星木さん(37歳)
ERA検査(ズレなしの結果)をして1回移植→陰性。排卵がなかなか起きず、採血結果にて点鼻薬決定。点鼻薬の日に排卵痛がありましたが、点鼻薬から2日後を排卵日と決定し、移植して陰性でした。
今回排卵が遅かったためフェマーラ内服し、D14に受診。
採血結果にて16時に点鼻薬。受診時卵胞22mmと育っていました。本来ならD16が排卵日、D21が5日後で移植のベストだと思いますが、今回育ってきていたためかD15に排卵痛がありました。おそらく排卵はD15ですが、移植日はそのままD21。排卵後6日目の移植はやはり着床、妊娠継続、出産までは厳しいでしょうか。
PGTをしています。前回の胚盤胞もですが、それでも陰性(排卵日のズレではないかと思っています)、今回の卵は最後の正常卵です。ちなみに排卵検査薬を使用しました。点鼻薬をした後に使ってしまったため意味がないのは承知していますが、D14点鼻薬後1時間で強陽性が出ていました。D16では陰性化しており排卵済みでした。
胚盤胞は5日目胚盤胞です。この場合、排卵後6日目でもいいのか、やはり排卵後5日目にしっかり移植する方がいいのでしょうか?
前回の陰性時に排卵痛のことなど伝えましたが、「採血でみてるから排卵日はズレてない」との返事でした。
1人目から年齢も上がっており胚盤胞ができるかわからない中、正常卵を移植しても陰性。ERA検査もしているのに排卵後6日目に移植(医師は5日目の認識ですが)それでまた陰性。また採卵からとなるとどうしていいか分からず、相談させてもらいました。
小川誠司先生に教えていただきました。
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月から准教授に就任。自費で最新の医療を受けられるという併設の羽田クリニックで患者さん一人ひとりの思いをかなえるべく診療も行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
●星木さんの場合、排卵日が予定よりも早まった際に、移植日を調整することは可能でしょうか? 排卵後6日目の移植は、一般的には着床率や妊娠継続率に影響を及ぼす可能性がありますか?
“着床の窓”の時期を過ぎてから移植した場合、着床の可能性はかなり低くなります(“着床の窓”の時期より早い場合は可能性があります)。したがって、もし本当に今回の(前回もかもしれませんが)排卵が早くD15で起きていた場合は、着床の時期を過ぎてしまう可能性がありますので、移植はお勧めしません。
ただ採血も確認されていますので、かかりつけの先生がおっしゃるように通常は排卵日がズレる可能性は低いと思いますが、D16に採血を実施すれば、黄体ホルモンの上昇具合からいつ排卵が起きたかは推定ができます。唯一残っている正常胚ですので、悔いがないように移植することが最も大切です。今回は移植をキャンセルして、次回は排卵前後で超音波検査と採血を実施して、ご自身も納得がいく形で排卵日を特定することをお勧めします。
またお一人目も胚移植で妊娠されたのだと思いますが、その時のホルモン結果と卵胞径がどうだったのかも確認していただき、ERA検査にズレがなかったのであれば、その時と全く同じ状況で移植することが良いと思います。
●PGTを行った胚盤胞を移植したにも関わらず陰性となった原因は、排卵日のズレ以外に考えられる可能性はありますか?
PGT-A実施した場合の移植の妊娠率は6~7割と言われており、必ずしも100%にはなりません。形態不良胚では染色体正常胚でも妊娠率は下がりますし、PGT-Aで生検をおこなったことによる胚のダメージも0ではありません。また、お二人目ですので、出産後(特に帝王切開分娩の場合など)にご自身の状態が変わることもありますので、自己抗体や凝固因子検査、甲状腺ホルモンや慢性子宮内膜炎検査、子宮内細菌叢を調べるEMMA/ALICE、免疫検査(Th1/2比)などの着床不全検査を移植の前に一通り実施しても良いかもしれません。
●年齢の上昇と共に胚盤胞が作れる可能性が低下している場合、何か特別な対策を講じるべきでしょうか? 星木さんが再度採卵を行うことになった場合、その進め方や注意点について教えていただけますか?
現在37歳というご年齢ですので、正常胚が採れる可能性は十分にあると思います。お一人目の時の採卵で正常胚が獲得できておられますので、まずは全く同様のプロトコール(排卵誘発法)で採卵を実施することをお勧めします。
あとは必要なサプリメントの摂取や生活習慣の改善など、“卵子の質”を保つための自己努力は積極的にされることが良い結果につながると思いますよ。