【Q&A】良好胚でも着床しない。保険内でできることは?~小川達之 先生【医師監修】

シューさん(38歳)

35歳の時に自然妊娠しましたが、稽留流産となりました。37歳で今の病院に通い始めました。

良好胚(4AA.3AB.3BB)を移植したのにもかかわらず、かすりもしない陰性続きですごく落ち込んでます。主治医も「妊娠できない理由がわからない」とのことでした。他に調べることとなればPGT-A検査ですが、自費になるため考えてません。

保険適用で残り3回しかないので無駄にしたくありません。何か打つ手はありますでしょうか。
ちなみに、抗核抗体の基準値が40に対して80でした。これも着床できない原因なのでしょうか。

亀田IVFクリニック幕張の小川達之先生にお伺いしました。

【医師監修】亀田IVFクリニック幕張 小川達之 先生
2009年山梨大学医学部卒業。2016年より山梨大学医学部附属病院産婦人科にて不妊治療にあたる。2024年4月より亀田IVFクリニック幕張に入職。ひとりひとり個別の状況に対応し、患者様の立場に立った医療を提供したいという想いを持って日々、診療に従事。医学博士。日本産科婦人科学会産婦人科専門医・指導医。日本生殖医療学会生殖医療専門医・指導医。日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

着床しない原因としては、胚染色体の異常、子宮内の環境や内膜の準備状況、免疫学的な異常などが考えられます。形態良好胚であっても必ずしも染色体が正倍数性とは限りませんので、これは年齢を含めた確率の要素が大きいです。国内のデータによると、37歳の胚移植あたりの妊娠率は約40%ですので、3回連続で妊娠成立しない確率は21.6%あります。

子宮内の環境整備については、子宮内膜ポリープ切除、子宮内フローラ検査、ERA検査などが挙げられます。子宮内膜ポリープ切除から時間が経っているのでしたら、再発の可能性についても検討する余地があるかもしれません。
もしこれまでの胚移植が全てホルモン補充周期での凍結融解胚移植であったとしたら、自然周期やレトロゾールなどによる排卵周期での凍結融解胚移植や新鮮胚移植が積極的に選択肢として挙げられます。
これまでに3回胚移植しているのでしたら、SEET法やスクラッチ法が有効となることもあります。2個胚移植も検討されます。
子宮腺筋症については、一時的にGnRHアナログ製剤などで偽閉経療法を行ってから胚移植をしたり、深部子宮内膜症を合併している場合には腹腔鏡手術をおこなってから胚移植をすることが有効である可能性も報告はあります。以上は保険診療の範囲内で可能な内容ですので、主治医の先生とよくご相談ください。



免疫学的な要素としては、エビデンスは限定的ですが抗リン脂質抗体症候群やTh1/Th2比などの検査があげられます。ただしこちらは保険診療との兼ね合いが難しくなる可能性があります。抗核抗体についてはさらにエビデンスレベルが低いので、着床不全の原因としてはあまり積極的に考えないことが多いでしょう。
生活の中では、十分な葉酸ビタミンDを中心としたマルチビタミン、鉄分などをしっかり摂取して着床環境を改善していける可能性はあります。
応援しています。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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