【Q&A】採卵でOHSSに。続けるべき?~浅田先生【医師監修】

さっちんさん (37歳)
妻37歳、夫39歳です。
タイミング指導から人工受精を半年、精液検査で運動率22%とのことから顕微授精と体外受精を半々で行いました。
採卵は6回しています。AMHは6.8、採卵は一度に20個以上の卵は採れます(OHSSになりますがそこは悩んでいません)。
しかし体外受精では精子の運動率もあり結果を得られず、全て顕微授精の方が良いとの事で切り替えました。また未成熟卵や変性卵が多く、2日目の受精も多前核や奇数の分裂が多々目立ち、胚盤胞までなかなか進まないです。

1回目の顕微授精でグレード2胚盤胞(1から5で、1が良いとされる)1個、2回目でグレード3胚盤胞1個、4回目でグレード4胚盤胞1個凍結しました。
2024.12.21にグレード2とグレード3の胚盤胞を移植し、2025.1.4の妊娠判定は陰性でした。
医師からは妻の体に抗核抗体320倍、抗セントロメア抗体があり、卵と受精の過程に何らかの影響が見られるとのことです。
数日したら生理が来るのでまた採卵しますが、IVMという方法で採卵をするやり方に変えます。
抗体を抑える(?)プレドニンと柴苓湯を服用し始めました。プレドニンは移植周期から始めています。

抗体があっても採卵を諦めず繰り返し、妊娠出産に至る方はいると色々調べました。
子宮内フローラのラクトバチルスは99.9%でした。信じてこのまま治療を進めれば良いのでしょうか。

診察された患者様で同じような方はいらっしゃいませんか?もしいたら、どのような治療が有効なのか教えて頂けませんか?

食生活を、タンパク質を多く摂り甘いものを避けると卵子が良くなるなど、色々調べました。
しかし採卵の結果は今一つです。病院を変えた方がいいですか?

この抗体があると採卵を繰り返して良い受精卵を何個も作り移植をする…を繰り返すしかないという回答が多いと思います。
それでいいのかなと迷っています。どんな言葉でも構いません。どうか教えてください。

浅田先生に聞いてきました

【医師監修】浅田レディースクリニック 浅田義正 先生
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

今まで色々な治療をされているようですが、多嚢胞性卵巣症候群の方においては卵巣刺激症候群(OHSS)のリスクがあることから、きちんとした卵巣刺激がされないことが多いと感じています。現在ではhCGトリガーを使用せず、アンタゴニスト法のアゴニストトリガーを使用した方法であれば、卵巣刺激症候群(OHSS)の心配はほとんどありません。
ただ、その卵巣刺激の技術をきちんと持った医師は非常に少なく、未熟卵が多く採れるような採卵をしたり、体外成熟培養(IVM)を行ったりする施設があるのが現状です。
体外成熟培養(IVM)は決して良い成績が出ているわけではありません。アンタゴニスト法のアゴニストトリガーという方法が可能になってからは、世界的にみても体外成熟培養(IVM)はほとんどされていない方法です。

卵子は女性が産まれる前にでき、長い間休眠状態で排卵の半年前より育ち始めます。
卵巣刺激は長い間、眠りについていた卵子の遺伝子を再稼働し、使える状態にすることですから、卵巣刺激が十分ではないと遺伝子の再稼働が不十分な卵子となり、受精率や胚盤胞到達率、妊娠率に良い結果がでないことは明らかになっています。

また、抗セントロメア抗体についてですが、卵子に非常に早い段階から抗セントロメア抗体が入っていることは分かっていますので、柴苓湯やプレドニン等のステロイド剤を使用してもあまり効果がないというのが私の見解です。ですが、卵子の中に入った抗セントロメア抗体は、卵子によって多いものと少ないものがありますので、数多くの受精卵ができれば正常受精になるものもあり、正常受精をすれば年齢に応じた妊娠率となります。
抗セントロメア抗体は染色体が2つに分かれて細胞分裂を行う時に影響があり、抗セントロメア抗体が強く働くと採卵ができても成熟卵にはならず染色体の動きが上手く制御されないので受精卵になっても多核になる傾向があります。ただ、正常な受精卵になれば妊娠する可能性はあります。

卵子を選んで育てることはできませんので、成熟卵をきちんと採ることができ、なおかつOHSSにならないような刺激ができるクリニックで治療するしかありません。
食生活についても色々、調べられているようですが卵子が良くなる食べ物はなく、人の卵子は鶏の卵とは違い、栄養摂取してもその栄養は卵子に入る余地はなく影響を与えません世の中には卵子を良くする等と謳ったサプリメントもありますが、効果はないと思っていただいて問題無いと思います。

子宮内フローラについては、子宮内に病原菌のようなものがいれば着床の妨げになりますが、子宮内フローラについてはきちんとしたエビデンスがありませんし、現在では子宮内の菌は非常に少ないことが分かっていますので、心配される必要はないと思います。

卵子の質は生活習慣で改善されることはありません。多嚢胞性卵巣症候群の方は男性ホルモンが多く、生活習慣病につながる恐れがありますので、生活習慣が大切だと言われることもありますが、それは卵子の質を向上させるため、妊娠率を上げるためではないことを理解していただきたいと思います。

世の中には様々な情報があふれていますが、間違った情報に惑わされずに正しい治療を行い、短時間で結果を出していただきたいと思います。
そのためには、多嚢胞性卵巣症候群の方でも、卵巣刺激をきちんと行い成熟卵を採ることができるクリニックで治療されることが妊娠への一番の近道だと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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