【Q&A】採卵数が多いと受精率が下がる?~林先生【医師監修】

ななさん(35歳)

前回の体外受精で採卵した際、33個採れましたが、受精したのは1個のみ。その後、お腹に戻しても妊娠しませんでした。今度は顕微授精の予定ですが、今回も採卵個数が多いと思われます。
「子宮の反応がいいから、個数が多くなるのはどうしようもない」と担当の先生は言いますが、個数が多いと良くないという情報も聞きます。
採卵数が多すぎると受精の確率が下がるということはありますか?

女性が一生のうちに排卵する卵の数は決まっていると聞きます。卵巣刺激でたくさん採卵すると、その分、将来排卵する卵の数も減ってしまうのでしょうか?

ウィメンズクリニックふじみ野の林先生に聞いてきました。

【医師監修】ウィメンズクリニックふじみ野 林 直樹 先生
1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください
まずは初めての体外受精治療、不成功に終わり残念でしたね。
初回の採卵個数が33個ということですが、多すぎるということはないですが、卵巣過剰刺激症候群の副作用のリスクが高まります。
仮にお二人のお子様を希望されるとしても、奥様がこの年齢であれば、お一人の生児を得るための戦略としては、もう少し少なめの採卵数(8-14個)でもよいのではないかと考えます。卵巣刺激のための注射の種類の選択や投与量の工夫(投与量を決めるアルゴリズムもあります)をおこなってみる選択もあるかと思います。
受精率が良くないのは、採卵個数が多すぎるのではなく、精子側(まれには卵子側のこともある)の要因かと考えます。精子所見の詳細が不明ですが、運動率が低いようにもお見受けしますので、受精能に障害のある精子所見の可能性が否定できません。精子の精密検査であるDNA損傷検査(精子の質の検査)や男性側の診察検査を是非お勧めします。
そのうえで次回はやはり顕微授精治療が推奨されると考えます。前述の男性側の評価に基づいて治療が展開してゆき精子側の状態を改善する余地、あるいは良質の精子を選別(先進医療)しての顕微授精治療も考慮されるかもしれません。精子の質の向上を図ったり、質の良い精子を選別することは、良好胚の獲得、妊娠率の向上、流産率の低下、そして生まれてくるお子様の将来の健康にも関係する大切なことと考えます。
卵巣刺激で卵子を獲得したために将来排卵する卵子が減少してしまうということはありませんのでご心配には及びません。月経周期のたとえば1か月の間に数百個の卵子が表舞台に立たず消退していきます。その中のほんの数個から数十個の卵子が表舞台(つまり卵巣内で小さな卵胞として検出できます、これを胞状卵胞といいます)に選ばれて現れます。
卵巣刺激がなければその中の1個だけが育ち排卵していきます(単一卵胞発育機序)が、卵巣刺激をおこなうことで多発卵胞発育をおこし多数の卵子を獲得することができます。本来消滅する卵胞・卵子を救済しているだけですので卵子の在庫が速くなくなるわけではありません。ヒトの卵子は変性卵や質の良くない卵子もしばしば存在するため、ある程度の個数を獲得しておくことが採卵周期あたりの生児獲得率の向上には有利です。もちろん第2子以降のお子様の獲得にも有利です。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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