし、受精卵の場合は120μ程度、およそ0.1 mmあれば通れます。卵管狭窄は妊娠できないことの大きな原因にはならないと思ってください。

卵管閉塞を、卵管鏡を使用して通すことは20年以上前からされており、私も一時はしていました。卵管では受精卵自体が動くわけでなく、卵管の内腔の表面に繊毛という細かい毛のようなものがあり、それが受精卵を運んでいきます。閉塞が起こるような炎症があり痛んでいれば、卵管繊毛が上手く機能しないことはわかっているため、物理的に無理やり詰まっている管を通せばよいというのは昔の発想です。現在卵管形成術は世界的にはほとんど評価されておらず、実施されていません。日本の一部の卵管形成術にこだわりのある医師が実施しているだけです。ただし、日本では保険点数が高く、施設にとっては得になるため、卵管形成術を続けている方もいる、というのが現状です。卵管が通ったとしても、妊娠成績は自然妊娠の成績を上回るものではないため、非常に低いと言って問題ないと思います。卵管狭窄の場合は、手術をしなくても妊娠できる可能性があります。
体外受精の場合、質問者さんは20代のため、1回移植すれば40%以上妊娠できます。AMHが1.99とやや低いので、体外受精で採れる卵子の数はやや少ない可能性はありますが、通常は短期間で妊娠できます。
片方は卵管が通っており、閉塞しているかどうかも疑わしいので、卵管が詰まっていない側で2~3回人工授精をして妊娠できなければ、体外受精にステップアップがよいと私は考えます。
卵管形成術でお金を使うことは、あまり得策ではないと私は思っています。