【Q&A】PGT-Aすべき?初期胚で進める?~中村先生

てらさん(43歳)

今回で保険適用が終了し、もし今回妊娠できなければ今後は自費診療となります。そのタイミングで転院を考えています。
今のクリニックでは同じことの繰り返しなのと、生殖医療専門医が少なく先生によっては素人でも明らかにわかる誤った見立てや指示(採卵周期で既にLHが30以上になっているのに当日hCG注射し2日後の採卵を勧める等…当然排卵済みでした)があるので不安が強いのが理由です。
数値的にはかなり厳しい状況なのは理解していますが、自費診療になるとできる治療や使える薬の選択肢が増えると聞いたので、金銭面では厳しいのですがもう少し頑張ってみるつもりです。
自費診療となった場合、どのような治療ができると考えられますか?
PGT-Aも考えていますが、胚盤胞まで育てる必要があるためハードルが高いでしょうか?
これまでは空胞も多いものの、採卵さえうまくできれば胚盤胞到達率は低くなく、80%ぐらいは胚盤胞で凍結できています。ただグレードはあまりよくないこともありました。
それとも私のような場合、無理に胚盤胞まで育ててPGT-Aをするよりも、初期胚移植のほうがいいのでしょうか?

中村先生に聞いてみよう!

なかむらレディースクリニック 中村 嘉宏 先生
大阪市立大学医学部卒業。同大学院で山中伸弥教授の指導で学位取得。大阪市立大学附属病院、住友病院、北摂総合病院産婦人科部長を経て、2013年より藤野婦人科クリニック勤務。2015年4月なかむらレディースクリニック開院。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

てらさん、こんにちは。
ご相談拝見いたしました。てらさんの問題点は、
AMHが0.02と卵巣機能が低下していること
43歳と高齢であること
です。

いい点は、採卵ができていること、胚盤胞に到達していることがあげられます。
通常AMHが0.02で、Day3のFSHが30を超えている場合採卵できないことも多いですが、卵子が採取できていますのでとてもいいことです。3年前ですが、胚盤胞に到達しています。40歳を超えると胚盤胞まで到達しないケースも多く、これもいい点だと思います。

さて自費診療の選択肢ですが、ヒアルロン酸を用いた精子選別法(PICSI)やPRP療法などいろいろなオプション的な技術が目にとまり気になると思います。
しかしながら、てらさんの今の状態で最も必要で保険適応でないものは、意外だとおもいますが、受精卵を凍結保存して貯めておく「貯卵」だと思います。保険診療では受精卵ができた場合、その受精卵を移植しないと新たな採卵ができませんが、自費では採卵を優先させ、貯卵することが可能です。卵巣機能が低下している現在、採卵できなくなる可能性が差し迫っています。そのため、胚を可能な限り凍結保存する治療戦略が最も有効です。

どの段階の胚で凍結するかですが、PGT-Aをしない場合は初期胚を、PGT-Aをされる場合は胚盤胞となります。
PGT-Aを行う判断基準ですが、良好胚を2回移植して着床しない場合が必要な条件なので、それは満たしています。PGT-Aが有効ではないのは、胚盤胞に到達しない方です。43歳では、胚盤胞のうち移植可能な胚は約11%だという報告があります。PGT-Aはあくまでもどの胚を移植するか、どの胚を移植しないでおくかを決める検査なのでその点も理解する必要があります。個人的にはPGT-Aをしていってもいい状態だと思いますが、胚盤胞に到達しない可能性もあるので、採卵を1回か2回してもし胚盤胞がえられないときは初期胚をPGT―Aせずに貯卵される方がいいでしょう。
なぜなら、体外での培養は受精卵にとってストレスになります。高齢になるとたとえ胚染色体に異常がなくても、細胞膜などが脆弱になるので、体内では胚盤胞となり着床したかもしれない受精卵が体外では発育停止してしまう可能性があります。繰り返しになりますが、1回か2回胚盤胞にチャレンジして胚盤胞が得られない場合は初期胚移植を考えてください。

hCGのタイミングについては、成熟卵が採取でき、受精卵になっているので特に問題ないと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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