【Q&A】46歳の顕微授精~浅田先生【医師監修】

なおんさん (46歳)
46歳から顕微授精をチャレンジしています。44歳時にタイミング法を行った結果、2か月で子宮腺筋症が見つかり、手術などを経て自己タイミングをした後、現在顕微授精をしています。移植経験はありません。
自然妊娠は41歳7週で流産。2度目は43歳1か月、8週で流産。46歳1か月から治療開始し、採卵3回行っています。AMHが平均より少し高いことや胚盤胞まで行くことなどから、「年齢的に厳しいながら数少ない可能性がある人の1人ではある」と医師に言われ、治療に望みをかけています。
有難いことに胚盤胞まで行ける身体の様ですが、染色体異常の壁に阻まれています。
クリニックでは「4つ以上卵胞が見えたら高刺激で誘発しないともったいないからそうする」と言われており、次もその予定でいます。採卵数や胚盤胞率は少しづつ上がっているものの、異常胚が出て移植できずが続いてますが、採卵は経済面や年齢を考えると頑張れてあと2度くらいなのでは?と思っています。
移植については、このまま出来るだけ採卵して、最後に4BC2つなどをダメ元で移植する方が良いですか?それとも採卵の合間にこちらを移植してみた方がいいですか?また他に期待できる治療法は思い当たるでしょうか。
以前、「高齢者は初期胚移植がいい」と何かで見たので先生に相談しましたが、「そもそも胚盤胞に行くのだから、胚盤胞まで育てるのが一番いい」と言われ、初期胚移植の道は無くなりました。
「46歳採卵で妊娠出産された方の診療経験はありますか?また実際どのくらいおられましたか?」と先生に尋ねたら「3年間で1人」と言われました。
様々な産院で「46歳」が最高齢に書いてあるので、可能性があるのではと思っていましたが、私が通っている大手クリニックでもそんなに少ないのか、と現実を知りました。
また転院はどうなのかとも考えてますが、検討している低刺激のクリニックだと採れる卵がさらに減るだろうと思うとどうなのか……不安が募ります。

浅田先生に聞いてきました

【医師監修】浅田レディースクリニック 浅田義正 先生
名古屋大学医学部卒業。1993 年、米国初の体外受精専門施設に留学し、主に顕微授精を研究。帰国後、日本初の精巣精子を用いた顕微授精による妊娠例を報告。現在、愛知県の名古屋駅前、勝川、東京・品川にクリニックを開院。著書に『不妊治療を考えたら読む本』(講談社)など多数。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください

「不妊の原因は加齢」というのは、残念ながらその通りです。まず認識していただきたいのは、卵子は生まれる前に一度だけ作られた後、二度と作られないということです。46年経った現在も生き残っている卵子で、妊娠しなければなりません。世界の平均では、45歳を過ぎると150個~200個くらいの卵子で一人の赤ちゃんが生まれます。

45歳以上になれば、受精卵ができても90%以上は染色体異常があります。不妊の一番大きな要因は染色体異常で、年齢とともにその確率は上がります。もう一つの重要な要因は、カップルの遺伝子の組み合わせです。平均よりも少ない数の卵子で赤ちゃんを授かる方がいれば、平均以上の数が必要な方もいらっしゃいます。

母体年齢が高いほど、卵子は成熟しにくくなります。そのため、成熟卵をしっかり採ることが、若い方よりも必要です。若い方なら適切な卵巣刺激をしなくても多少結果が出ますが、高齢の方では、低刺激で採った卵子が成熟していないことはよくあります。成熟卵を採卵することが大切ですので、低刺激をする施設への転院はおすすめできません。


高齢の方でも、成熟卵を採っていれば受精率は変わりません。ただ受精後の染色体異常発生率は高く、胚盤胞到達率が下がります。胚盤胞培養の技術は少しずつ向上していますが、まだ発展途上です。胚盤胞到達率は培養技術によるため、施設によって異なります。したがって、無理に胚盤胞にすることは、妊娠率を少々下げる恐れがあるかもしれません。

世の中には、高刺激がよいか低刺激がよいか、という議論がありますが、私は間違っていると思います。原始卵胞は半年前から育ち始めているため、質問者さんのAMH1.11に見合った適切な刺激が必要です。過度に刺激をしてもよいですが、コストパフォーマンスが悪くなります。卵巣予備能に合わせた必要充分な刺激をして成熟卵を採るのが戦略です。偶然育った卵子がよいか悪いかといっているのは、医学的治療といえません。

一般的に43歳以上では適切な刺激をして成熟卵を採らなければならず、自然妊娠率は極端に低いことがわかっています。


ダメ元で移植するというコメントもありますが、医療者は本来ダメ元などという発想があってはなりません。当院では48歳のときに、3回の採卵で採れた胚盤胞20個のうち、PGT-AでA判定だった胚を用いて、1回の移植で49歳にて出産された方がいらっしゃいます。この胚は48歳6ヶ月の卵子で作られたものでした。不妊治療の論文ベースでは、日本最高齢の妊娠です。

とにかく、成熟卵の数にこだわった適切な卵巣刺激と、ラボ(培養室)業務の実力を重視して施設を選択してください。

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全記事、不妊治療専門医による医師監修

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