▶︎無精子症で自然妊娠の可能性は?
夫は精液検査を2回行って無精子症と診断されました。また、精索静脈瘤とも診断され手術も実施。ネットで調べた結果、夫のような無精子症は精巣性無精子症に当たるのかなと思います。精索静脈瘤があれば術後30%の確率で精液に精子が出ると書いてあるサイトを見つけました。精子が出たらそのあとはどうなるのか、自然妊娠はできるのでしょうか。夫は「生殖補助医療は絶対しない」と言い張っています。

慶應義塾大学医学部卒業。医学博士。日本生殖医学会生殖医療専門医。男性不妊症・一般泌尿器科を専門とし、東京歯科大学市川総合病院、国立成育医療センターなどでの勤務を経て、現在、荻窪病院で泌尿器科男性不妊診療担当医として勤務。
精巣性無精子症ではないかということですが、これはどのような無精子症なのでしょうか。
大橋先生●るるさんは精巣性無精子症(原発性精巣機能障害)ではないかと書かれていますが、医学的に正しく一般的な名称としては「非閉塞性無精子症」ではないかと思います。
非閉塞性無精子症は精巣で精子をつくる機能が悪く、ほとんどつくられていない状態で、検査をするとホルモンのバランスも崩れている方が多いようです。るるさんのご主人の血液検査の数値を拝見すると良い状態ではないので、やはり非閉塞性無精子症だと考えられます。
精索静脈瘤の診断も受けて手術をされたようですが、術後、妊娠への良い影響はありますか。
大橋先生●非閉塞性無精子症と精索静脈瘤が合併しているケースでは、精索静脈瘤の手術をすると、その後2~3割くらいの割合で精液に精子が出てくることがあるといわれています。精巣内精子採取術(TESE)をした場合でも、精索静脈瘤の手術を先行した人のほうが精子の回収率が高いというデータもあります。
では、手術をしたら自然妊娠も可能なのでしょうか。
大橋先生●当院の場合、精索静脈瘤の手術をした後、2~3ヵ月に1回程度の割合で精液検査をしながら、1年くらい経過を観察してTESEに踏み切るかどうか判断するようにしています。りわかっていません。
ただ、自然妊娠を期待するのはやはり難しいのではないでしょうか。精索静脈瘤の手術をしても7割の方は無精子症のままだということですから。なるべく早く確実に妊娠を望まれるのなら、やはりTESE→顕微授精の流れになるかと思います。
ご主人は「生殖補助医療は絶対しない」とおっしゃっているそうですが。
大橋先生●妊娠を目標に治療をされてきたということでしたら、精索静脈瘤の手術を提案された時点で医師からその後の不妊治療について説明があったのではないでしょうか。男性不妊を専門としている泌尿器科医でしたら、妊娠する確率などデータを提示しながらきちんとご説明すると思います。
赤ちゃんが欲しいというご夫婦共通の希望があって手術も乗り越えてこられたのなら、もう一度医師を交えてお二人できちんと話し合ってみることをおすすめいたします。