1月に3か月で心音停止。自然排出なく2月に手術し、経過観察で現在に至ります。
なかなかβhcgの値が下がりません。今回の生理で値がやっと0.5になりましたが「0.5を切らないと」と言われています。
「目に見えない絨毛が残ってるかもしれない」と説明されました。
この絨毛は時間が経つとなくなるということですか?残っているのは手術がうまくいかなかった可能性も考えられるのでしょうか?
Noah ART Clinic 武蔵小杉の久慈先生に聞いてきました。
慶應義塾大学医学部卒。東京医科大学産婦人科学教授を経て、2023年5月より、Noah ART Clinic 武蔵小杉の統括医師に。生殖医療専門医・指導医。臨床遺伝専門医。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
流産の後、血中のhCGやβhCGがなかなか下がらず、治療が開始できない場合が時にあり、次回の治療を早く始めたい患者様や、診療している医師には大きなストレスになることがあります。原因として最も考えられるのは、先生がおっしゃるとおり「目に見えない絨毛が残っている」可能性です。
これは流産の時の手術のうまい下手、による物ではありません。流産の手術は、現在は子宮や内膜をできるだけ痛めないように吸引器で吸い取る方法が普通で、手術後必ず絨毛は一部残っています。残っている絨毛を減らすために、以前のように子宮内膜をひっかいて絨毛を剥ぎ取る手術をしても、経験のある医師が徹底的に行っても100%絨毛を除去することはできません。また、ひっかけばひっかくほど、正常の内膜をはぎ取ってしまうので、次回移植するときには内膜が薄くなる恐れがあります。
幸いなことに、こうして流産の手術後必ず一部残ることになる絨毛は、通常は時間がたつと細胞の寿命が来て、体の中から自然に排除されてなくなります。ところが絨毛細胞の寿命が長かったり、子宮の中で少しずつ分裂することができたりすると、長く子宮に残ってしまいます。絨毛が残っていることは、hCGやβhCGという、絨毛細胞からしか出ないホルモンを血中で測ることで分かるのですが、非常に微量のhCGが出ているときに、どういう危険があって、どこまで待った方が良いかを考える必要がでてきます。
1以下のホルモン値が続いていて、その後病気になる、と言う例は極めて珍しいのですが、そういう珍しい症例の中に「絨毛性疾患」と言う悪性の病気の場合があるのです。この疾患は特に40歳以降の方に多いので、先生は慎重になっているのでしょう。不妊治療を早く始めなければというお気持ちはよく分かりますが、やはり女性の健康を第一に守る必要があります。
では陰性になるまでどのくらい待てば良いのでしょう?
胞状奇胎というhCGをたくさん出す絨毛細胞の腫瘍の場合、24週間と言われていますが、約6ヶ月と言う期間は、不妊治療をしている女性や医師にとってはあまりに長い期間です。
あまり長くなるようでしたら、まず先生と相談して、絨毛性疾患専門の大学などを受診したら良いかを相談してはと思います。
ご存じのように、体外受精では採卵前々日にhCGを注射することが多いなど、卵を増やしたり、採卵のタイミングを取るために使う薬のいくつかにはhCGが入っています。検査をしてhCGが高くなったときに、注射のせいなのか、病気が悪くなってるのかが分からなくなってしまうので、検査をする医師はそれを考えに入れて判断する必要があります。ただ、このホルモンの入っていない薬だけを使って採卵することもできるので、腫瘍の専門病院と連携を取りながらそういう方法で採卵する方法はあります。その後hCGが完全に下がってから凍結胚を移植することで、リスクを回避しながら妊娠をはかることもできるのです。