まめさん(42歳)
移植10回で、流産3回、化学流産2回、陰性5回(PGT-A正常胚も陰性)、不育症もあります。
凍結胚がないため、次は採卵からになりますが、年齢と治療年数から考えると治療のやめどきなのでしょうか。
また、他の治療方法がありましたら教えて下さい。
小川誠司先生に教えていただきました。
藤田医科大学 羽田クリニック 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月から准教授に就任。自費で最新の医療を受けられるという併設の羽田クリニックで患者さん一人ひとりの思いをかなえるべく診療も行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
●次の採卵に向けて、最適な治療方法について教えてください。
これまでの採卵でもPGT-A正常胚が得られておられますので、まずは同様の排卵誘発方法で、採卵されることをお勧めします。また卵子の質の改善を目的として、DHEAやメラトニン、レスベラトロールなどのサプリメントを事前に摂取されてから採卵されることをお勧めします。
●不育症の影響を考慮した治療方法の提案をお願いします。
バイアスピリンを使用されているようですが、もしバイアスピリンが必要な状況なのであれば、妊娠後にヘパリンの使用を考えても良いかもしれません。またバイアスピリンは移植前から使用されることをお勧めします。免疫グロブリン療法については、原因不明の不育症に対して有効とする報告が本邦から発表されており、すでに使用される予定だと思いますが、妊娠判定後よりできるだけ速やかに5日間の連続投与されることをお勧めします。

●PGT-A正常胚が陰性だった場合の対策を教えてください。
PGT-A正常胚でも、胚のグレードによって妊娠率は異なります。したがって、正常胚でも、できるだけグレード(ガードナー分類)の良い胚盤胞を移植されることをお勧めします。またこれまでにホルモン補充周期でも排卵周期でも着床歴がおありですので、より確実なホルモン補充周期での移植をお勧めします。
●新たな治療法やアプローチがあれば、教えてください。
NK活性が高値ということですので、まずはNK活性を十分に下げてから移植されることをお勧めします。柴苓湯とプレドニンの内服により、NK活性が下がるという報告されていますので、移植の3ヶ月前から内服され、移植前に再検査されることお勧めします。再検査でも、まだ基準値よりNK活性が高い場合には、移植の2日前よりイントラリポス点滴を併用されると良いと思います。
●先生でしたら、治療のやめどきについてどのようにお考えになりますか。
まめさんの場合、これまでにPGT-A正常胚が得られていることから、妊娠の可能性は十分に残されていると考えます。実際、不育症と診断された方の約80%が最終的に生児を得ているという報告もあります。そのため、上記でご提案した対策をしっかりと講じたうえで、もう一度PGT-A正常胚の移植にチャレンジされることをお勧めします。
もしも、3回以上PGT-A正常胚を移植しても妊娠に至らない場合には、「治療をやめる」という選択肢についてご夫婦でご検討いただいてもよいかもしれません。ただし、ご夫婦が納得のいく形で進めることが最も重要です。後悔のないよう、やり切ったと思えるところまで治療を続けていただくことを願っております。