【Q&A】化学流産が続いても正常胚を戻せば妊娠できますか?~藤本先生【医師監修】

はなさん(36歳)

1年半前から高度不妊治療を開始しました。夫が海外赴任のため凍結精子での治療です。
1年半前から高度不妊治療開始。
・1回目採卵で凍結できた卵 5日目胚盤胞4BB.4BC
どちらも陰性、化学流産(hcg8.5)
※2個目移植後、TRIO検査でラクトバチルス0とERA12時間ずれが判明し、再検査してラクトバチルス90%に改善

・2回目採卵で凍結できた卵 5日目胚盤胞4AB2つ
どちらも化学流産(hcg2.5とhcg20)
※3回目移植後に不育症検査にて抗リン脂質抗体陽性が判明し4回目移植からアスピリン内服。

・3回目採卵 6日目胚盤胞5BA
PGTAすすめられ検査したところ10番染色体の低頻度モザイク胚。化学流産(hcg8.5)。

今していない検査は夫婦染色体検査ぐらいで、色々対策をして移植に臨んでいると自分では思っています。
2個移植をすすめられましたが、希望はしていません。お金が許すかぎりPGT-Aで正常胚がとれるのを待つべきでしょうか?私のように化学流産ばかり続いていても、正常胚を移植したら妊娠できる可能性はありますか?
なかなか良い結果につながらず、高額な治療や長い治療に少しめげています。

藤本先生に聞いてきました

【医師監修】さっぽろARTクリニックn24 藤本 尚先生
日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医、臨床細胞学会細胞診専門医。札幌医科大学産婦人科、神谷レディースクリニック 副院長を経て、医療法人社団 さっぽろARTクリニック開院し理事長に就任。2019年5月 医療法人社団 さっぽろARTクリニックn24開院。

※お寄せいただいた質問への回答は、医師のご厚意によりお返事いただいているものです。また、質問者から寄せられた限りある情報の中でご回答いただいている為、実際のケースを完全に把握できておりません。従って、正確な回答が必要な場合は、実際の問診等が必要となることをご理解ください
はなさんの経過を見ると、確かに一通りの検査をされていますね。そしてAMHは低いものの胚盤胞が確実にできているのはいいことですね。はなさんの年齢と治療開始時期を考えると、保険適用での胚移植が4回、PGT-A施行での胚移植は自費での胚移植と考えるなら保険での胚移植は後2回(全6回のうち)と推測されます。

確かにやってない検査の中に夫婦染色体検査がありますが、染色体検査については結果に異常があった場合に何か対策が打てるものではないこと、はなさんは今回第二子で上にお子さんがいること考えれば積極的に勧めるものではありませんが、確かに一度調べてみるというのも可能性のあるものはしっかりとつぶしていくという考え方で言えば、夫婦染色体検査もやっているという選択肢はあります。

また、PGT-Aで正常胚を胚移植した場合の妊娠率は年齢にかかわらず70%弱程度であることは世界的なデータから示されています。この数字をどうとらえるか?というところになります。正常胚なのに70%しかないの?と考えるのか?70%もあるの?と考えるのか?でとらえ方は変わります。日本産科婦人科学会ARTデータ(2021)では、基本PGT-Aをしていない36歳の方の胚盤胞での凍結融解胚移植の妊娠率は46%でした。なのでPGT-Aで正常胚を確保して胚移植をすれば妊娠できる可能性はあります

さらに言えば、PGT-Aをしないで胚移植をしても、まだ妊娠の可能性はあると考えます。
それは検査で引っかかっているERAと抗リン脂質抗体に対する対策を両方行っての胚移植は2回しか行っていないという見方もできますので、もう数回対策を行ったうえでの胚移植を行うことで妊娠に至る可能性は年齢的にも充分あるという意味です。
あくまでも私の私見ですが、PGT-Aを行うとPGT-Aはもちろん採卵胚移植もすべて自費診療で行わないといけなくなります。

費用的に高額になることを踏まえると、はなさんの年齢と保険適用で行える残りの胚移植回数を考えればあと2回は保険での胚盤胞移植を行い(もちろんERA結果に対する修正とバファリン内服はする)、それでうまくいかなければその後はいずれにしろ保険適用での診療ができなくなるので、PGT-Aも含めた治療を継続していくのか検討するというのでもいいのかなと考えます。

2個移植については、1回あたりの妊娠率が上がるというのが一番の目的ですが、デメリットとしては双胎妊娠のリスクがあるということになりますそれを踏まえた上でどうするか?という判断なりますので、しないといけないというものではありません。リスクを取ってでも妊娠率を上げたいのか?それともリスクは嫌なので1個移植にするのかという選択となります。

高額な治療と長い治療期間でめげてしまうこともあるかもしれません。自分の気持ちを上手にコントロールすることも治療を行う上では重要になってきます。

趣味やほかのことをすることできちんとオンオフをつけた生活をしたり、何か気持ちのコントロールをするためのスキルなどを本やYoutubeなどで調べてみてみるというのもいいかもしれません。
>全記事、不妊治療専門医による医師監修

全記事、不妊治療専門医による医師監修

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