残りの胚盤胞は3個、移植を続けてもいい?

胚盤胞を移植しても陰性が続いています

相談者 : たぬさん(39歳)昨年の1月に胚盤胞で妊娠して出産。その年の9月から2人目の不妊治療を再開しました。37 歳の時に採った受精卵を使って3回胚盤胞を移植するも、1回目は稽留流産、あとの2回は陰性でした。私の場合、妊娠もしており、今回1回目の移植は着床しているため「着床不全ではなさそう」とのこと。移植した受精卵はすべて染色体異常の可能性が高いといわれています。現在残っている胚盤胞は3個。このまま移植を続けていってもいいのでしょうか。
臼井医院 婦人科 リプロダクション外来 臼井 彰 先生 東邦大学医学部卒業。東邦大学大森病院で久保春海教授の体外受精グループにて研究・診察に従事。医局長を経て、1995 年より現在の東京・亀有にて産婦人科医院を開業。
一度でも着床経験があれば着床不全ではないと考えてもいいですか。
臼井先生●確かに着床不全ではないかもしれません。ただし、子宮の環境をきちんとみておくために、移植前に子宮内の細菌のバランスを調べる子宮内フローラ検査や、着床を妨げる原因になる慢性子宮内膜炎、子宮内膜ポリープの有無を調べる検査などはやっておいたほうがいいかと思います。
 また、着床に関する検査と同じような目的になりますが、採血で簡単にできるので不育症の検査も念のため受けておくことをおすすめします。
やはり年齢が高いために、染色体異常の受精卵が増えているのですか。
臼井先生●現在39歳で、使った胚盤胞は37歳の時のものということ。37歳くらいになると受精卵の染色体異常が増え、流産率も高くなります。たぬさんの場合、胚盤胞になり、グレードも5AA、3BB、3AB。凍結も移植もできるものだったので、悪くない受精卵だったのかもしれません。
 ただし、それはあくまでも見た目の評価であり、染色体異常があるかどうかなど、受精卵の中身の状態まではわからないのです。このような方の場合、PGT ‒Aを行って染色体異常のない卵を選ぶことは非常に有効だと思います。
このまま残った胚盤胞で移植を続けていくべきでしょうか。
臼井先生●保険診療で治療を受けていらっしゃるとしたら、保険適用での移植はあと3回。この3回を生かして移植を続けてもいいのではないでしょうか。残りの胚盤胞をリセットして採卵から始めることもできますが、37歳に採った時よりも条件は当然悪くなってしまいます。当院だったら今ある胚盤胞を使うことをおすすめしますね。
 もし結果がすべて陰性だったら、自由診療に移行するご希望があるのでしょうか。移行後、採卵してもできた受精卵の染色体異常率はさらに高くなるかもしれませんが、保険診療では受けられなかったPGT ‒Aで正常な胚を選別することができます。
現在6cm以上のチョコレート囊胞があるそうですが、採卵に影響しますか。
臼井先生●出産後、急激に大きくなったそうですね。6cm以上だったら悪性腫瘍になる確率が上がってくるので、腹腔鏡などで切除されたほうがいいと思います。それ以下の大きさだったら経過観察となりますが、囊胞がある場所によっては採卵時、針を刺しにくいこともあるので、先生とよくご相談ください。
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