着床しても妊娠に至らず。採卵・移植を続けるしかない?

桑実胚移植で流産。

着床しても妊娠しない場合、移植を続けるしか方法はないのでしょうか?

相談者 : kakekoさん(40歳)2 年前に顕微授精をスタートし、採卵6 回、移植6 回で 4回 着床しましたが、いずれも着床後にhCG が下がりました。主治医は染色体など受精卵の問題だから、よい受精卵と出会えるまで採卵と移植を続けるしかないと言います。私自身に原因があるかと漢方、鍼灸、腸活を始めましたが、最近は採卵もうまくいきません。採卵と移植を繰り返すだけの治療に焦りを感じています。自費も視野に入れて確率の高い治療を望んでいます。漢方の先生には転院をすすめられています。
神谷レディースクリニック 岩見 菜々子 先生 札幌医科大学卒業。2014 年より神谷レディースクリニック勤務。日本生殖医学会生殖医療専門医。日本産科婦人科学会認定専門医。日本抗加齢医学会専門医。

着床してもhCGが下がる要因は受精卵にある可能性が高いですか。

岩見先生● そうですね。40歳での採卵では、胚盤胞の60%以上が染色体異常だといわれています。ただ、私なら受精卵以外に要因がある可能性を考えて、いくつかの検査を提案します。最適なタイミングはERAで特定できます。次に子宮内環境です。ポリープなどの有無の確認はもちろん、EMMA、ALICEの検査で子宮内の細菌叢が適切な環境かどうかや、慢性子宮内膜炎と関係するような病原菌が存在するかをチェックできます。これらは先進医療となります。
さらに免疫が関与している可能性も考えられます。免疫の異常により、受精卵を異物として攻撃してしまうことがあるのです。自費になりますが、Th1とTh2の比率をみる検査で免疫系の異常の有無を確認できます。また、甲状腺ホルモンが不安定であったりすることも、妊娠継続に影響を与える可能性もあります。血液検査にて調べてもらうことも一つの選択肢です。

漢方や鍼灸、腸活ははどんな効果が期待できますか?

岩見先生●体に合う人と負担になる人がいるので一概には言えません。ストレス解消になるのならいいのですが、費用もかかり、かえってストレスになるならサプリに切り替えるのもいいでしょう。まずはビタミンDを摂ることをお すすめします。ビタミン D はARTの妊娠成績に関与するほか、免疫をととのえる作用もあるとされ、不妊治療中の患者さんの90%以上に欠乏状態が認められるといわれています。また、抗酸化作用を意識してアスタキサンチン、コエンザイムQ、DHEAを摂ることも効果的だと思います。

治療法の変更や転院についてはどうお考えになりますか。

岩見先生● 複数回採卵する場合、採卵方法を変えても治療成績に影響しないというエビデンスがある一方、採卵方法の変更が転機になることもあります。いずれにしても、ひたすら採卵を繰り返すことは費用、時間、精神的負担が大きいため、過去の化学的流産の要因を検査で探すことをおすすめします。

まずは、PGT-A(自費)で受精卵の染色体異常の有無をクリアにする。そして他の検査に進めば、治療も納得のいくものになると思います。現在の病院でPGT-Aができなければ、できる病院への転院を検討するというのはいかがでしょう。

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