▶︎全前脳胞症による中期中絶後の治療について
化学流産2回、初期流産2回、中期中絶1回と、妊娠できても出産までたどり着けません。抗リン脂質抗体症候群による不育症の診断を受けています。また今回、胎児の全前脳胞症が原因で中期中絶しました。来年から妊活を再開しようと思っていますが、医師から「今回は染色体異常なしの全前脳胞症で遺伝子の問題だから、またくり返す可能性がある」といわれました。次の妊活からは不妊治療はせず、自然妊娠を目指していこうと思っていますが不安です。

浅田 義正 先生
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。
まず、不育症と診断されたことについてどう思われますか。
浅田先生●化学流産に関しては医療的には妊娠としてカウントしないので、流産と考えなくてもいいでしょう。フライングして早めに妊娠判定の検査をすると、妊娠した時に分泌されるhCGというホルモンがよく検出されます。ですから、化学流産はよくあると思ってください。
初期流産に関しては2回続いているので、これは反復流産に定義されると思います。ただし、43歳以上の人だと妊娠しても7割くらいは流産するのが当たり前なので、2回続けて起こってもそれほど珍しいことではありません。
また、抗リン脂質抗体症候群による不育症という診断を受けたそうですが、内科で定義している抗リン脂質抗体症候群はかなり重症な膠原病をもっている人が診断されるものなので、この方がそれに当てはまっているのかどうか。もしそうであればアスピリンやヘパリンによる治療が有効かもしれませんが、不育症についてのエビデンスレベルは高くありません。
抗リン脂質抗体の値を正しくみるには3カ月程度空けて2回測らなくてはいけないし、流産などで一時的に値が上がることがあります。正しく診断しても、本当に抗リン脂質抗体症候群が妊娠の維持に影響しているのか定かではありません。
中絶の原因になった胎児の全前脳胞症に関してはどうでしょうか。
浅田先生●42発症の原因は多岐にわたるようですが、遺伝子の問題でそれが原因になっているということであれば、これは詳しく調べたほうがいいですね。PGT -Mという検査をすれば受精卵から調べることができます。PGT -Aは受精卵の染色体異常、PGT -Mは遺伝子の異常を診断できるものです。
当院ではこの検査を受けることができますが、きちんと診断までできる施設は少ないので、希望されるなら紹介や転院が必要になってくるかもしれません。PGT -Mの審査は半年から1年程度と時間がかかるので、その間、なるべく多くの卵子を確保し、胚盤胞をつくって貯めておく。ありささんは自然妊娠を望まれているようですが、43歳ではかなり難しいこと。この年齢だと80~90個程度の卵子があって1人の赤ちゃんが生まれるというのが世界的な平均値です。 今後の治療としては、貯卵→PGT -Mという流れが時間短縮になるし、より確実に妊娠・出産へ近づけると思います。