【Q&A】甲状腺ホルモンのコントロールについて~小川先生【医師監修】

うめまめさん(44歳)

現在44歳です。慢性子宮内膜炎(採卵後治療予定)、ポリープ(採卵後切除予定)あり。
甲状腺機能低下症でチラーヂン82.5μg服用中。
顕微授精による体外受精を目指して採卵したいところですが、
・生理3日目:E2 0、FSH22でスタートし、クロミッド1錠を10日間服用し
・生理14日目:E2 0、FSH28
・生理20日目:E2 11、FSH42
・生理26日目:E2 12、FSH44
・甲状腺 FT3 2.9pg/mL FT4 1.7ng/dL TSH 0.16μIU/mL
でした。
チラーヂンの減量をお願いすることが必要なのかどうかアドバイスをお願いします。また、不妊治療のアドバイスいただけると助かります。

小川誠司先生に教えていただきました。

藤田医科大学 羽田クリニック 小川 誠司 先生
2004 年名古屋市立大学医学部卒業。2014 年慶應義塾大学病院産婦人科助教、2018 年荻窪病院・虹クリニック、2019 年那須赤十字病院産婦人科副部長、仙台ART クリニック副院長を経て2023年9月、藤田医科大学東京 先端医療研究センターの講師、2024年4月から准教授に就任。自費で最新の医療を受けられるという併設の羽田クリニックで患者さん一人ひとりの思いをかなえるべく診療も行っている。日本産科婦人科学会専門医。日本生殖医療学会専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。

うめまめさんの病状(慢性子宮内膜炎、ポリープ、甲状腺機能低下症)による不妊の影響について、先生の見解を教えてください。

慢性子宮内膜炎は、細菌などの感染により炎症が持続的に子宮内膜に起こっている病態で、着床不全や流産の原因になると言われています。慢性子宮内膜炎を治療して、妊娠に至る方はたくさんいらっしゃいますので、うめまめさんもしっかり治療されることをお勧めします。慢性子宮内膜炎の診断は通常、病理検査(CD138免疫検査)で行いますので、基準値以下になるまで治療されることをお勧めします。

ポリープも同様に着床不全の原因となります。小さいポリープがあっても妊娠される方はおられますが、最近ではポリープがあることにより上記のような子宮内膜に炎症が起きている可能性があると言われており、物理的に問題にならないような小さいポリープでも積極的に摘出することをお勧めしています。当院では日帰りでポリープ摘出が可能です。

甲状腺機能は妊娠維持に密接に関わるとされており、特に橋本病などの甲状腺機能低下症の患者様は適切な治療を行わないと流産のリスクが上昇するとされています。一般的に、妊娠を考える場合は、TSH(甲状腺刺激ホルモン)を2.5μU/ml未満にコントロールすることが良いとされています。うめまめさんも引き続き、しっかりと甲状腺ホルモンはコントロールしてください。

甲状腺機能低下症に対するチラーヂンの服用量について教えてください。また、うめまめさんは減量が必要と考えられますか?

今回のホルモン結果を拝見する限りでは減量の必要はないと思います。ただこれまでの経過が重要ですので、減量するか維持するかの判断はこれまでの甲状腺のホルモン推移によって決定します。

うめまめさんの年齢( 44歳)や現在のホルモン値( E2、FSH、FT3、FT4、TSH)を考慮に入れた上で、不妊治療の進め方や適切な方法など先生でしたらどのような提案をされますか?

まずは記載されておられる着床不全の原因となるような病態は全て治療された方が良いと思います。うめまめさんのホルモンを拝見すると、卵子を得ることが非常に難しくなっており、獲得できた卵子(受精卵)は非常に貴重です。大切な受精卵を移植する際には、心配な点は全て解決した上で、ベストな着床環境で戻していただく方が良いと思います。

また、いかに良い卵子を得るかも重要です。今回ご記載いただいているホルモン推移ではFSHがかなり高くなっており、卵子が発育しづらい状況になっています。月経周期によって、良い周期、悪い周期がありますので、月経3日目のホルモン値を見て、良い周期を選んで治療を開始することも大切です。

サプリメントも飲んでおられますが、卵子の数や質を改善する可能性のあるDHEAやメラトニン、抗酸化作用のあるビタミンC、EあるいはビタミンDを摂取していただき、体質の改善に取り組むことも大切だと思います。

また最近では再生医療が不妊治療でも応用され、PRP(多血小板血漿)の卵巣投与が行われています。PRPとはPlatelet Rich Plasmaの略で、血液に含まれる血小板から、多くの成長因子を抽出し、活性化したものです。私たちが本来持っている治癒能力、再生能力をさらに高めるための治療で、PRPを卵巣に投与することにより卵巣機能の改善が期待されています。さらに、PRPの卵巣投与が無効な方に、ご自身の脂肪や月経血由来の間葉系幹細胞を用いた治療も当院では行なっておりますので、お気軽にご相談ください。

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