教えて!俵先生 気になる妊活キーワード Vol.4「プレコンセプションケア 男性編 」

教えて!俵先生
気になる妊活キーワード Vol.4 「プレコンセプションケア 男性編 」

これから妊活を始めようとしている人に向けた「プレコンセプションケア」は、実は女性だけでなく、男性にとっても必要なこと。俵IVF クリニック・俵史子先生、そして男性不妊も扱う泌尿器科専門医の今井伸先生に詳しいお話を伺いました。

俵IVFクリニック 俵 史子 先生
2007年静岡市に不妊治療専門施設を開業。国立大学法人浜松医科大学に生殖周産期医学講座(寄附講座)を開設し、新たな精子検査法の開発や、妊娠・出産がより安全なものになるための不妊治療の研究も行っている。
SRHケアクリニック静岡 今井 伸 先生
島根医科大学(現・島根大学)卒業。泌尿器科専門医・生殖医療専門医・性機能専門医。
俵IVFクリニック分院のSRHケアクリニック静岡の院長を務める。患者さんの背景に合わせ、それぞれに合った治療を提供することを心がけている。

―「プレコンセプションケア」というと女性がすること、というイメージがあると思いますが、男性にも必要なのでしょうか。

俵先生●最近は男性向けのプレコンセプションケアの情報も少しずつ増えてきたようです。
妊娠や不妊治療は女性だけではなく、ご夫婦二人の問題という意識をもつことが必要です。男女ともに事前に正しい知識をもち、妊娠しやすい体に整えているかどうかで、不妊治療スタート時の立ち位置が変わってきます。
時間やお金のロスなく、スムーズに治療を進められるので、女性はもちろん、男性にとってもプレコンセプションケアは重要です。
今井先生●
たとえば「毎日精液が出ているから大丈夫」と思って妊娠を目指して夫婦生活をもっていても、もしかしたら精液の中に精子がいない無精子症かもしれない。そうすると、どんなに頑張っていても妊娠に至らず、
時間をロスしてしまうかもしれませんよね。
妊娠を希望されるのなら男性も妊活に必要な知識をもっていたほうがいい。それによって根拠のある自信にもつながっていくので、男性も事前のケアが必要だと思います。

―プレコンセプションケアとして、男性はどのようなことに取り組めばいいですか?

今井先生●まずはご自身、そして女性の体について関心をもち、正しい知識を得ることが大切だと思います。
不妊の原因は男女半々にあるといわれていることをご存じでしょうか。男性も自分の体や生殖機能に異常がないかどうか、病院へ行く前にセルフチェックしてみましょう。
たとえばお風呂に入った時、精巣の大きさを確認してみてください。親指と人差し指でOKサインを作り、その丸より精巣が大きければ正常な発育をしている、極端に小さければ精子が少ないかもしれません。左右の大きさが違っていたり、表面がボコボコしていたら精索静脈瘤があり、精子の質などに影響が出ている可能性もあります。
また、射精の回数も要チェックですね。週1回以下、月に1、2回だと妊活するうえでは少ないと思うので、2日に1回くらいを目指すといいでしょう。ためすぎると古い精子の割合が増えてしまうので、射精の適切な回数は維持したほうがいいと思います。
あとは精子の数。精液は出ていてもその中に精子がいるかどうか。「病院で検査を受けるのには抵抗がある」という方は、自分で調べられるスマホのアプリなどもあるので、まずはそれをやってみて、異常があれば病院を受診するという流れでもいいかと思います。
俵先生●月経や排卵など、女性の体のサイクルについてもよくわかっていない男性がいるので、それも知っておいてほしいですね。
今井先生●そうですね。男性はデリケートなのでタイミングをとる時、急に言われるとプレッシャーを感じてしまい、できない人も。パートナーの月経周期や排卵日はこのあたりで、このへんの時期が妊娠しやすいとわかっていれば、心の準備ができて前向きにタイミングをとれるのではないかと思います。
俵先生●生活習慣について、当院では男女ともに喫煙は妊娠の妨げになるので、禁煙を指導しているのですが、ほかに男性が注意すべき生活習慣はありますか。
今井先生●患者さんには精巣を温めすぎるのは良くないと指導しています。たとえば長風呂。それほど熱くないお風呂でも「半身浴を2時間」など、長く浸かるのは良くありません。下着もブリーフだと熱がこもってしまうので、通気性の良いトランクスタイプのショーツを。太ももの上に熱くなったノートパソコンを置いて長時間作業するのも避けたほうがいいでしょう。妊娠に近づくためには精巣にとってなるべく良い環境を作ってあげる習慣が大切だと思います。

―妊活する前に男性が受けておいたほうがいいワクチンなどはありますか。

俵先生●風疹・麻疹の混合ワクチンは必ず受けておくことをおすすめします。生年月日にもよりますが、このワクチン接種は自治体からの助成があり、未婚者でも受けることができるので調べてみてください。
今井先生●風俗通いの経験がある、パートナー以外の複数の女性と性交渉があったなど、心当たりがある男性は性感染症の検査やワクチンも受けておいたほうがいいですね。男女ともに性感染症が妊娠に悪影響を及ぼすこともあります。

―男性が検査やワクチン接種を受けたいと思った時、受診するのは婦人科クリニック?

俵先生●精液検査やワクチン接種は不妊治療を行っている婦人科なら受けることができます。パートナーが受診するタイミングで一緒に来ていただければスムーズだと思います。
今井先生●婦人科には行きたくないという場合、男性不妊治療を行っている泌尿器科でも検査やワクチン接種ができます。

―男性にも積極的にプレコンセプションケアに取り組んでもらうコツは?

俵先生●ご主人が不妊治療に懐疑的だったり、拒絶されている時は、ぜひ一度お二人でクリニックにいらしてください。妻の話は素直に聞き入れられないけれど、医師の話や医療的なエビデンスを聞いて納得される男性もいるようです。お二人の意見が合わない時は第三者を入れたカウンセリングを活用されてもいいかもしれませんね。
今井先生●最近は男性向けのプレコンセプションケアを発信しているサイトもあります。
最初からおおげさに構えず、まずはそこから入って、興味をもつことから始められてもいいのではと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

不妊治療に関するドクターの見解を取材してきました。本サイトの全ての記事は医師監修です。