【Q&A】卵管切除後の体外受精の妊娠率~林先生【医師監修】

さやかさん(34歳)

過去にクラミジアを患いました。卵管水腫が見つかり、卵管開口術を2年前にしました。その後タイミング法や人工授精をして、体外受精も5回実施しましたが、妊娠できません。最初の病院では、グレードは教えて頂いてないので3回までは不明です。最初の1回目は新鮮胚でした。胚盤胞のDAY6で4AA移植時5AAを移植しました。胚盤胞DAY6で5BA移植時6BAでした。シート法もしましたが、妊娠できずでした。
4月に40度の高熱と腹痛があり、病院に受診したところ骨盤内炎症疾患と診断を受けました。
入院して抗生剤を点滴で投与してもらっていたのですが、両方の卵管が2センチくらいに腫れていて、膿が溜まっているとの事でした。大腸菌が入りこんでしまいました。体外受精もしていたので卵管切除を勧められ、治療をしてきて妊娠していなかったので、卵管切除してもらいました。卵管自体も広げたところは丸まっていて、卵管の役割を果たしていなかったみたいでした。
これから体外受精をしていこうと思っているのですが、妊娠する確率はどのくらいありますか?
卵管がなくなってしまったので、血流が悪くなるのでしょうか?

ウィメンズクリニックふじみ野の林先生に聞いてきました。

【医師監修】ウィメンズクリニックふじみ野 林 直樹 先生
1983年、東京大学医学部卒業。埼玉医科大学総合医療 センター(川越市)などを経て、現職。「体外受精、顕微授精も高いクオリティで対応していますが、できる限り自然に近い不妊治療をご提供したいと考えています。 患者さんはそれぞれお悩みも違いますから、どんなこと でもまずご相談を。時にはご要望に沿えず、厳しいこと を申し上げるかもしれませんが、常に患者さんにとって ベストな治療法をご一緒に見出したいと思っています」。
※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください
体外受精反復して不成功となっておられる方です。年齢もまだお若く、良好な形態の胚盤胞を複数回移植されておられるので胚因子以外の着床障害がある可能性が推察されます。
性感染症とくにクラミジア感染は卵管性不妊症を来すことで重要です。このほかに淋菌による感染もあります。ほとんど無症状のうちに卵管性不妊症(究極的な病像は卵管閉塞や卵管水腫)を惹起するので気が付かないで進行していることもあります。ワクチンも開発中ですが、いまだ臨床応用には至っておりません。
こうした背景があって細菌感染(大腸菌、嫌気性菌など)が性行為、医療行為(採卵、胚移植、人工授精、卵管造影検査、子宮内膜細胞診検査など)が契機となり骨盤内炎症性疾患(卵管膿瘍、卵巣膿瘍など)が発症します。相談者が罹患された骨盤内炎症性疾患が起こると、抗生剤治療や外科的治療が必要になります。卵管と卵巣は近接しており(とくに感染後など)、卵管への処置により卵巣への血流が損なわれることもあります。

そのため損なわないように卵管を切除する、場合により卵管近位部の切断のみにとどめることもあります。今回卵管水腫が両側にあったということで、その水腫に対する手術処置がおこなわれたことは今後のために正解と考えます。ただ、もしかしてその卵管水腫は今回の骨盤内炎症性疾患が発症する前から(つまり卵管開口術後の再発として)あった可能性はどうだったでしょうか。たとえ超音波検査で水腫が認められなくとも水腫が存在すれば、卵管内液が子宮内へ逆流することで反復着床障害の原因となりえます。子宮鏡検査、フローラ検査、内膜受容能検査が正常であったということです。もし卵管水腫がこれまでの着床障害の原因の一つとなっていたのであれば、切除することによって、卵管水腫が存在しない状態と全く同様の妊娠率が見込まれます。

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