【Q&A】卵を2つ戻す方が妊娠率は上がる?~久慈先生【医師監修】

namiheyさん (40歳)
質問です。
もうすぐ移植を控えているのですが「年齢も年齢なので、2個戻すか1個にするか決めておいて」と言われました。
その時に、体外受精で移植の際、卵を2個戻すのと1個ずつ戻すのは妊娠率が違うと説明を受けたのですがイマイチわからず、、
2個戻したらなぜ妊娠率が上がるのでしょうか?単純に2倍という事なら数打てば当たるという意味でしょうか?
それとも2個戻すとホルモン値も増えるためなのでしょうか?

Noah ART Clinic 武蔵小杉の久慈先生に聞いてきました

【医師監修】Noah ART Clinic 武蔵小杉 統括医師 久慈直昭 先生 
慶應義塾大学医学部卒。東京医科大学産婦人科学教授を経て、2023年5月より、Noah ART Clinic 武蔵小杉の統括医師に。生殖医療専門医・指導医。臨床遺伝専門医。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

体外受精治療で、悩ましい問題となるのが移植胚の個数です。特に、お一人子供がいらっしゃる場合、今度の妊娠で双子になるのは極力避けたい、という方がほとんどです。

双子になった場合のリスクは一人の時より大きくなるのは間違いありませんが、体外受精でできた双子、つまり二つの胚を移植して二卵性の双胎となった場合、自然妊娠でできた二卵性の双子と比べて前置胎盤、帝王切開率、早産率、超早期早産率、低出生体重児、そして先天異常の率が自然妊娠の双胎より高い、といわれています 。そのあと育てるときの負担を考えても、できるだけ二子は避けるべきであることは、間違いありません。

しかしその一方で、移植する胚が2個以上あってgradeが低く、かつ女性の年齢が高めの場合、一つだけ胚移植をしても妊娠率が低くなります。40歳以降の方では3回という、保険が効く移植回数の制限もあり、主治医も妊娠率と双子の危険率の間で決められず、患者さんに意見を聞くことが多くなります。

胚を1個移植した場合と、2個移植した場合で出産率と、双子になる危険性(確率)はどう変わるでしょう?これは、残っている胚がどのくらいの確率で赤ちゃんになるかによります。
たとえば、一つの受精卵が赤ちゃんになる率が30%ある場合、一つ戻した場合子どもができる確率は30%、妊娠しない確率は70%で、二卵性の双子になる危険性はありません(0%)。二つ戻すと、妊娠率は51%となりますが、このうち双子になってしまう確率が9%(0.3x0.3=0.09)あります。
これが一つの受精卵が赤ちゃんになる確率が10%の場合だと、一つ移植では子どもが生まれる確率は10%、二つ移植すると19%に上昇します。この19%の中で、双子になる確率は0.1x0.1=0.01(1%)、自然にできる一卵性の双子の確率(約0.5%)とほとんど変わりません。

移植胚の個数を決めるように言われたときには、双子の確率がどの程度かを医師にその聞いてから、その確率で万が一自分たちに双子ができても後悔しないかをご夫婦で話し合ってから、移植胚数を決めて頂きたいと思います。二人目の場合、原則は一つずつ移植する方が良いでしょうが、移植杯が赤ちゃんになる確率が10%以下である様な場合は、二つ戻すことを考えても良いかもしれません。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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