その気になれば、いつでも妊娠できると思っていた
不育症の原因を調べ、生活習慣も見直して、最短での妊娠を目指しました。
AMH値が年齢よりも低く、不妊治療を始めても着床と流産を繰り返したナナさん。大切な命が最後までお腹に留まってくれることを信じ、不育原因を治療するとともに、体質・生活習慣の改善にも徹底的に取り組みました。
焦りを感じ始めたのは女子会での会話がきっかけ
交際期間約5カ月で入籍したナナさん(37歳)とご主人のチヒロさん(36歳)。いわゆる“スピード婚”だったことから、ナナさんは「子どもはその気になればすぐにできるはずだし、しばらくは二人の時間を楽しみたい」と思っていたそうです。
友人との女子会で不妊や卵子凍結が話題に出たことで急に焦りを感じ、職場近くの不妊治療専門クリニックを受診したのは、ナナさんが35歳の時。初めてAMH値を検査して「40代相当」だったことにショックを受け、慌てて妊活を開始したナナさんでしたが、自己流でタイミングを取っても妊娠の兆しはなく、チヒロさんからの後押しもあって本格的に不妊治療を始めることにしました。
職場に近いクリニックで治療の日程調整もスムーズに
「1年以内に授かる」ことを目標に、数回のタイミング法と人工授精を経て早々にARTにステップアップ。クリニックは職場から徒歩5分の距離にあるため、フルタイム勤務後も診察時間に間に合い、お昼休憩に受診することも可能。有給を取らずに自分で治療予定を調整でき、出張や旅行の際は事前に伝えれば融通を利かせてくれる方針だったため、排卵のチャンスを逃すこともなかったそうです。
「評判のいいクリニックが職場の近くにあったことで、仕事とプライベートと治療の両立はそんなに苦にはならなかった」と振り返るナナさんですが、職場では不妊治療を受けていることはごく一部の人にしか伝えていなかったそう。
「治療がいつ終わるかわからない状況で変に気を遣われたり、責任の少ない仕事に変えられたりしたら嫌だなっていう思いもあって…。もっと言いやすい環境だったり、不妊治療に対する理解が社会全体に広がってほしいなっていうのが当時の正直な気持ちでした」
前向きに取り組むも流産を3回繰り返す
2回目の移植で初めて着床し、喜んだのも束の間、子宮外妊娠の疑いで大学病院に送られたナナさん。緊急手術の可能性も告げられて不安な1週間を過ごしていましたが「子宮内に突然胎囊が現れて、正常妊娠だと診断されたんです。すごく嬉しくて、安心して涙が溢れました」
ところが翌朝、出勤直後に大量出血。止血剤を処方されて安静に過ごしたものの流産してしまいます。その後の移植でも2回続けて心拍確認前に流産を経験。不妊治療専門の鍼灸サロンに通い始め、念のためにと厄払いをしてみても、思うような結果には結びつきませんでした。
それでも前向きに、流産した時は二人でお酒やゴルフを楽しんだり、妊娠したらできなくなりそうな予定をたくさん入れたりしながら淡々と治療を進めていたナナさんでしたが、知らず知らず心には負担が。「着床できるのに、3回続けて流産して…。このまま子どもがいない人生を考えるべきなのか、仕事を辞めて治療に専念したほうがいいのかなど、いろいろ考えたり、ネットで調べたりしても治療のゴールが見えなくて、不安でつらい時期もありました」。
意識改革にもつながった「妊娠のため」の取り組み
妊娠継続できない原因を探るために受けた不育症検査で血栓ができやすいことが判明し、血液をサラサラにする薬を服用。お灸やホットヨガ、リンパマッサージ、よもぎ蒸し、リカバリーウエア、EMSマシンなど、血流を良くするための温活に力を入れ、デリケートゾーン専用ソープなどのフェムケアアイテムも使用するなど、妊活に良いと言われるものは何でも試したナナさん。5回目の移植結果は陰性でしたが、「保険が適用される間に終わらせよう」と決意し、体質と生活習慣のさらなる改善を目指して漢方やサプリの見直しにも取り組みました。
「10代の頃から不規則・不健康だった生活を悔やみました。朝食が妊娠のしやすさに大きく影響すると知ってからは毎朝食べ、赤ちゃんのためにと夫から言われて睡眠も意識しました」
ナナさんの話に耳を傾け、常に明るく接していたチヒロさん。想像以上にナナさんの治療の負担が大きいことを知ってからは、率先して料理を作ったり家事を担当するなど嬉しい変化もあったそうです。
初めてできた心拍確認でようやく喜びを実感
再び採卵し、好条件の精子を選択するために先進医療のPICSI を採用して挑んだ6 回目の移植。保険適用最後だからと初めて2個移植を試してみたところ、そのうちの1つが着床! 嬉しい反面、再び流産の不安がよぎっていた二人でしたが、心拍が確認できた瞬間、ようやく安心できたそうです。
「母の誕生日の時期だったので、エコー写真にメッセージを添えて渡しました。最高のプレゼントができて本当に嬉しかったです」
妊娠12週で不妊治療専門クリニックを卒業。移植前から毎日続けていたホルモン剤からも解放され、出産を迎えるまで不安はありつつも「今しかないマタニティライフを噛み締めて楽しく過ごしたい」と笑顔で語るナナさん。以前は「子どもは一人で十分」と思っていたそうですが、出産後に二人目も欲しくなる可能性を考えて「残りの凍結胚はもう少しだけ保存しておこうかな」と心境の大きな変化を教えてくれました。