【Q&A】再検査と移植はどちらを優先すればよいでしょうか?~船曳先生【医師監修】

あんさん(40歳)

今回上記のような経緯で子宮フローラ検査の結果により、子宮環境の改善を治療しています。
あくまで不妊原因は不透明である旨理解しておりますが、現在の私の値ですと、子宮側に問題があるようなレベルの数値であると想定されるのでしょうか?
年齢的に胚の問題が7割、子宮の問題は3割と言われているかと思いますので、仮に再検査後あまり改善しない場合、抗菌とサプリ、再検査を何回か繰り返すことも考えられるのか、先が見えず不安です。
また、1か月後に再検査する方針と1か月後くらいに移植してみるのと、クリニックによっても方針が異なると理解しております。
今の年齢と検査結果は、どちらを優先して治療を進めるのがよいのでしょうか。
仮に改善しない場合、食生活や体質など、移植にすすむために取りうる方法についてもアドバイスいただけないでしょうか。
「抗菌により着床の窓に影響することがある」という記事を拝見しましたが、そういった恐れはあるのでしょうか。
再検査し、結果確認をすると、今回も移植は少なくとも3周期後になりそうです。
年齢的にも休んでいるひまはないのに何もできない期が続きます。
胚の問題の可能性のほうが年齢的に高い一方で、どこまで子宮環境を整えるために時間を使うべきなのか……。
正解はないかと思うのですが、ご相談させていただきたくよろしくお願いいたします。

オーク銀座レディースクリニックの船曳先生にお話を伺いました

【医師監修】オーク銀座レディースクリニック 船曳美也子 先生
日本生殖医学会生殖医療専門医・指導医。日本産科婦人科学会専門医。母体保護法指定医。神戸大学文学部心理学科、兵庫医科大学卒業。兵庫医科大学、西宮中央市民病院、パルモア病院勤務を経て医療法人オーク会へ。エジンバラ大学で未成熟卵の培養法などを学んだ技術と自らの不妊体験を生かし、患者さんのライフスタイルなどに合った診療を行う。また、早くから不妊と肥満の関係性に着目し、2ヶ月で14kgの減量に成功した患者様の排卵障害が改善したことから、ダイエット・プログラムを発案。国内外の学会発表多数あり。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください。
39歳時点で作成した分割期胚1個と、形態良好胚盤胞胚を1回の計2回移植した時点で子宮内フローラ異常がみつかったが、治療してから再度検査するのか、移植をすすめるべきなのか、という質問ですね。

まず、そういった疑問をもたれるということはとても聡明な方とお見受けします。ご指摘のように、妊娠しない原因の7~8割は受精卵の問題と考えられます。現状染色体の数の異常がないかどうかはPGT-A検査ですので、染色体の数が正常な胚を複数回移植してだめなら子宮の問題ということになります。

では、いわゆる3BB以上の形態良好胚にどの程度正常胚があるか。「 J.M. Franasiak,M.D. Fertility and Sterility  vol.101,No.3, March 2014 p656-663 」の論文によると39歳~40歳でPGT-Aして正常数の胚は約40%でした。PGT-Aは拡張期胚盤胞でのみ可能です。と考えると、1回目の移植は分割期胚ですし、4BB以上の胚のあと2個~3個の移植のなかで正常胚移植できている可能性は高いと思われます。では、PGT-A検査で正常とでた胚を移植して妊娠する可能性がどの程度あるか。いろいろ論文で数値はありますが、全体をならすと約6割です。10割にならない原因としては、検査の結果が100%でないこと、検査によるダメージ、数の異常以外の胚の問題、といった胚の問題のほかに、子宮にひっつかなかない、内膜にもぐりこまない、胎盤のもとになる組織がうまくできない、といった子宮の問題になります。
フローラ検査はそのあくまで一つで、子宮内環境が良い人のほうが妊娠率が高いという最近のデータによるものです。ただ、もし今の凍結胚に妊娠する力のある胚がなければ新たに採卵が必要ですし、採卵するなら早いほうがよいです。抗菌剤内服と、ラクトフェリンといったラクトバジルスを増やすサプリメント、もうすでにとられている葉酸800マイクログラム、ビタミンD、鉄分を継続したら、私でしたら、移植を勧めます。形態良好胚もできていますし、子宮の内膜の厚みが十分あり、ポリープなどなければ、十分早期の妊娠も期待できると思います。
また、当院では、IFCEといって、子宮内膜スクラッチと子宮鏡をくみあわせた検査をかねた治療を用いることで原因不明の反復不着床のかたは、していない方にくらべ8%が25%に妊娠率増加をみとめています。ただ、侵襲性がある治療ですので、繰り返せない事と、効果も検査後2~3回までと限定されるので治療のタイミングも考えて行う必要があります。いろいろ心配であれば無料カウンセリングも受けていただけます。

結論としては、スクラッチもされているとのことなので、私としては、積極的に移植を勧めます。ちなみに、ERA検査しているアイジェノミクス社に確認しましたが、抗菌剤では着床の窓はかわりませんとのことでした。サプリメントもちゃんととられていますし、しっかり睡眠や適度な運動、ストレス発散していただき、どんどん治療を勧められたらいいと思います。ぜひがんばってください。

>全記事、不妊治療専門医による医師監修

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