【Q&A】胚盤胞の移植順について~藤野 祐司先生【医師監修】

まむさん (37歳)
一年前から2人目の妊活をしています。(2023年1月に1人目を経膣分娩で出産)
今月38歳になります。
今まで採卵2回、移植を2回しましたが妊娠に至っていません。
3回目の胚盤胞移植を控えていますが、どの胚盤胞を戻すか悩んでおります。
現在の凍結胚(4AB、3BB、4AC、3AC、初期胚)
主治医の先生からは
①4AB+SEET法
②3BB+初期胚
③3AC+4AC
「優先順位をつけるならこの順番です」と言われましたが、2個胚盤胞戻しも「希望されるならできますよ」と言われております。
夫婦で話し合いましたが、素人ではなかなか決めきれず専門医の先生のご意見を伺えればと思います。
素人考えではより確率の高い胚盤胞2個戻し+SEET法で移植できれば一番確率が高いのではと考えています。
多胎のリスクを考えると確率が高そうだからと言って安易に2個胚盤胞戻しをしてもいいのかと迷っております。
今まで2回の移植ではアシステッドハッチング、ヒアルロン酸培養液を利用していました。

藤野 先生に聞いてみました。

【医師監修】ウィメンズクリニック本町  藤野 祐司 先生
大阪市立大学医学部卒業。藤野婦人科クリニックの院長を務めた後、平成28年にウィメンズクリニック本町を開院。
ご夫婦・ご家族の“夢”の実現に向かって、希望を叶えられるよう、患者さんの状況に合わせた診療を提供することを大切にしている。
日本産婦人科学会専門医、生殖医療専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

複数胚移植の大きな問題は多胎妊娠の増加です。多胎妊娠は妊娠・出産・新生児予後に大きな問題となります。具体的には、妊娠中における糖尿病、高血圧の合併や切迫早産による長期入院管理の可能性、出産においては早産、帝王切開のリスク増加や分娩時の輸血を必要とする大量出血、また早産の結果として低体重出生児の増加や出生児の未熟性・NICU管理の必要性などといった重大な結果が伴う可能性が高いです。第2子ご希望という事なので、ご家族で充分お話し合いされることが必要です。

胚盤胞の2個移植ではもちろん妊娠率が向上します。当院での結果では胚盤胞1個移植に比べ、約10%の妊娠率向上が認められました。しかしながら、妊娠の結果として40%を超える非常に高い多胎妊娠率となっております。これは、一般的にもいえることかと考えています。

ところで、凍結保存胚として4AB、3BB、4AC、4AC、そして初期胚があるとのことですが、それぞれ各胚の単独移植での妊娠率はAB44%、BB44%、AC36%、初期胚25%(当院結果)です。ご参考にしていただければ幸いです。

【SEET法とヒアルロン酸培養液&アシステッドハッチング】
これらの先進医療を併用することにより妊娠率向上が期待できると思います。

【3つの選択肢】
担当医からの移植順位のご提案は、明らかに多胎妊娠率の抑制をお考えになった結果だと思います。選択肢①、②、③の中で、①、②に関しては特に大きな問題は無いと思いますが、③に関しては胚盤胞複数移植における妊娠率向上は期待できますがCグレードの胚は流産率が約2倍高くなる可能性(当院結果)があります。選択順位としては担当医からのご提示のあるように①>②>>③が良いかと考えます。

 

今までにERA検査や慢性子宮内膜炎検査を実施して無いのであれば、胚移植前にこれらの検査を実施することは着床不全の原因検索・治療に意味があるかと思います。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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