卵子が採れるかぎり諦めたくありません
初期流産や陰性が続くのは、どのような原因が考えられますか?
松本先生● 大変難しい状況のなか、治療を頑張っていらっしゃいますね。うまくいかない原因は受精卵側にあることがほとんどだと思います。
45歳という年齢になってくると凍結できる胚が得られないことが多くなりますし、凍結胚が得られたとしても受精卵の中の遺伝情報の異常が高くなってしまいます。染色体に異常があれば妊娠は難しく、初期流産を起こす可能性も上がってしまいます。
「卵巣が反応しない数値」の場合、低刺激の選択がベストなのでしょうか。
松本先生●この方にとって、低刺激がベストかどうかはわかりません。年齢が高くても高刺激を選択する場合もあるかと思います。
当院では「FSHやAMHなどホルモンの値がこうだから、この刺激法しかない」という考え方はしていません。たとえば「FSH値が高い=刺激しない」とは決めつけず、高ければ下げてから刺激をするという方法もとっています。総合的にみて、どのやり方がいいのか、担当の先生とよく相談されてみてはどうでしょうか。
採卵で1つしか採れない場合、PGT ‒Aは行わないほうがいいのですか。
松本先生●僕だったら実施する方向でお話しすると思いますね。
当院ではfresh PGT ‒A を行っております。通常は胚盤胞の段階で一度凍結し、その後どの胚にPGT ‒Aを行うか決めて、一度融解し、生検を行い再度凍結させます。freshPGT ‒A は胚盤胞で凍結する前に生検を行います。そのため融解、凍結を行う回数を減らすことができ、通常のPGT ‒A よりも胚へのダメージを減らし、コストも抑えることができます。
PGT ‒AをやってC判定(異常が認められる結果)が出たら移植はしません。残念ですが、余計な移植をしなくて済みますし、受精卵の中の状態がわかることで、患者さん自身も納得がいくと思います。
いつまで治療を続けられますか?
松本先生●患者さんは妊娠を望んで来院されているので、医療側から「もうやめましょう」とは言いません。ただ、精神的にも身体的にも疲れ果てているのに治療を続けていくのは辛いと思います。一度冷静になり、回数や期間を決めて治療に臨まれるようにしたらどうでしょうか。その際は10年経ってもその決断を後悔しないように、ご夫婦でよく話し合って決めるようにしてください。