▶︎採卵しても空胞ばかり…。保険診療内で妊娠するには
治療を始めて3~4年。AMH は0.02ng/ml 未満。今のクリニックには2 年近く通院中です。直近2回の採卵は空胞でした。クリニックでは、運よく卵胞が育ってくる周期を待ち、低AMH ながらもしっかり成長した卵胞に対して薬で刺激。育たない周期はピルでリセットという方法の繰り返しです。医師からは「保険適用内でできることはこれ以上何もない」と言われました。本当にこの治療法で妊娠できるか不安です。保険適用の期間がもうすぐ終わるので、焦っています。

大野田 晋 先生
東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。東京慈恵会医科大学附属病院、獨協医科大学埼玉医療センター、みなとみらい夢クリニックなどの勤務を経て、おおのたウィメンズクリニック埼玉大宮を開院。結果を的確に分析し、できるだけ多くの卵子を採って確率を上げる攻めの治療で保険診療内での妊娠を目指す。
- 1 てらさんは直近の治療では、採卵しても空胞という状況が続いているそうですが、どのような原因が考えられますか。
- 2 てらさんのように低AMHの場合、どのような採卵方法や刺激方法がいいとお考えでしょうか。
- 3 今は「自然に卵胞が育ちかけていても注射でしっかりと刺激、育たない周期はピルでリセット」という治療法をされているようですが…。
- 4 なるほど。では、刺激法を変える以外にどんなところに注意するのがいいでしょうか。
- 5 主治医に「保険でできることはこれ以上何もない」と言われたそうですが、先生のお考えはいかがですか。
- 6 さまざまな薬やサプリも服用されているようです。それも含めて、今後の治療への取り組み方についてアドバイスをお願いします。
てらさんは直近の治療では、採卵しても空胞という状況が続いているそうですが、どのような原因が考えられますか。
大野田先生●そうですね。卵胞が十分に発育・成熟していない時期に採卵を行っている可能性が考えられます。また、AMHが低い方の場合、どうしても空胞率は高くなってしまう傾向にあります。
てらさんのように低AMHの場合、どのような採卵方法や刺激方法がいいとお考えでしょうか。
大野田先生●低A M Hの人の場合、卵巣の機能が弱くなってしまっているので、強い刺激を加えても反応が芳しくないため、たくさん採卵できることはあまりありません。いろいろなやり方がありますが、当院であればてらさんが本来持っている卵子を発育させる力を生かすのがいいと考えます。その際、生理周期に採卵できそうな卵子が育ってきているかをしっかり観察することが重要です。
今は「自然に卵胞が育ちかけていても注射でしっかりと刺激、育たない周期はピルでリセット」という治療法をされているようですが…。
大野田先生●空胞が続いているということは、卵子がしっかり育っていないということですよね。以前からFSHが高いということですが、そういった方に「注射でしっかり刺激」をしても複数個採卵するのは難しいでしょう。薬を使わず、自然周期の採卵を視野に入れることも必要だと思います。ただ、刺激法を変えたら万事うまくいくという話でもありません。
なるほど。では、刺激法を変える以外にどんなところに注意するのがいいでしょうか。
大野田先生●てらさんは、前周期のように卵胞がたくさん見えていても採卵するまで育たない時もあれば、今周期のようにD4で13mmと育っている時もあります。ですから当院であれば、育っている時のホルモン値や体の状態などに注目し、治療法を考えるようにします。
そもそもその周期で排卵される卵子は、排卵直前に決まるわけではありません。もっと以前から「排卵する卵子候補」としてリストアップされているものです。つまり妊娠できる力をもつ卵子を育てるには、採卵周期の刺激法を考えるだけではなく、その前の周期から採卵周期に妊娠する力を備えた成熟卵を採卵できるように調整しておくことが重要です。そのためには、生理周期にどのくらい卵子が育つか、それにともなってホルモン値がどう変化していくかを調べ、うまくいっていないところがあったら整えていくことが必要です。そうすることで、自然と空胞が多い原因を探ることができ、妊娠する力をもつ卵子を採卵できることにつながっていきます。
主治医に「保険でできることはこれ以上何もない」と言われたそうですが、先生のお考えはいかがですか。
大野田先生●たしかに保険診療でできることには限りがあります。ですが、できることはまだあります。
当院であれば、まず生理周期の状態をしっかり観察し、この時期にどのように卵子が成長しているのかを観察します。たとえば、卵子は通常、生理周期に少しずつ成長し、成熟して排卵されますが、すでに生理周期のはじめの段階でかなり成長している場合、明らかにホルモンバランスが乱れていることがわかります。そうすると次にやるべき治療=体のホルモンバランスを自然に近づける治療がみえてきます。
さまざまな薬やサプリも服用されているようです。それも含めて、今後の治療への取り組み方についてアドバイスをお願いします。
大野田先生●てらさんはおそらく、治療がうまくいかない状況をなんとかしたいと考えるうちに、服用する漢方薬やサプリメントが増えたのではないかと思いますが、現在の状況は飲み過ぎになってしまっています。経済的負担も大きいと思いますし、本当に必要なものを吟味したほうがいいでしょう。例えばレスベラトロールは、良好な胚盤胞が得られる確率が高くなるというメリットがあるものの、胚の着床を阻害する働きもあります。今後、新鮮胚移植をする可能性もあるので、整理してみてください。
てらさんは、今まで妊娠につながる可能性のあることを、いろいろとトライされてきたと思います。そうやってがんばってきたご自身をぜひほめてあげてくださいね。そのうえで、ここで一度原点に戻り、てらさん自身の「自然に妊娠する力」を見つめ直してみてはいかがでしょうか? それが、次によい卵子を採卵し、妊娠へとつながる新たな一歩になると思います。
主治医に相談しながら取り組んでみてくださいね。